見出し画像

十月のU.N.オーエン

無職排除法の施行より半年が経とうとしている。つまり、私が国家権力によって合法的に排除されそうになってから半年が経とうとしているということだ。

就職か、死か。
執行機関の突きつける究極の二択の前に膝を屈した私には「私立探偵」の肩書きと、埃にまみれた雑居ビルのワンフロアが押し付けられることになった。

現代の貴族、生まれついての高等遊民である私が両親と引き離され───楽園追放を想起せずにはいられない───、急ごしらえの探偵事務所を構えてからの月日は、まさに放たれた矢のようだったと言える。あるいは、永遠に亀に追いつけない韋駄天に喩えるべきか。

大地を担う神話の巨人よりもむごたらしい苦痛を背負う私の事務所に一通の手紙が舞い込んだのは十月のことだった。曰く、執行機関は絶海の孤島に建つ洋館に、四月からの新米私立探偵を集めてパーティーを催すとのこと。ちなみに断れば【排除】されるらしい。

どう考えても一網打尽の罠だ。【続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?