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交換留学に行くなら留年しない形で。

公務員試験の勉強をカモフラージュする為に交換留学

大学3年生の冬になると、周りの学生は国家公務員試験の勉強を始めました。ただでさえ落ちこぼれだった私は、取り残されたような気持ちになりました。20年近くたった今でも、クリスマスの直前、クラスメート4人で表参道でイタリアンを食べに行ったとき、2人が既に国家公務員試験の予備校に申し込んでいる、と知って落ち込んだ日のことを覚えています。

高校、大学とクラスメートだった友達の影響で、外交官に憧れてはいました。東大で国際関係論を専攻していれば、外交官は届かない夢ではないはずでした。

外交官になりたいという気持ちはあったのですが、国家公務員試験の勉強はやる気がわきませんでした。私は、歴史ある大学の図書館やカフェで難解な英語の文献を読んでいる方が、大学生らしい自由を感じて楽しかったです。プラスチックの机と椅子が無機質に並ぶ予備校で、マークシート式の試験の勉強をするために、大学の勉強を犠牲にしたくない、と思っていました。

とはいえ、外交官への夢は簡単にはあきらめられませんでした。ちょうど私がドイツで暮らしていた1990年代初めに、外交官だった雅子様が当時の皇太子とご婚約されたことも影響していました。小学校6年生だった私は、ドイツ語も英語も何もできない中、現地校に通い苦労していました。こんなに美人で外国語ペラペラな人が同じ日本人にいるのか、と憧れたのもでした。

公務員試験勉強の時間はない、でも外交官もあきらめたくない、という私が思いついたのは、「1年留学しながら、通信教育でのんびり国家一種の勉強でもしようか」、ということでした。つまり就職留年をカモフラージュする留学です。そもそも留学はずっと夢でした。海外に暮らすことができて、国家一種の勉強もできるのは、一石二鳥だと思いました。

周りの反対

公務員試験の勉強時間を取るために、留学するなんて、馬鹿馬鹿しい考えだと思います。仲の良かったクラスメートには、「本当にやりたいことをまっすぐ目指した方がいいんじゃない?留年したっていいじゃん」と言われました。彼自身は、司法試験を目指していました。在学中には受からなかったものの、卒業後1年か2年努力して無事合格しました。私は、留年とか、無職の時期があることを恥ずかしいと思い過ぎていたと思います。

父も留学に反対しました。父は、高校のときは、「大学に入ったら、いくらでも留学できる」と言っていましたが、私が大学生になると「学位の取れない交換留学は無駄だ、修士になってちゃんと学位を取れるかたちで留学した方がいい」と言います。いつも先延ばしされているように感じ、喧嘩になってしまいました。

聞いていた母と祖母が、あまりの激しい喧嘩に悲しんでいました。母は、「自由な性格のあなたに、海外は良く合っている、お金はおばあちゃんが出してくれるよ」、と言って、留学させてくれました。

競争率が低い交換留学制度

交換留学の倍率は低かったです。東大の後期教養学部は少人数の学部ですが、充実した交換留学制度をもっているためです。提携している留学先は10校以上ありましたが、教養学部の学生はたったの50人程度の小さな学部でした。そもそも、留学に興味のない学生も多いです。希望すれば大抵どこでも行けました。

ただ、欧米の大学は奨学金がもらえることや、大学のレベルの高いこともあり人気がありました。私は、九月スタートの欧米の大学の応募に間に合わず、二月スタートのオーストラリアに留学することになりました。

公務員試験の勉強はできず、留学を満喫

いざ留学してみると、山歩きのサークルに入り、英語で授業についていくための勉強も忙しく、国家一種の勉強はできませんでした。ビデオ教材に両親が稼いだお金を捨てただけになってしまいました。

もともとは、国家公務員試験は秋だったので、帰国してから頑張ればいいか、と甘く考えていたら、その年から国家公務員試験が春に前出しされてしまいました。

せっかく留学したので、せめて英語の資格くらいは取ろうとTOEICを受けたところ、留学前からあまりスコアが伸びていませんでした。大学4年生で、就職を意識した留学でした。これはさすがにやばいと思い、その後何回か受けて、なんとかスコアを上げました。

交換留学は留年しない形で行くのがベスト

交換留学に実際に行ってみて、父が言っていたことは正しかったなと思いました。海外に行けるのは、良い経験です。語学学校に比べると、交換留学は現地の学生や他の留学生のレベルも高いので、授業の中身にも満足できると思います。

ただ、私のようにちゃんとした目的もない人が交換留学に行くと、ただ海外で1年過ごした、という風になってしまいます。もちろん、オーストラリアの学生や、東南アジアなどからの留学生と知り合い、若いうちに広い世界を見る価値はゼロではありません。でも、やっぱり、海外に行く、という以上の高い目標があったほうが、周りの人や自分自身と、より充実した関わり方ができるように思います。

オーストラリアに留学した8年後、MBAで留学したときは、良い成績がほしい、ということが一つの目標となり、周りの学生と対等に付き合えたように思います。

ちなみに、交換留学では単位は交換されます。優でも良でも可でも、合格か不合格というふうにしか日本の成績には反映されません。

ベストは、交換留学に行っても留年しないことだと思います。卒論と就職活動と両立させるのは大変だと思いますが、学位にならない交換留学で1年長く学生をやるのは楽すぎるように思います。私も帰国して大学5年生の1年間、就職活動と卒論とちょこっとバイトくらいしかやることがなく、暇でした。

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