キラー・イン・ザ・レイク(邦題:湖中の殺人鬼!)

二週間ぶりに我が事務所のドアを叩いた客は紳士然とした執事で、涙ながらに「誘拐されたお嬢様を探し出して欲しいのです」と単刀直入に切り出した。もうアレから四年が経つのか。あの時も、あなたは、こうやっておれの事務所を訪れた。そして他の事務所も手当たり次第に訪れていたことだろう。つまり、全国の私立探偵が血で血を洗う、四年に一度の私立探偵のオリムピック───、「伯爵令嬢誘拐事件」が今年もやって来たのだった。

「事件」への参加要項が書かれたパンフレットを熟読。探すのは「助手」の項目だ。

助手の参加は一人につき一人まで。「相棒」も「サイドキック」も広義の助手とみなす。

やはり毎年、少しずつルールの死角は潰されている。幸い、参加させる助手は登録制ではない。「一名まで」とも書かれていない。そしておれには11人の元・相棒がいる。ならば捜査状況に応じて助手を使い捨て、ではなく、使い分ける作戦は有効だとおれは考えていた。(続く)

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