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仙台育英vs鳥取商 どこよりも詳しく見どころ解説

第104回 全国高校野球選手権大会
大会6日目 第1試合

仙台育英(宮城)vs 鳥取商(鳥取)

東北勢初の頂点を目指す仙台育英
強敵相手に甲子園初勝利なるか鳥取商

東北の名門と聞いて最初に名前が挙がるのは仙台育英、そういう方は多いだろう。今年も好選手を揃えて東北勢初の全国制覇を目指している。
一方3度目の出場で甲子園初勝利を目指す鳥取商。
全国での実績、知名度ともに上回る仙台育英に対し、鳥取商がどんな戦いを見せるのかに注目したい。

投手力

仙台育英投手陣は質・量ともに充実している。須江監督になって以降、複数の好投手による継投を積極的に推し進めているイメージだ。まさに現代高校野球に適応していると言えるだろう。
今年の中心は左腕エース古川。中学軟式時代から注目されていた投手で、昨年のセンバツ初戦の明徳義塾戦でも先発し無失点に抑える好投を見せた。最速145キロのストレートがあるが、決してストレート頼りの投手ではなく変化球の質・キレも素晴らしく力任せに三振を奪うわけでは無く制球力もある非常に完成度の高い投手だ。ただ古川頼りのチームでは無く仙台育英の最大の特徴はそれ高橋、湯田、佐藤、仁田という全員140キロ超えという豪華な投手の充実ぶりだ。特に高橋は145キロのストレートに加え16イニングで四死球ゼロという安定感が光る。チーム全体で見ても1試合平均与四死球は1.13と出場校中トップの成績を残している。

一方の鳥取商の投手陣も複数投手による継投が基本線だ。最も多いイニングを投げたのは背番号10の右腕・山根。身長167cmと決して大柄ではないが緩い変化球が主体で打たせて取る投球を得意とする投手だ。エースナンバーは182cmの右本格派の岩崎。山根とは対照的に140キロの角度のあるストレートを武器に三振を奪える投手だ。米子東戦で昨夏5本塁打を記録して注目を浴びた強打者太田を軸とした強力打線に的を絞らせず、小刻みな継投で米子東打線を2安打に封じ込めた。仙台育英と対称的に鳥取商投手陣の1試合平均与四死球は5.5個と出場校中ワーストとなる。ただこのチームの面白いところは、この数字を残しながら全試合を1失点以下に抑えている点だ。ピンチを作っても動揺することなく最少失点で切り抜けるメンタルの強さは特筆すべきとデータからは推測される。

打力

今年は「守り勝つ野球」をテーマに掲げる仙台育英、現チームは昨年の破壊力満点のパワフルな打線とは少しイメージが異なる。長打数は1試合平均2本と出場校中最も少なく、本塁打0という数字も意外である。長打率(塁打数/打席数)で見てもワースト10と決して長打で勝ち上がってきたわけではない事が分かる。特筆すべきは5試合で24盗塁(出場校中1位)という機動力だ。犠打も使うがやはり積極的に走者を動かすスピード感のある攻撃が特徴と言える。宮城大会では住石、山田、秋元の1~3番の調子が上がらず、下位打線が絶好調だった。甲子園では大幅な打順変更もあるかもしれない。

鳥取商打線はデータ上から本来の実力が推し量れない。
数字上はチーム打率.279とデータ中は打力に難があるようにも取れる。ただ鳥取大会4試合のみの数字であり、0-0のまま延長14回タイブレークとなった決勝で倉吉総合産の好投手、伊藤投手を相手にした数字が大きくウェイトを占めている点は忘れてはいけない。それ以外の3試合のみで考えると平均得点は9点と決して得点力が低いわけではない。中でも1番田中、3番前田は長打も期待できる好打者だ。また1試合平均で三振が6とやや多いのだが、これも決勝の倉吉総合産・伊藤に喫した11三振が大きなウェイトとなっている。数字のイメージだけで本来の実力をイメージすると危険なチームであると言えるだろう。

この試合のポイント

選手個々の能力・選手層で考えると仙台育英がやや優位な点は否めない。
ただ上述した通り、鳥取商は単純なデータ分析では推し量れない力があるチームである点は頭に入れておきたいポイントだ。実際、県大会の数字ほど戦力差があるわけではない。

一番のポイントは仙台育英の機動力への対応となるだろう。
鳥取商が対戦した米子東は強力打線ではあったが決して積極的に機動力を使うチームでは無かった。仙台育英は徹底して走者を動かす野球を仕掛けてくると思われるので、鳥取商としてはそこをどう対応できるか。

鳥取商投手陣は県大会で四死球が多いながらも粘りの投球でしのいできた。しかし仙台育英相手に無駄な四死球は命取りになりかねない。また制球力に不安を残す鳥取商投手陣としては、仙台育英の機動力に攪乱されてコントロールを乱すという展開だけは避けたいところだ。

鳥取商としては何としても序盤の立ち上がりに気を付けたい。
接戦に持ち込んで終盤勝負になると、勝機は十分に見込めるチーム力はある。逆に仙台育英は序盤で得点を奪って、試合の主導権を握りたい。

とにかく両チームの序盤の試合の入り方に注目したい一戦である。

甲子園ラボ


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