見出し画像

IBバンカーから漁師になった私。〜IBにいて苦しい方へ〜

最近の私は、とても幸せです。

数年前までキャリア迷子沼にハマり、毎日毎日が辛かった私からは想像できないほど、「幸せだなぁ」と毎日その思いを噛み締めています。

毎日好きなことしかしていないのですから、毎日が幸せなのは当たり前だと思います。

しかし、この「今の私の幸せの定義」は、数年前の私にはとても想像できるものではありませんでした。

私はかつて、15年ほどインベストメントバンカー(IBバンカー)をしていました。日本語では投資銀行マンとも呼ばれるその仕事は、平成の後半においては、戦略コンサルティングなどと並んで、いわゆる”すごい仕事”として認識されていたと思います。私もそんな仕事に就けていることを誇りに思っていました。

ワークライフバランスをとることなど、最初から頭にありませんでしたし、毎日の長時間労働に、毎晩の残業で慢性的に睡眠不足でも、それが当たり前だと思っていました。「こんな”すごい”仕事をしている自分は、ワークライフバランスなど、そんな甘いことを言っている場合ではない」という気持ちでいたというのも、正直なところです。

そんな私が、今、どのような毎日に幸せを感じているかというと、「好きな時に好きなことをする自由がある生活」であり、家の掃除や整理整頓をすることができる時間的余裕や、母親業をしっかりすることができていることです。

バリバリのキャリアウーマンである自分に酔っていた当時の自分からは、とても想像つかない今の自分の姿です。

さて、今回は、そんな私の状況をまさに説明してくれている話を紹介します。

ある日、テニスレッスンに向かう途中、「あー天気も良いし、私毎日楽しいことしかしてないなぁ。幸せだなぁ。でも毎日こんな幸せでいいのかなぁ。」と思いながら車を運転していました。そんな時に、偶然ラジオから紹介されたエピソードが、どんぴしゃな私に対するメッセージのようだったのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とても魚釣りが好きな漁師がいました。
漁師は好きな時間に起きて、釣りをして、子供や友達と遊んで楽しく過ごしていました。
ある日、あるビジネスマンがその漁師のそばにやってきて言いました。

男:「やあ、すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの?」

漁師:「そんなに長い時間じゃないよ」

男:「へぇ、君は魚釣りが得意なようだね。せっかくならもっと働いてみたらどうだい?」

漁師:「自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だよ」

男:「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの?」

漁師:「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…ああ、これでもう一日終わりだね」

男:「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、
きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。部下を雇ってもっと売り上げがでたらボートも買おう。そうしたら仲介人に魚を売るのはやめて自前の水産品加工工場を建てて、ビジネスを大きくする。その頃には村を出てロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ。そうすれば老後もお金ができるよ」

漁師:「なるほど、そうなるまでにどれくらいかかるのかね?」

男:「20年、いやおそらく25年でそこまでいくね」

漁師:「へぇ、それからどうなるの?」

男:「そしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。 どうだい?すばらしいだろう」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これを聴いて、「あ!今の私はこの漁師なんだ!」と思ったんです。

今まで、仕事を一生懸命やることが、人生の幸せだと思ってきました。
大きな会社で働いて、優秀と言われる人たちと働いて、高いお給料をもらって、欲しいものを買って、話題の有名レストランに行くことが幸せだと思っていた
んです。

当時の私は偽りなく、正直にそう思っていたのですから、その当時の自分は自分としては幸せだったのです。

ここで思うことは、私に訪れた変化というのは、「”アイデンティそのもの”の転換」なのだということです。

私自身、「昔の自分」と「今の自分」は全く別人です。

さて。この「漁師の男の話」の原典に当たりたくて、英語で調べてみたところ、どうやら、この”あるビジネスマン”というのは、”an Investment Banker”、つまり、IBバンカーでした。こういう話に、投資銀行マンが、漁師との対比として出てくるところからも、IBバンカーが幸せ、Well-beingの定義から最も遠いところにいる人種だというように見られていることが分かります…。

IBにいて、苦しい気持ちを抱えている方へ。

沼から抜け出すには、「自分の幸せ」を本気で考えてみることです。

今のあなたは、あの漁師のことを夢物語だと思うかもしれませんが、IBマンから漁師になった私が断言します。

漁師の世界、超楽しいですよ。


この記事が参加している募集

お金について考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?