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創作の糧(皆様の気になった記事を紹介)

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ライティングや創作のヒントになるような記事。特に再読したい記事をスクラップしています。素晴らしい記事を集めています。ご参考になれば幸いです。
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#読書感想文

【書評】人工知能が俳句を詠む ―AI一茶くんの挑戦―

本書は、北海道大学の教授陣が、俳句を生成する人工知能である「AI一茶くん」を研究・開発し、現在の人工知能がどこまで達成し、なにができていないのかを紐解いた書である。 本書では、人工知能における俳句の意義について、次の通り述べられている。 人工知能の研究にとって俳句を扱う意義はどこにあるのでしょうか。私たちは、単に俳句を生成する人工知能をつくることを目的としているのではなく、最終的には人に交じって人と対等に句会に参加できる人工知能を開発することがゴールと考えています。人と対

山上憶良は「万葉」のラッパーだった

『私の万葉集 二(全五巻) 』(講談社文芸文庫/2014年)大岡信 現代詩人・大岡信の『私の万葉集』第二巻。巻二の補遺及び、巻五から巻七までを取り上げる。巻五は、『万葉集』全二十巻の中でも特異であり、大伴旅人と山上憶良の二人に尽きるといっても過言ではなく、しかも、濃密かつ心に残る和歌の抒情の魅力が詰まった巻として有名。『万葉集』の面白さを存分に感じる一冊 第2巻(補遺)相聞、第5~7巻。第5巻は、「令和」の語源になった「梅花の宴」とその主催者であった大伴旅人ともう一人

芭蕉を崇拝している「俳句入門書」

長谷川櫂『決定版 一億人の俳句入門 』(講談社現代新書) 「五・七・五で詠む」「季語を入れる」「切れがある」等々の、俳句の約束事を明快に解説。この1冊で自在に詠める! 初心者から上級者まで必携の書。「朝日俳壇」、読売新聞「四季」等で人気の俳人による明快な俳句入門。凡百の入門書とは一線を画する、ユニークで有用性の高い内容です。 こだわりの俳句道場という感じで初心者向きではない。ただ芭蕉の例題が多く、芭蕉時代の俳句の考えを元にしているので、芭蕉の俳句の手引としても読める。例え

わたしの本棚112夜~「桑原武夫と「第二芸術」青空と瓦礫のころ」

 言葉は、常に何らかの文脈とともにある。一つの文章の中だけではなく、他の文章や書かれた時代へ、文脈をたどっていくと、言葉は新たな意味を持ち始める。今や「俳句用語」として整理されているかに見える「第二芸術」は、どのような文脈で書かれたのだろうか。  はじめにで著者が述べられている文章です。俳句を学んでいると、戦後の「第二芸術」論争は避けて通れない論考だと思います。著者の鈴木ひろし氏は1957年生まれで、大阪外大卒業後、大阪府立高校教員をされ、俳句グループ「船団」の先輩でもあり

古本は、タイムスリップだ。 

わたしは古本が好きです。 買う本のほとんどが、じつは古本。 安い、というが1番の理由です(^^) でも、もうひとつ理由があって、 古本は、タイムスリップだと思うんです。 深田久弥の「日本百名山」。 2年ほど前に古本屋で買いました。 後ろを見ると、消費税がない。 奥付を見てみましょう。 「昭和53年11月27日発行  昭和62年11月25日18刷」 消費税は平成元年に導入されたから、まだこの頃は表示されていないんですね。 初版は昭和39年ですが、著者の深田久弥は、百名

わたしの本棚105夜~「隣の駅が見える駅」

 この春、ご恵贈いただいた句集です。鮮やかな黄色が綺麗で、ぱっと目をひく装丁です。甲南高校国語教師をはじめ、元船団の会副代表などのたくさんの顔を持つ著者の第三句集です。帯に~平成を駆け抜けた「船団」時代を総決算。初夏というよりは「惜春」を思いたい。初秋の風を身にうけながら「夏の果て」に心を寄せて~とあります。 ☆「隣の駅が見える駅」塩見恵介著 朔出版 1800円+税 あとがきによると、句集のタイトル「隣の駅が見える駅」は、神戸の阪神電車にはこのような駅があって、いつも私は

『短歌タイムカプセル』東直子ほか編 (書肆侃侃房)

短歌のアンソロジー。ソフトカバーで軽くてカバンに入れやすい本。値段も手ごろ。通勤電車の中で読んだら良さそう。(わたしは通勤していないけどね。)わたしは俳句や短歌にはあまり縁がなくて、どちらかというと詩を読むことが多いのだが、このアンソロジーで短歌を集中的に読んでみて、五七五七七の短歌独特の言葉の空間がとても面白いと思った。狭すぎず、かといってそれほど広くないのでやっぱり不自由なのである。たくさん読んでいくうちに、自分でも詠めないものかと思ってしまう。でも五七五七七はけっこうき

【選は創作なり】加藤郁乎編『芥川竜之介俳句集』

昨年末NHKBSのドラマ『ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』をみました。主演は松田龍平。無表情の演技がすばらしかったです。映像の品質も高く、100年前の中国の現実をリアリズムで描いていて、なかなかみごたえがありました。 芥川龍之介は、大正10年に新聞社の海外視察員としての中国を訪問しますが(紀行文「上海游記」「江南游記」)、その視察中に胃腸を悪くしたのが原因で、帰国後、睡眠薬中毒になっていきます。それが自殺の原因にもなっているともいわれます。自殺の原因は文学的な解釈もされ