見出し画像

授業で「振り返り」を重視するわけ

今から15年ほど前。
新規採用されて間もない時、当時の主任から言われた言葉がきっかけ。

「学力をつけようと思うのなら、振り返りをしっかり書かせなさい」

無垢な自分は言われた通り、書かせた。やらせた状態。
当時の自分はそこに価値付けることもできなければ、評価することも不十分だった。

書かせた振り返りに丸をつけて、コメントは残すが、何か冷めた内容。
それを続けた結果、子供の振り返り内容は、単に授業が「わかる・わからない」の感想を述べるだけ。
「次に何をしたいのか分からない」といったことを書くこともあった。

先生が言うから振り返りを書く。言わないと書かない。
やらせる活動に意味はないことは、担任として気付いてはいた。でも、大事と言われたから、それを信じて続けてみた。どうするべきかと悩んでいた時期を越え、いろいろな実践を追試してみた結果、今に至ります。

最近、担当した学級(学年)の記述内容はまったく違う。
「振り返り」を促した時に行うのではなく、児童が自発的に「振り返り」を行う型を身に付け、活用している。

前置きが長くなりましたが、同じように、振り返りに悩んでいた方。糸口を見付けて実践されている方。振り返りの意味・よさ・魅力を感じていない方。ニッチな内容ですが、noteに残します。興味のある方は、ご覧ください。


振り返りの型


ここ数年の振り返りの型を紹介します。
メタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールを学習の振り返りに取り入れ、図のような3ステップの振り返りをします。

振り返りの型 これを全ての教科で共通する!

「三宮真智子(2008).メタ認知 学習力を支える高次認知機能.北大路書房」を参考に振り返りの3ステップを作成しました。

また、葛原先生が提唱している「けテぶれ」の内容も参考にしています。

「けテぶれ」は単体で動くのではなく、「QNKS」、「心マトリクス」が重なることで相乗効果が生まれます。この記事では「けテぶれ」の「ぶ」(分析)の内容についてのみ、取り上げます。

①まずは自分の学習を振り返って主観的評価を行います。

「今日の算数のわり算は4点満点のうち、3点」

②次にその評価を基にその要因等を分析して言語化します。

その際に+と−の記号を用いることで誰でも分かりやすく分析できるようにします。
 「(+)わり算は九九を使って筆算すると簡単なことがわかった。(ー)でも、3にしたのは、計算は正確にできたけれど、まだ早く計算できないからです。」

③最後に次回に向けて目標を設定し、言語化します。

「→(だから)」の記号を用いて、簡単に記入できるようにします。
 「(→)10問のわり算の筆算の時間を計って、これから記録していきたいです。」

また、自分に必要な学習の仕方(→)について考察できない児童が多くいることから、次のような選択肢も提示して、必要に応じて活用できるようにしています。

次の課題を選べるように、選択肢を設けることも大切

この内容は「難波駿(2023).超具体! 自由進度学習はじめの1歩.東洋館出版社」を参考に6つの選択肢を作成しました。

このように、自分の状況をメタ的に捉え(4点〜1点)、計画を立ててコントロール(+、ー、→)していこうとする振り返りを型として児童が実施することで、児童のメタ認知を育成できると考えています。

これを、全ての教科、全ての学校行事、全ての家庭学習で行うことを繰り返します。回数を稼ぐことも有効な手段の一つです。

振り返りの型が定着するために

① 振り返りの仕方を全教科共通とする

全ての授業において共通の型とすることで、活用機会を増やすことができる。

② 授業の終末に振り返る

毎時間の終末の5分間は授業の課題や自分の姿を振り返る時間を設定する。

③ 自主学習を行う際も学習後の振り返りを行う

自主学習は毎日の家庭学習として取り扱う。その日の課題は児童が決め、学習に取り組み、振り返りを行うまでを毎日の家庭学習のサイクルとする。

④ 振り返りの内容を児童が自己評価できるようにルーブリックを提示する

教師と共通のルーブリックを用いることで、児童自ら振り返りの内容を見直すことことを可能とする。評価基準が明確になることで振り返りの質を上げようとする子供が増えた。

⑤ 振り返りの内容は毎日、フィードバックを行う

ルーブリックによって振り返りに記述した内容の評価が容易となる。
自主学習は朝の回収時にすぐ評価をする。コメントは内容に応じて書く。
授業後には回収したノートに担任が評価を記入して、なるべく当日のうちに返却する。

自主学習で漢字テストの取組み方を試した自分の姿を振り返っている

また、モデルとなる振り返りのよさを各教科の授業前に適宜、紹介する。
時間のない時は給食中に見せる。自主学習も同様に評価し、紹介する。

さらに、撮影したノートはクラウド上で相互参照・相互評価することも行う。評価されたノートを自分で撮影して、クラウド上に保存することも可能。学級の仲間を学習モデルにできる回数と場を準備することで、自分の振り返りを見直すきっかけにすると共に、質の高まりをねらう。

型を活用した結果

理解の早い児童

  • 導入初期から自分の思いや疑問等を文章で表現することができた。

  • ルーブリックや自主学習ノートの例を参考にすることで、型がすぐに定着した。

  • 1学期後半から、型を活用してオリジナルメニューを作り出した。

  •  Aの評価を目指して振り返りを行うなど、ルーブリックを活用することができた。

  • さらに学習の幅を広げ、Sを目指そうとしたり、自分に必要な学習課題を考えたりすることができるようになった。

  • 仲間の書き方や活用例を参考にして、振り返りの記述内容を次の課題とする、スパイラル型の学びを展開した。

  • 取組のよさを実感し、学校の授業の理解度に応じて、家庭で復習することが日課となった。

理解がゆっくりな児童

  • 最初は記述なしの時もあった。担任はそれを認め、友達のノートを見るだけ、振り返りの発表を聞くだけでもよしとした。

  • 1学期中頃より自分の姿を文章で記述できるようになった。

  • 友達の振り返り例を見たり、文章を真似したりすることでルーブリックの内容を少しずつ理解することができた。

  • 自分の取組にAの評価がつくことを喜んだ。

  • 振り返りの書き方がパターン化されたが、実際に課題解決に至らないことがあった。

全てがこの通りにいくことはありません。
しかし、多くの児童の記述内容が変化することは間違いありません。
そのポイントは、回数を稼ぐこと。

だれでも、型があることで安心して取組みます。
型があると、それ以上を目指したいと思う子供もいます。
予想できない記述に大人が+の反応をすることで、そこに追随しようとする子供が増えます。
その結果、自己分析を様々な活動で可能にします。

「振り返り」を促した時に行うのではなく、児童が自発的に「振り返り」を行う型を身に付け、活用している。

おわりに

今回の内容が、だれかのためになれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

コメント、質問などお待ちしています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?