雪の帰り道

近所の美容室が閉店し、新しい店を探している母・澄子84歳。
歩いて行ける範囲で、高齢者が馴染めるところ。
タブレットを渡されるような小洒落たところはダメ。
紙の女性週刊誌をたんまり読ませてくれる店でないと。
今日は初めてサファイア美容室に行く日。
もこもこと雪が降っている朝、澄子を見送ってから出勤。
仕事を終えて帰ると、父・喜朗(86)が猫と会話している。
「お母さん、遅いねぇ」
えっ。まだ帰ってないの?外は真っ暗なのに。(但し夕方5時過ぎ)
朝から帰ってないとは、しかもこの大雪…慌てて探しに出た。
すぐ見つかった。
隣家の雪をはねている澄子。
なして?
「あんたが帰ってくる時に大変だろうと思って。それにお隣さんも仕事で疲れて帰ってくるから気の毒で…」
80過ぎの老婆に自宅の雪かきをされたら、お隣さんはさぞかし不気味だろう。
それに私は50過ぎのおばちゃん。
帰り道を心配されるような8歳児ではない。
その位の孫がいてもおかしくない年齢なのだ。
まあ…澄子の愛情過多には慣れてはいる。
 

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