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【写真について知っているいくつかのこと Vol.6】 カメラの仕組み ~一眼レフカメラ《前編》~ by KISHI Takeshi


カロワークスのKISHI Takeshiです。写真やカメラに関わる技術や歴史、写真業界の最近の出来事や、個人的な思い出話などを月イチで綴るシリーズの第6回です。

今回は「一眼レフカメラ」についての話題です。

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私が写真学生だった頃…。入学してすぐの1年次の実習では、一眼レフカメラを使って、35mmモノクロフィルムを撮影・現像・引き伸ばしプリントまで行うプログラムがあり、学生は新たに購入するか、家族や親戚などから貰い受けるなどして、自分専用の一眼レフを準備する必要がありました。
(当時はまだギリギリ、新品のフィルム用一眼レフカメラも販売されていたのです…!)

フィルムの装填、フレーミング、フォーカシング、露出決定、シャッターレリーズ…という一連の撮影の動作を身につけるのに、この小型かつ精密に働くカメラは最適な機材で、当時の写真学生の中には、入学当初に買った一眼レフを4年間愛用して、卒業制作まで使い続けたという人も多かったように記憶しています。

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一眼レフカメラの「一眼」は撮影用とファインダー用のレンズ(眼)が同一であるという意味で、「レフ」は光を反射する「レフレックス(reflex)」に由来し光学系の一部に反射ミラー(reflector)を用いた構造のカメラです。実用上では以下のような特徴があります。

・撮影レンズを通過して結ばれた像をファインダーで確認できる
・撮影レンズとファインダーの視野の差である「パララックス」が生じない
・様々な交換レンズを使用する際に画角の違いなどを確認できる
・内部にミラーやプリズムなどの光学系を有するため本体のサイズが大きい

ちなみに、前回の記事で紹介した「カメラの分類」では、以下のような要素があてはまります。

《画像の記録方式》
・アナログ/デジタル
《外観のサイズ》
・小型/中型
《画面サイズ》
・35mm判(ライカ判)/中判 ほか
・35mmフルサイズ/APS-C/フォーサーズ/中型 ほか
《本体・レンズの機構》
・レンズ交換型
《ファインダーの機構》
・一眼レフ

35mmサイズだけでなく、一部の中判フィルムカメラや中型センサのデジタルカメラにも一眼レフの機種があります。ただし、後述するミラーやレンズの機構が画面サイズに合わせて大きくなり、重量も大幅に増加するため、スタジオでの使用を想定したものが多かったように思われます。(ちなみに中判6×7サイズの一眼レフ・PENTAX 67はボディ+レンズで2kg近い重量になるため、写真学生の間では「鈍器」などとも呼ばれて親しまれていました。)

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さて、一眼レフカメラの構造を図解で見てみましょう。

一眼レフ


【レンズ】
様々な用途で用いられる一眼レフカメラでは、焦点距離・画角、口径・明るさ、単焦点・ズーム、特殊用(マクロ・シフト・魚眼…etc)など多くの選択肢の中からレンズを選択できます。

カメラ本体内にミラーボックスの機構があるため、レンズの最後端がミラーに接触しないように、焦点面までの距離(バックフォーカス)をとる必要があります。とくに初期の一眼レフでは、広角レンズの設計が難しく、接写や望遠用レンズが用いられることが多かったようです。


【絞り】
一眼レフカメラでは、レンズの絞り径を変えた際のボケの違いをファインダーで確認できる利点があります。ただし、絞りを絞り込むと、ファインダー像が暗くなり、フォーカシング調整も困難になるため、フレーミングやフォーカシングの確認時には絞りを開放にして、レリーズの瞬間に決められた絞り径まで絞り込まれる「自動絞り機構」を備えています。


【ミラー】
レンズとイメージセンサ面(フィルム面)の間に45°に傾けた可動ミラーがあり、レンズを通った光束はミラーに反射してフォーカシングスクリーン上に像を結びます。撮影時にはミラーが跳ね上げられて、レンズからの光がセンサやフィルムに届くのですが、スクリーンとセンサ面の位置は共役の関係にあるため、スクリーン上でフォーカスを合わせれば、センサ面上でもフォーカスが合う構造になっています。

このミラー機構では撮影の瞬間にはファインダー側に光が届かなくなり一瞬ブラックアウトします。初期の一眼レフでは、ミラーが撮影後も跳ね上がったまま…というものでしたが、シャッターと連動してミラーが再び45°の位置に戻る「クイックリターン機構」が搭載され、連続的な撮影が可能になりました。

また、ミラーの動作で振動や音が発生することから、ブレの発生が許されない精密な撮影や、静音で撮影しなければシーンでは問題となることがあります。そのため、ミラーを手動で跳ね上げる「ミラーアップ」の機能が多くの一眼レフに備えられています。


【フォーカシングスクリーン】
フォーカシングススクリーンは片面がフレネルレンズ、反対側がマット面になっており、前者はファインダーに光を導く際に視野全体を明るくし、後者はフォーカシングの確認に利用されます。機種によっては像の収差を抑えるコンデンサーレンズを有するものもあります。

アナログカメラではこのスクリーンを交換可能なものも多く、十字や方眼などフレーミング用の刻印が施されたものや、中央にプリズムを設けてマニュアルのフォーカシングに用いるものなどがありました…。

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と、ここまで書いてきて、今回の記事がかなーり、長大になることに気付きました…。そのため、今回を《前編》、次回を《後編》として、2回に分けてお届けさせて頂きたいと思います。

「一眼レフ」には、様々な機構が詰まっており、それらはまさに、現代のカメラシステムの代表選手と言っても過言ではないでしょう。どうぞ、次回《後編》も引き続き御覧頂けましたら幸いです…!

また、このnoteでお会いしましょう~。


*私の担当シリーズ【写真について知っているいくつかのこと】のマガジンもよろしければご覧ください~。


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