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俳句 「新婚とフランスパン」5句

 新婚時代の話をしよう。

 妻も小生も超がつくほどの早起きである。だから、休日の朝は、散歩を兼ねて近くのパン屋に朝食を求めに行くのが日課だった。小生はそのパン屋の、焼き立てのバターロールが大好きだった。妻はいつも決まって、ジブリ映画に出てくるような長いフランスパンを買っていた。

 しかし、小生にはそれが不思議だった。というのも、妻と出会ってこの方、フランスパンが好きだなんて話は聞いたことがなかったし、そのフランスパンが特筆するほど美味しいという訳でもなかったからだ。

 ある日、小生はその理由を妻に問うてみた。
 「フランスパン好きだったっけ?」
 「いや別に」
 「あそこのフランスパンの味、好みなの?」
 「そんなに」
 小生は困惑した。「だったらなんで毎回買うの?」
 「一人の時は長すぎて買えなかったけれども、二人だったら分け合って丁度いい。なんかそれが嬉しい」

 小生もその日から、フランスパンが大好きになった。

初夏の朝パン屋にパンの焼きあがる
二人では狭い軒です朝驟雨
渡されたタオルに君の香水が
牛乳の注ぐ手の美しい夏
朝の虹フランスパンを分け合って

亀山こうき


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