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十六夜杯選者の一人、亀山こうきの特選6句の発表(亀山賞)

 秋のみんなの俳句大会、『十六夜杯』皆さんお疲れさまでした。ご投句された方も、眺めて楽しまれた方も非常に盛り上がった俳句大会だったのではないでしょうか。

 僭越ながら今回も俳句部門の選者の一人を務めさせていただきました。無記名の状態ですべての句を拝見させていただき、『上位6句+予選6句の計12句』を選句させていただきました。
今回も多くの面白い句があり、苦しみながらの選句になりました。選ばさせていただいた句とそうでない句の差はほとんどありません。きっと私の好みの問題です。結果が振るわなかった方も気落ちされず、これからも俳句楽しまれてください!

 それでは早速、

・十六夜杯の亀山賞(特賞)


月光るきれいな嘘で乾杯す

作者 Minmin (竹原なつ美) さん

 きれいな嘘という修辞にとても惹かれました。嘘はどこまでいっても嘘です。でもきっと誰も傷つけない嘘、みんなが幸せになる嘘もあるんでしょう。

 「乾杯す」といっていますが、多分そこにいるのは一人です。男が一人、秋の美しい月に向かって乾杯をしている。男の嘘でだれかが傷ついた。でも、真実はもっと誰かを傷つけることを男は知っていた。だから、男は全てを自分の責任として背負いこんだ。誰もそのことを知らないし、人は男のことを人でなしと罵るかもしれない。

 男の中の男。そんな男でありたいと思う自分は、理想の自分をこの句に重ね、特選とさせていただきました。
 
 素敵な一句ありがとうございました。

・亀山賞次席(2位)


秋の果カメラのフィルム巻き戻す

作者 林白果 さん

 フィルムを巻き戻すという行為そのものがノスタルジック。

 俳句は17音しかない特性上、感情を直接言わず、描写して表現するという形態をとらざるを得ない。秋の果というもの寂しさ溢れる季語の中、フィルムを巻きなおすという行為。取り終えたカメラを現像するときの喜び、きらきらした思い出。そんなものを噛みしめながら、そこに映る人たちとの温かかった出来事のことを思い出しているのだろう。

 感情を直接うたい上げない、これぞ俳句らしい俳句。ありがとうございました。

・3位


新宿でギターと座る星月夜

作者 テルテルてる子 さん

 新宿を題にした句として有名なものに福永耕二の『新宿ははるかなる墓碑鳥渡る』がある。鳥渡るは渡り鳥のことで秋の季語。この句も新宿を題にした秋の句。新宿に秋はよく似合う。

 星月夜は月が出ていない秋の夜のこと。新宿と言う不夜城のなか、秋の星の一つの如く、作者とギターは存在している。

・4位


朝刊のバイクの音や月白し

作者 西野圭果 さん

 月の存在感が際立つ一句。朝刊と言うことで夜の月とはまた違った月の印象を読者に与える。

 月白しと言い切ったことで、秋の朝の澄み切った感じがよく表れていると思います。バイクの音が聞こえてくる聴覚的な仕掛けもよく効いています。

・5位


産んでやる君の子供だタルトタタン

作者 とのむらのりこ さん

 作者がどんな人なのか良く伝わってきます。

 力強い上五中七。優しい下五の対比が対比が見事で、作者の立体的な心情を見事にあらわせています。タルトタタンって語感がいいですよね。

・6位


お互ひの余生あつめて大花野

作者 鮎太 さん 

 花野と言うと春のイメージですが、実は秋の季語なんです。華やかなでなく秋の落ち着いた小さな花が咲いています。余生と言う言葉が季語に呼応して味わい深い一句になっています。

・その他最終候補6句の紹介

ちいさな手籠いっぱいの秋野菜
チューダ さん

運動会バトンはずっと笑ってる
旬 さん

学園祭終わりの星が満ちている
たまごまる さん

亡き人の毛布の温み秋深し
チズ さん

小春日やキリシタンの里は静か
見据茶 さん

運ばるる棺の軽き秋の暮
うみのちえ さん


・他の先生方の選者賞のリンク


・ご投句一覧


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