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  • 80代両親と暮らす アラ還女子の日記

    三十路を超えて実家に戻ったアラカン女子。北海道の田舎で、年々老いて行く両親との三人プラス猫一匹の暮らし。目下の悩みは来シーズの雪はねと、免許返納。

最近の記事

久々の回転寿司

久しぶりに両親と回転寿司に行きました 場所はショッピングモール内 澄子(85)は宇宙一の方向音痴なのでトイレまで付き添いました 戻ると喜朗(87)がプラスチックの湯飲みを持って「お茶がない」と騒いでいます 「ここをね、湯飲みでぐっと押すんだよ」 私が説明すると喜朗は実践して湯飲みを寿司レーンの下にある湯出しレバーに押し付けました 家族の分も淹れてやろうと思ったのでしょう 湯飲み三つを次々とレバーに押し付けた喜朗が気づくとテーブル一面お湯まみれになっていました 「ひっっ!父ちゃ

    • コロナ禍明け初の!

      コロナ禍が明けて初めて両親と旭川に行きました 旭川と言えば私たちにとっては都会です 以前はよくドライブがてら映画を観に行きました 今回は喜郎(87)が大きな病院に行くことになったのです 私は他の用足しのため別行動にしました 甘かった やさしいやさしい(2回言うと怪しい)兄が父に買ってくれたスマホ(1円) それを喜郎は携帯したことがありません 今回のように家族で出かける時にのみ使う、言わばトランシーバー 別行動中の私に否応なしに電話してくる母澄子(85) 「今、出られない。あと

      • 父を教育

        あなたのお父さんは率先して家事をやるタイプですか? 世代によりますよね 我が父・喜朗はほぼできません 私が体調を崩して寝ていた日のこと 正午に自室から下りて来た喜朗が言いました 「なんだ、昼飯まだできてないのか」 母・澄子は「すぐ用意できるよ」と立ち上がります (なんだそれ。自分で用意すればいいぢゃないか) いつものことながら私は苛立ち、重い体を起こしてふとんを出ました 母と二人で支度を始めても、喜朗は猫と話してるだけ 「ねぇ、何か手伝ってよ」と私 「んー?何をしたらいいんだ

        • 太陽にほえる

          子どもの頃はよく澄子に叱られた。 口癖は「いい加減にしなさいよーーー!」だった。 兄によく意地悪をされた小学生時代。 私はどうにか復讐できないものかと考えていた。 夏休み、兄は「下手くそ」と言って私の自由研究の水彩画を破った。 澄子が帰ると私は即、告げ口した。 澄子の怒りは今までみたことのないもので、鼻や耳からマグマが吹き出すかのごとくだった。 そして兄が大切にしている「太陽にほえろ」のポスターを真っ二つに破った! 顔面蒼白になったのは兄ばかりではない。 私もだ。 それは先日

        久々の回転寿司

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        • 80代両親と暮らす アラ還女子の日記
          16本

        記事

          保健師さん登場

          マチの保健師さんが我が家に来ることになった。 高齢者二人の暮らしぶりを見にきてくれるのだ。 「ありのままの姿見せるのよ」と見守る娘の私。 しかし、澄子の大掃除は始まった。 さらに、喜朗にもいつもより小洒落た服に着替えさせられている。 保健師さんがいらした。 愛猫ゴンちゃんは早くも正座している彼女の太ももにくっついて離れない。 「猫、嫌じゃないですか?」と一応聞いてみる私。 「はい」と笑顔で答える保健師さん。 そりゃそうだろう。 こんなにめんこい猫にピトッとくっつかれてイヤな気

          保健師さん登場

          ナンプレ狂い

          澄子はナンプレ(数独)大好き。 始めたのは70代半ばだったか。 相変わらずテレビは点けっ放しで月刊のナンプレ雑誌に夢中。 もちろんテレビを消そうとすると「見てる!」と言う。 サスペンスドラマとナンプレの二刀流だ。 (どうやって?) その影響か、マスを埋めることに情熱を燃やすようになってしまった。 スーパーの宅配サービスの注文書は空欄が残ることは許されない。 買う必要の物がなくても埋める。 買う。 商品が届くと大騒ぎで冷蔵庫に詰め込む。 無理だろう。 冷凍室が閉まる訳ない。 私

          ナンプレ狂い

          通りがかりの人

          澄子(84)が庭の手入れをしていると、誰かが声をかけた。 中腰で振り返る澄子。 見知らぬ女性であった。 「綺麗なお庭ですね」 「ありがとうございます」 社交辞令が終わっても、女性は立ち去ろうとしないので、澄子は立ち上がり向き直った。 女性は話し続けた。 家族で樺太に渡ったこと、戦後、北海道に移り住んだこと、結婚してこのマチに来たこと…。 澄子は相槌を打った。 ここで初めて会って、長い人生を吐露するとは、普段話を聞いてくれる相手がいないのかもしれない。 話の続きに水を向ける時、

          通りがかりの人

          物忘れ競走

          何せ澄子(84)はしっかりしている。 「しっかり」と「天然」の共存だ。 ぼんやりしてきた喜朗(87)の物忘れには手厳しく突っ込む。 残酷なほどに。 私の弁当は澄子が作る。 「やりたいの。お母さんが作りたいの」と世話を焼く。 「その代わりあんた、掃除機掛けて」 とにかく掃除機を掛けるのが嫌い。 おかずを作ってくれるので、ご飯を弁当箱によそうと 「最近いつも電気釜のフタが開きっぱなしだよ。あんた、私より物忘れが進んでいるんでないの?」 と小憎たらしい顔で言う。 「そういうパター

          物忘れ競走

          テレビ依存症

          我が家では常にテレビが点いている。 両親の耳が遠くなってからはとてもつらい。 帰宅すると玄関を開けた途端、爆音がする。 「チャンネル!チャンネルどこ!?」と叫んでボリュームを下げる私。 (チャンネルとは、リモコンのことです) 「ああ、うるさい。あんたの声の方がよっぽどうるさいよ」と澄子。 「やれやれ…」との表情を見せるが、こっちがやれやれである。 夜中もテレビは点きっぱなし。 忍び足で消しに行くと「観てるのに!」と目を開く。 テツトモのネタか…。 夜中にテレビがピカピカ光って

          テレビ依存症

          古いパソコン

          2階の自室には、喜朗の宝物たちが静かに出番を待っている。 一番場所を取っているは2000年に買ったパソコン。 なんでも買ってみたい性分である。 かつてもいろいろあった。 ベッド周りには年代ごとの電子辞書がいくつもある。 「おもしろそうだ」と通販で購入してはすぐ飽きる。 パソコンも、使い方は誰かが教えてくれると思って購入した。 年賀状の印刷などは元部下を呼び出して教えてもらった。 と言うより、やってもらった。 一人娘に聞いても教えてくれないから。 そりゃそうでしょう。 覚える気

          古いパソコン

          サファイア美容室

          帰宅して母・澄子(84)の頭を見て絶句。 先ほど、初めて行く美容室から帰ってきたのだ。 先日まで担当してくれていた若い美容師さんとは打って変わって、サファイア美容室の先生のお手入れは、澄子を5歳老けて見せている。 そして顔の丸さと大きさが引き立つスタイルだ。 「で、どうだったの?お店の雰囲気とか」 澄子「それがねぇ、予約の時間に行ったら先生が『今から朝ごはんですので』っておにぎりを食べ始めて30分待たされたんだわー」 しかし、お目当ての女性週刊誌は読み放題で、同世代のお客様た

          サファイア美容室

          喜朗のモノマネに…

          澄子と喜朗は職場恋愛で結婚したらしい。 出戻ってつくづく思ったが、喜朗のどこが良かったのか。 澄子によれば、『気楽な人』だったそうだ。 友人に話すと、割とどこの家庭の父親もこの世代は似たり寄ったりの様子。 家事は一切しない。 洗濯機の使い方など全くわからないだろう。 ご飯の支度が出来るまで、ただ待っている。 イライラする。 澄子もイライラしているようだ。 喜朗が趣味の碁会所に出かけると澄子は晴れ晴れとした表情を見せる。 ある時、喜朗が出かけたあとに私が、玄関から「澄子!澄子ー

          喜朗のモノマネに…

          雪の帰り道

          近所の美容室が閉店し、新しい店を探している母・澄子84歳。 歩いて行ける範囲で、高齢者が馴染めるところ。 タブレットを渡されるような小洒落たところはダメ。 紙の女性週刊誌をたんまり読ませてくれる店でないと。 今日は初めてサファイア美容室に行く日。 もこもこと雪が降っている朝、澄子を見送ってから出勤。 仕事を終えて帰ると、父・喜朗(86)が猫と会話している。 「お母さん、遅いねぇ」 えっ。まだ帰ってないの?外は真っ暗なのに。(但し夕方5時過ぎ) 朝から帰ってないとは、しかもこの

          雪の帰り道

          大谷に、任せろ!

          2023年、大谷君がエンジェルスで投打の大活躍をした夏のことです。 終戦記念日が近づき、戦争についての報道が増えていました。 父から戦時中の話を聞かされた記憶がないので尋ねてみました。 テレビで大谷君がピッチングしているエンジェルス戦を観ている時でした。 ゆにこ「お父さん、空襲に遭った時はどうしてたの?」 喜朗「母さんと防空壕に入った」 ゆにこ「どんな気持ちだった?」 喜朗「こりゃあ、もうどうしようもないから、大谷が自分でホームラン打つしかない」 話、変わっとる。 「こり

          大谷に、任せろ!

          ホタテ

          実家に戻って四半世紀を過ぎた。 父・喜朗とは当初から衝突が多く、何度家を出ようと思ったか知れない。 悲しいかな自活する生活費を捻出できない身ゆえ、ここまで来た。 喜朗の角はどんどん落ちてきてしょんぼりしているようにさえ見える。 依然の様にぶつかっていては高齢者虐待になりかねない。 夕食時、喜朗と私は発泡酒を一缶分け合って飲む。 母・澄子はウイスキーのロックを小さなグラスに一杯。 澄子「やっぱりお酒は疲れが取れるねえ」 喜朗「…ホタテ?」 澄子「うん。お酒」 喜朗「今日、ホ

          歌好き家族

          両親は昔から歌が好き。 しかし、二人ともカラオケは苦手で、付き合いで仕方なく行った後には「三番まで歌う必要があるのか」との認識は共通している。 喜朗は自宅で鼻歌を歌うのは好き。 お気に入りは三橋美智也。 食事のあとはかなりのボリュームでのびのびと披露しながら、二階の自室へ消えて行く。 私が出戻った頃、食事の後片付けなどの際、気持ちよくドリカムなどを披露したところ、 「うるさい。お前は歌、禁止だ」と言われました。 (近年はパートナーから同じことを言われている。そんなにうるさいの

          歌好き家族