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1.がん治療でお悩みの方へ綴る 《プロローグ》

私のところへがんのオンライン相談をされる方は、主治医に提示された方針を完全に受け入れられず、ネットや書籍などの情報をかき集め、結果的に混乱を招き、自分が進む道に自信を持てず、迷宮入りしてしまった場合が殆どです。それは羅針盤も術もなき航海に突然放り出されてしまったことによって引き起こされます。

そして指標を探すうちに、種々の選択肢の中に私がポンと入ってくる。なぜ私が選択肢に? もはや私は普通じゃないからだ。相談者は私に何かを感じるのでしょう。確かに、自分はマイノリティの極みの領域医師だと、嫌でも皆から教えられる。普通じゃないことを承知で私の話しを聴きたいと依頼が来る。それはある意味において出会いであり、ご縁でもある。故に、私はその依頼へ全精力を注ぎ、依頼者と真剣に向き合う。自分は主治医ではないので、敢えて口を濁す必要はない。口を濁したところで依頼者が迷宮から抜けることはないことを私は知っているからです。

私が知り得るその方の現状と事実に対し、歯に衣着せぬ言葉を使い、依頼者へは往々にしてかなりの衝撃を与えてしまう。という訳で、話の序盤でその旨を伝え、このまま続けて良いかの確認を取るようにしています。そして、全精力を注ぎ込むことに対する対価は頂きますのでご了承くださいませ。終わってみれば格安だと思って頂けるべく力を尽くしています。

人が「その道の人」に相談する理由は真実を知りたいからであります。しかし、この世に真実など存在はしない。あるのは事実と偏見のみと言っても過言ではありません。100人いれば100通りの偏見があり、1000人いれば1000通りの偏見がある。結局は昏迷が深まってしまう。羅針盤を手にするのは容易ではないと思い知らされてしまう。

人は何かにすがりたい性癖を持っていることが多いものです。言ってしまえば私も偏見の中の1人に過ぎません。しかし、主治医が口を濁す不都合な事実を含め、私は白日の下に曝すことを信条としています。実は、依頼者が知りたい点はそこにあるのです。闇に光が当たることを依頼者は心の底では、みな、望んでいると言えるでしょう。そこで初めて自分が置かれた全貌が明らかになるからです。霧の濃い暗闇を彷徨っているとき、月の光が周囲を照らすような感じだろうと思われます。状況が分からなければ一歩を踏み出すことは難しいものです。

しかし、その事実は時として人に激しい衝撃を与えてしまう。光が差し込んだが故に、自分の置かれている状況が窮地であることを知ってしまう場合があるからです。とはいえ、状況が分からなければ対処法も分からない。結局は迷宮入りのままになってしまう。特にがんという病気は死を意識させる病であり、制限時間がそれほどない方もいます。だからこそ、自分の病気に対してある程度の全貌を知った上で全力で向き合わなければならない。見えたからこそ湧いてくる疑問もあり、それを主治医に確認する事もできるようになります。だからこそ、その事実を告げる自分も同様の覚悟が必要になるのです。

全貌を知って安堵する方もいらっしゃる。それはそれで新たなイバラの道への始まりとなったりもするのです。

…つづく

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