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現場を見る大切さ

昨年、Xデザイン学校という社会人向け研修でデザインの勉強をしてきました。そこでの学びが、今「現場を見る大切さ」につながってきているなあと感じたので、学びを備忘録的に書き留めておきます。

以前の記事でも書きましたが、世の中には「抽象が好きな人」と「具象が好きな人」に分かれるんじゃないかな、と思っています。「抽象」を考えれば広く浅くの理解が進み、「具象」を考えれば狭く深くの理解が進む。利き腕だけで生活するのが難しいように、両方上手に活用しましょう、というお話です。

これって、デザインの世界における川喜田二郎の「W型問題解決モデル」というフレームワークにそっくりなのです。「どうやって本質的な課題を見つけて、仮説を見つけて、検証していくかをステップにしてみました」というフレームワークだと理解しています。その手法が、結局「抽象と具象を上手に行き来しようね」なのです。

具象によりすぎると、個別最適になりかねません。例えばクライアントの「ここが課題なんですわ」という声は、クライアントから見える部分の、表面化した課題にすぎないかもしれません。これは樹における枝や葉の部分で、もっと樹そのものにあたる部分の課題をつぶしていくには、「他のパターンや他の人もそうか?」と抽象的に考える必要がありそうです。

課題解決の大原則は、「社会がどう動いているか、人間がどう動いているか、どう考えて行動しているか」をモデル化して、その中で「なぜその課題が出てきたか」を明確にすること。その一部分が、クライアントの認識している課題なのだから、クライアント以外の事象や社会全体を見たほうが本質的な課題が見えやすそうです。

ここで言う「モデル化」というのがどういうことだろう?と考えてみました。例えば今日の身長が165cm、明日が166cm、明後日が167cmだった場合、3日後の身長は168cmになる気がするじゃないですか。これは、「毎日1cmずつ増える」という現象を数式で表したものだと思うんです。こうすることで、先ほどの3点以外の日も予測することができるよね、というもの。

同じように、おとといの朝ごはんが食パン、昨日の朝ごはんがレーズンパン、今日の朝ごはんがバターパンであれば、明日もなんかのパンを食べる気がするじゃないですか。これは先ほどの三つの具象を毎日パンを食べる」と一言で表現したものです。つまり、「いくつかの具象を一つの言葉で表現すること」がモデル化といえそうです。


Xデザイン学校の研修では、クライアントにあたる企業担当者様から簡単な会社概要について話題が提供され、その中で感じた「当惑」を手元でメモしておきます。そのあと、その当惑をチーム内で共有する、というプロセスを経ました。

ここの当惑とは、「え、どういうこと?」というものです。自分の知識・考え方・価値観に沿わない部分のことだと理解しています。これをシェアすることで、例えばA君軸で情報の論理が繋がりモデル化され、B君軸で繋がりモデル化され、C君軸で繋がりモデル化され、というように、ヒアリングした内容がどんどんと立体的になっていくのかも、と思いました。

それを最後シェアすることによって、もっと大きなモデルを得ることができる。A君もB君もC君も納得するようなモデルが得られれば、世界をかなり解像度高く広く見れているのではないか、と思います。


このクライアントからのヒアリング後は、フィールドワークへ出かけました。いわゆる「現場を見る」ということ。

フィールドワークは「野外科学」とも言われますが、クライアントから聞いた情報以外の情報、野外の情報を使って世の中を解明することが主な目的です。歩いていく中で、「もしかしてこうしたら?」というアイデアや気づきがポコポコ出てくる性質があるので、発想法としても活用されていると理解しております。

ここでポイントは、ある程度フィールドワークのスコープを決めておくこと、だと思っています。先述の通り、課題解決の前提は「社会全体のモデル化」ですが、社会全体を全てを精度良く解像度高く理解するのはめちゃめちゃ時間がかかります。だからこそ、課題解決に寄与しそうなモデル化の範囲を区切る必要がありそうです。

例えば、「朝食のモデル化」ひとつとっても、「世界の人々の朝食のモデル化」をするのはめちゃめちゃ大変ですよね。だからこそ、「日本人」あるいは「都会の」みたいな形で区切ることが、効率面で大切です。「カフェにおけるモーニング」という「どこで」という軸を狭めるのも良いかもしれませんね。


フィールドワークをしていると、自然と「これいいかも?」みたいなアイデアがポコポコ出てきます。なぜ、フィールドワークしているとアイデアが湧いてくるのでしょうか?推測にはなってしまいますが、「直接発想を目指すものではないから」と「情報一つ一つが具体的だから」の二つが理由だと考えています。

一点目の「直接発想を目指すものではない」というのは、あくまでもこのプロセスの目標は「世の中の解明」「世の中のモデル化」である、ということです。目的は「発想」ではなく、「モデル化」であるということ。なんかゆるっとした気分の時にアイデアが出てくるように、「アイデアを考えるぞ!」と意気込まないからこそいいアイデアが出るのかもしれませんね。

逆に、要素と要素を総当たり的にぶつけて、新奇な組み合わせを目指すアイデア発想法は、「聞いたことない新しいアイデア」を生み出すには向いていますが、「新しいだけ」なものが出てきやすいという特徴があります。一方このプロセスでは、概ねテーマで定めた内容に関与するアイデアの種が出てくるので、地に脚が付いたアイデアが出てきやすいのかな、と思います。

二点目の「情報一つ一つが具体的だから」というのは、フィールドワークなどで得られた膨大なデータを付箋という形で起こしたり、まとめるプロセスがあることで、必然的に一つ一つの要素を観察する必要がでてきます。そのためにも常にちゃんと観察して、頭に記録しておく必要があります。インプットされた情報は、何よりも具体的で、現実的。

具体的というのは情報量が多いということだと思うんです今回のフィールドワークで「土の香り」というのがキーワードになっていました。つまり、インタビューのその場の雰囲気や、フィールドワークで見た情景といった情報のことを大事にしようね、ということです。背景や情景といった情報が多いほど、アイデア発想の確率も上がるから、なのだと理解しています。


今回の研修での気づきの一つとして、フィールドワークは「観察」だけでなく、店員や世の中の人への「インタビュー」が非常に有効であるということが分かりました。圧倒的に情報量が多いし、次の行動に繋がるきっかけが生まれやすいな、という実感があります。

以前の記事でも書きましたが、僕含めデジタル屋さんは画面上で得られるデータや数値を活用してモデル化した気になる時があります。だからこそ現場へ行って色々感じてみる、行動を観察してみる、ということが大事になるのかもしれません。

もう一つ気づきとして、このワークは常日頃行える、ということ。今回は研修という形で遠征して時間をとって、という形を取りました。ですが、複数テーマを頭に入れて、日常的に気づきを手元でメモしておいて、付箋に起こすということの方が効率的ですよね。手元で気づきをメモする癖をつけようと思いました。

こう考えるとなんだか自由研究みたいですね。気になった方をみてみよーという形で適当にうろうろして、その結果をまとめる。幼少期に試行錯誤しながらやった自由研究が思い出されます。

なんか真面目に「データ分析」とか「マーケティング」とかお堅い言葉じゃなくて、「自由研究」みたいなゆるふわな方が、ワクワクしながら仕事できるのかもしれないな、などと思うのでした。


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