マップ・オブ・スター(邦題:星の地図を探して)

静かに静かに寝床を抜け出し、洗顔を済ませて髪に櫛を通す。翡翠の眼鏡をかけ、鏡の前の自分を凝視する。

ヒスイのメガネ。
勇者大学の卒業生に贈られるアクセサリ。観察した相手のレベルを☆の数で知ることが出来る。

更に凝視する。やはり僕の頭上に浮かぶのは小さい☆が一つだけだ。

昨日の冒険に思いを馳せる。
───行商人を護衛する依頼。待ち伏せの罠。銀狼、それらを率いる人狼。依頼主と馬車を守り、十分な報酬を貰い、酒場に報告を済ませて───、事実としては覚えている。
だが戦いの興奮、勝利の高揚を思い出そうとすれば、それは遠い記憶のように曖昧だ。だが、就寝する前に鏡の前に立った自分の頭上に小さい☆が四つあったのは、それだけは覚えている。……やはり今回もそうだ。宿屋に泊まると、レベルが1に戻っているのだ。

部屋に一つしかないベッドから三人の仲間が寝返りを打つ音が微かに聞こえる。彼女らの頭上に浮かぶ☆はまさに星の数めいて。(続く)

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