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#小説

ショートショート 『好奇心』

とある国の中の とある集落の中の とある小さな森には不思議な湖があるという。 その湖は女神が住んでいるため、女神の湖と呼ばれている。 不思議というのは女神が住んでいることではなく、女神がする行動にある。行動とはこのようなものだ。 ・誰かが湖に物を落とす。 ・すると女神が現れ「あなたの落としたものはこれですか、それともー」と言い、落としたものと、それより価値の高いものを選択肢として提示する。 ・落とした人が正直に答えるとなぜか価値の高いほうが返却される。 というわけで、こ

自分の声が好きですか? 大抵の人は、自分の声を録音して聞いてみると こんな声じゃないはず と思うでしょう。 私もそうでした。 俳優を始めた時から 声にコンプレックスがあり こもった声だとよく言われました。 養成所の講師からも 「お前の声は舞台では通用しない」 と言われました。 ヴォイストレーニングを受けましたが 客観的にも、舞台での俳優活動に限界を感じ 裏方に回りました。 最近ご縁あって ラジオの構成作家・ディレクターをやらせてもらいながら 出

その心とは

親指でスクロールした画面にSNSに、飛び込んできた文字に、智美は息を呑んで立ち止まった。 『付き合ってないけど、誰にも取られたくない人』 「宮木、どうかした?」 向かいに立つ元木が、スマホを見つめる智美の表情の変化に声を掛ける。 智美は顔を上げて元木を見るか、このまま一瞬で落ち着くか、考える。 きっと今、元木の顔を見たら、泣いてしまう。 「みやもとー」 「いえ元木です」 「いえ宮木です」 「木コンビだからいいっしょ」 「「意味分からないです」」 智美と元木

【ちょっとした話】欲求の話・神社参拝で

 “男”は毎月一回、神社へお参りに行く。そこは車で二〇分程のところにある神社であり、そこそこ有名だ。だから、遠くのかなり有名な神社へ行く必要もないと“男”は決めている。  ある日、バラエティ番組で神社仏閣テーマの特番があった。お参りに関する作法や訪れている神社の歴史や御利益など。この手の番組が放送された翌日以降に人がよく訪れるといった現象は、『御朱印ブーム』に匹敵するほど、昨今の流行りであった。  別の日、”男”は今年行くと良い神社を放送している特番を目にした。  神社

【応募作】切り裂きジャックの愛弟子①

 自分はこのまま、どこかで見知らぬ誰かを殺して、自分も死ぬのだろうと思っていた。  そういう風に育てられた。『蠱毒』と呼ばれる子供たちの運命は、羽虫のように儚い。毒に慣らした子供の中から、生き延びて容姿が整っている者だけが売りに出される。  死にかけたもの、毒で皮膚がただれて見目が悪くなった者は、容赦なく殺されてその肉を別の用途に使われた。  殺されるか、死ぬかしかない。この場所に売られてきた子供には、それしか選択肢がない。  そのはずだった。 「この子を買うよ、気に入った

別に有名にならなくても、「つくって楽しい」だけでも、いいんじゃない? -とある音楽系YouTuberの独白-

「YouTubeのチャンネル登録、1万人なんてすごいですねぇ」 最近ではそんなふうに言ってもらえることも増えてきた。やってきたことを認めてもらえるのは、すなおに嬉しい。 大学生のころから、YouTubeに歌ってみたの動画を上げ続けてもう3年になる。コロナのせいで、大好きなひとりカラオケに行けなくなったから始めたインドアな趣味だったが、人間は「出来ることがそれしかない」と続くもののようである。 最初のころは1本つくるのも一苦労だったが、いまではもう慣れたもの。平日の夜に練

『凶器』

とある政府の要人が 公衆の面前で 儚くも刺殺された 容疑者はすぐさま捕らえられ 動機 目撃情報 状況証拠 すべては整っている 残るは 被害者の遺体から推察された 渡り10cmほどの 刃物 つまり凶器だけが 現場からも 容疑者の持ち物からも 見つかっていない 政府は真相を究明せんと 秘密裏に ”刃物を呑み込んだ可能性” があるとして 容疑者を解剖した 執刀医の単純なミスで 容疑者は死に至った けっきょく胃袋から 刃物が見つかること

小説「仇討ちのブラッドフラワーズ➄」~ジョジョの奇妙な冒険より

                Ⅴ    五人の目が届かないであろう、車両の継ぎ目まで来て、ディマイヤは荒い息をついた。口の中が苦く、カラカラでイヤな感触だ。こらえきれずにその場にへたり込む。アニキの家にあった、アブドゥルの写真には、「炎」というメモが書かれていた。ジョセフには「念写」、承太郎には「強大な力」。さっきまで居た車内が暑く感じたのは、アブドゥルのもつ「炎」の力なんだろう。あとの二人のアレはなんなんだ。と、いうことは。眠ってしまった承太郎が「強大な力」を持つ、という

非合理な特殊解8

夏子は神輿の丸太が当たって痛くなった肩を回してみたりしながら、茅場町の会社へ歩いて向かっていた。すれ違う人たちに腕が当たらないように気をつけながら腕を振り回した。 橋の上で腕を伸ばしながら空を眺めた。今日も良い天気だ、と夏子は思った。 オフィスにはすでに森田と数人の社員ががいた。彼らは昨夜は会社で徹夜しなかったようだ。誰もとても元気そうな顔をしていた。 ドアが閉まる音で夏子に気付いた森田は、ニコリと微笑んだ。 「おはようございます。今日はスッキリしてる。眠くなさそうで

録音する日課(2022/04/18)

朝、起きると散歩に出かける。今日は晴れていたので気持ちがよかった。 最近は、散歩をしながら昨日あったことや今日やること、あと考えていることなどを声で録音してみている。1ヶ月分ぐらい貯まってきた。まだ、聞き返したりはしていないので、ちゃんと録音出来ているのかはわからない。とはいえ、朝から声を出すと目が覚めて、それなりに楽しいので続けようと思う。 文章を書くのは好きだが、話すのは苦手なので、この朝の録音で苦手を克服しようという目論見もある。が、結局自分のペースでダラダラと話し

もっとメジャーなところで

『文學界』2022年5月号に掲載されている藤田貴大の戯曲「Light house」を読み終えたので、感想というよりかはもっと広い意味で、考えたことを書いていこうと思います。