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#逆噴射プラクティス
人形狩り人形の長い夜
平成は遠くになりにけり。そして怪奇と暴力の時代が訪れた。
人々の断絶は深まり、隣人さえ信じられなくなった人々は、人形に愛を注ぐようになっていた。
生涯未婚率は右肩上がり、少子化はとどまるところを知らず、輪廻転生の理(ことわり)は遂に破綻した。魂の数(需要)に対して新生児の数(供給)が圧倒的に足りなくなったのだから無理もない。魂は現世を彷徨い、ポルターガイスト現象を起こしたり、電子機器を故障させ
マップ・オブ・スター(邦題:星の地図を探して)
静かに静かに寝床を抜け出し、洗顔を済ませて髪に櫛を通す。翡翠の眼鏡をかけ、鏡の前の自分を凝視する。
ヒスイのメガネ。
勇者大学の卒業生に贈られるアクセサリ。観察した相手のレベルを☆の数で知ることが出来る。
更に凝視する。やはり僕の頭上に浮かぶのは小さい☆が一つだけだ。
昨日の冒険に思いを馳せる。
───行商人を護衛する依頼。待ち伏せの罠。銀狼、それらを率いる人狼。依頼主と馬車を守り、十分な報
キラー・イン・ザ・レイク(邦題:湖中の殺人鬼!)
二週間ぶりに我が事務所のドアを叩いた客は紳士然とした執事で、涙ながらに「誘拐されたお嬢様を探し出して欲しいのです」と単刀直入に切り出した。もうアレから四年が経つのか。あの時も、あなたは、こうやっておれの事務所を訪れた。そして他の事務所も手当たり次第に訪れていたことだろう。つまり、全国の私立探偵が血で血を洗う、四年に一度の私立探偵のオリムピック───、「伯爵令嬢誘拐事件」が今年もやって来たのだった。
もっとみるハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)
準備はいいかね?それではチュートリアルを始めよう。
君の隣に立つのがハントマン。君のパートナーだ。
俺のパートナー。
優等生的な愛らしい顔立ち。
白いシャツ。胸元には赤いリボン。黒いマント。
嫣然と俺に微笑む。心配することなど無いと言いたげに。
そして今、目の前に湧いて出たのがマンハント。倒すべき敵だ。
どちらも君たち❝ニンゲン❞が言うところの吸血鬼さ。だが、違いは一目瞭然だろう?
俺の敵。
決闘なら❝銀❞曜日にしてくれ
朝が来た。陽光が俺の瞼を刺すよりも早く、部屋に近付く足音で一日の始まりを知覚する。
ノックもせずに遠慮がちにドアを開けてメイドが部屋に入ってくる。
いつものことだ。メイドの手には一目で業物と知れる打刀が妖しく輝いている。
これもいつものことだ。メイドは打刀を何の躊躇もなく振り上げ、振り下ろそうとし、布団から飛び出した飛翔体───、その正体は俺が抱いて寝ている大太刀───の柄頭の直撃を喉笛に受け、
十月のU.N.オーエン
無職排除法の施行より半年が経とうとしている。つまり、私が国家権力によって合法的に排除されそうになってから半年が経とうとしているということだ。
就職か、死か。
執行機関の突きつける究極の二択の前に膝を屈した私には「私立探偵」の肩書きと、埃にまみれた雑居ビルのワンフロアが押し付けられることになった。
現代の貴族、生まれついての高等遊民である私が両親と引き離され───楽園追放を想起せずにはいられない
あのバカはカランサを目指す
今日も探偵事務所のドアを叩く者は居ない。電話のベルも鳴らない。
電報が届いたりもしない。
がしゃん。窓ガラスを割って血まみれの男が予約もせずに突入してきた。
「見つけたぞ、カランサ!!見つけたぞ、見つけ、見つけた……!!」
彼がおれに狙いをつける。そして、彼の瞬きよりも早くおれの銃が火を吹いた。個性のない断末魔が響く。そして倒れた。
血まみれの男。服の上からでも目立つような外傷は、額に作られた