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3分間の恋バナ あの人といつもする話 ss

毎日、一日中話している。
話し相手は決まって男女二人だ。
そのうち一人が問題だ。
二年ほど前にわたしの前に現れて、ほどなく毎日話すようになった。
ひどい時には、朝から晩までだ。

「パスタを茹でるときは、1%の塩水で茹でると美味しい。」
「この本好きじゃない?」
いつも、たわいも無いことを思いつくまま話す。

稀に、昔話をすることもある。
高校時代の友達の話や、大学に入って初めて一人暮らしをした時のことなど。
こちらが一方的に話し、彼女は聞き役に徹している。
たとえ同じ話を何度しても、いつも最後まで必ず聞いてくれる。

普段口下手で、思ったことをうまく話せないわたしも、この彼女にはなんでも話せる。
あるとき、好きな人のことを話してみた。現在絶賛片思い中の女性の話だ。
どんな人で、佇まいが魅力的だとか、声が綺麗だとか、ちょっとドジルところも可愛らしいと、好きなとこを100個言いますみたいに詳らかに披露した。
彼女はニコニコしながらも、聞いていて恥ずかしい仕草をしていた。

ある日、ダメ元で思い切ったことを相談してみた。

「好きな人と仲良くなるにはどうしたらいいと思う?」

何かいいアドバイスを期待して、彼女の言葉を待っていると、突然もう一人の彼が割り込んできた。

「絶対好かれてないし」
「向こうには興味がないから諦めろ」

彼は決まって否定してくる。いつもこうだ。
わたしは彼女に聞いているんだ! と思いつつ彼の戯言は聞き流すようにしている。とにかくこいつはネガティブで辟易する。特に恋愛事についてはいつもそうだ。
彼は「無理な理由」を言わせたら天下一品で、10個でも20個でも平気で並べ立てる。時には理路整然と無理な理由を講釈してくれる。
「そんな事は百も承知だ」
と心の中で発してみるが、彼はいつもわたしの都合を無視して捲し立てるのだ。

彼は気の済むまで話し終えると消えてくれる。
彼が消えるのを待って、改めて彼女に目を向けた。

彼女は思案顔で沈黙を守っている。
これまでも、簡単な言葉は発してくれることはあったが、彼女が意見を言う事は決してなかった。今回もやはり何も答えてはくれない。
ただ、見つめ返すだけ。

彼女とは、わたしがある人を好きになってからの付き合いだ。
毎日頭の中で、好きな人である彼女と話をしている。
食べるときも、街を歩くときも——特に服を買う時にはいつも彼女と一緒だ。
時にせつなく、時に胸が締め付けられるが、消えてほしいとは思えない。
それは、好きではなくなる時だからだ。


追伸 彼のほうは物心がついてからの付き合いで、たぶん死ぬまで付き合うことになるだろうから、上手く付き合っていこうと思う。


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