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読書メモ「ギフティッドの子どもた

「ギフティッドの子どもたち」
角谷 詩織

昨年の秋に岐阜で行われた学会で、ギフティッドの専門家ではない私が、ギフティッドをテーマにしたシンポジウムに企画者として参加しました。
(そのときの話は、いくつか記事にしました)

ギフティッドをテーマにしたシンポジウムを準備中|Mariko Tokoro(副業・兼業・セカンドキャリアを支援するキャリアコンサルタント) (note.com)

ギフティッド:初めて知ったこと|Mariko Tokoro(副業・兼業・セカンドキャリアを支援するキャリアコンサルタント) (note.com)

専門家による初めての一般書

ギフティッドに関する書籍は何冊もありますが、研究者が記した本は翻訳書が主で、お子さんがギフティッドかも・・・と思われた保護者が気軽に手に取って読める専門書はなかったように思います。

著書の角谷先生は、出版社から新書でギフティッドの本を出さないか?とオファーを受けたときに、ご自分で書いてよいのか、書けるのか、とずいぶんお悩みになり、恩師に相談したと、あとがきに記されていました。

困っている保護者が「知りたい」ことが書いてある

「「ギフティッド」とは天才児や発達障害児だと思っている人は多い。しかし、並外れた才能はあるが天才とは限らないし、必ずしも発達障害を伴うものではない。そもそもどんな特徴があるのか。理解するための一助となる一冊。」

出版社のサイトからの引用です。実際に本を読んでみて、ギフティッドに関する研究をベースに、いまわかっていることを、おそらく保護者の方が知りたいと思うであろうことを、読みやすくまとめられた本でした。

ギフティッドの判定は難しい

多くの方が、子どもの同級生にギフティッドと思われるお子さんがいたら、「うらやましいなぁ」「すごいなぁ」と思われるでしょう。

しかし、ギフティッドと判定されたお子さんをお持ちの保護者さんは、その多くがいろいろなことに困り果てて、判定を受けることになったというケースが多いそうです。

ギフティッドを発達障害だと誤診されるケースもありますし、ギフティッドは発達障害ではないけれど似たところがあるのも事実です。
また、ギフティッドと思われると判定されたとしても、何か対処法が示されるわけでも、「で、どうしたらよいの?」とさらに途方に暮れることに。

教育者の心で取り組む研究

著者である角谷先生は、教員養成校にお勤めで、ご自身も教員になるつもりで大学に入ったと聞きました。教育心理学、発達心理学を学ばれ、博士号も取得されていますが、先生のまなざしには「教育者」の心があるなぁと思いました。

つまり、ギフティッドという興味深いテーマを研究しているのではなく、先生の関心事は子どもそのもので、一人の子どもが、学校で困った状態にあるということに心を痛められているのです。それを何とかしたいという一心でご研究されているように思います。

本書を読んでいると、ギフティッドのお子さん、そのお子さんを育てる親御さんの話が随所に出ますが、その語りはリアルで、先生が一緒になって「どうしたらよいかなぁ」と悩まれている様子が目に浮かびました。

子どもとは多様なもの

IQが高いから天才児、授業中にふらふらと立ち歩けばADHDを疑われるなど、ステレオタイプな見方は大人が勝手に作った子ども像です。

大人にとって困った子は手がかかるのは確かですが、だからといって「ものさし」を使って、そこから外れた子は面倒みられません、が多くの教育現場の現状です。(そんな教育現場にしてしまったのは、なんでも学校に押し付ける制度とか政策によるもので、先生方が悪いわけではないと個人的には考えます)

でも、この本を読み、ギフティッドに限らず、子どもは多様で、障害とか病気とかでは片付けられないことが多々あります。一人一人を大切にするために、どんな視点で子どもを見たらよいのか、この本にはたくさんヒントがあるように思いました。

発売は11月17日。ぜひ多くの方に読んでほしい1冊です。

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