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【詩】沈黙

沈黙した。
冬のように、ありのままの空気が沈黙しているのではない。
秋は、気温や景色が移り変わっていく中で
意図しておしゃべりをやめて初めて沈黙が生まれる。
だから秋の沈黙はどこか華やかだ。

繁華街から敢えて路地を一本奥に入るような、
喧噪の残り香がある。

「さあみんな、沈黙しましょうね。こころのお喋りを止めてみましょう!」
わやわや会話していた園児たちが沈黙にトライしている。

微笑ましく、柔らかく、意図的で、誰かが何かを敢えて教えている。
否、敢えて教えてもらっているのか。

目を閉じて可愛らしく沈黙している園児たちの瞼の裏に
ママがやってきて抱きしめてくれる。
「◯◯ちゃん、大好きよ」
そして豊かな愛と秋の恵みをもたらしてくれる。

園児たちはとっても嬉しくて
「わーいありがとう! ママ大好き!」
と、沈黙したままママを抱きしめ返した。

沈黙から目が覚めた。
裏路地の私は園児たちを微笑ましく眺め、
そして私もまた園児の一人であると思い出した。
ママから秋の豊かな愛を受け取った
子供のような私。


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