緋龍

ランダムなテーマでショートストーリーや詩などを書いています。少しずつ増やしていきたいと…

緋龍

ランダムなテーマでショートストーリーや詩などを書いています。少しずつ増やしていきたいと思います。 コメント・無言フォロー歓迎/添削・ご指導歓迎

マガジン

  • 歌詞

  • 3分間の物語

    ショートショート、掌編小説です。主に男性目線(たまに女性目線)で恋バナを書いています。3分程度で読めるので、ちょっとしたスキマ時間にお楽しみ下さい。アドバイス、批評を頂けると喜びます。ホメられると書くペースがあがります。書き方も色々試しているので、続けて読むと読みにくいかも知れません。単品としてお楽しみ下さいm(_ _)m

  • 散文・掌編・エッセイ

    分類不能な文章たち

最近の記事

純喫茶

雑居ビルかオヒィスビルか分からない建物の四階という珍しい立地にも関わらず、席が半分以上埋まっていた。 ビルの入り口にある喫茶店の看板は、数年前から目に付いていたが今日まで入る勇気がなかった。今日はどうして足が向いたのだろう。自分でも不思議なくらい、吸い込まれるようにエントランスをくぐりエレベーターで四階に立った。  正面には藤崎法律事務所という案内板のしたに、左向きの赤い矢印のあとに紫陽花喫茶という看板があった。パネルで区画された通路の先に、小さな置き看板でかろうじて喫

    • 徹子の部屋を見て気づいたこと

      徹子の部屋を見て気づいたことがある。 あれは無意識下の自分が自分を守るために起こしたんだと。 自分を偽ったり、間違ったことを見ぬふりができない自分に蓋をして、それが幾つも積み重なる環境に何年もいると、ガスが溜まり、精神が疲弊し、あるとき限界がきて、意図せず無意識下の自分が全部ぶちまけてしまった。 一つ一つを飲み込む度に、ペットボトルの炭酸水を降っていたのだ。 あるとき、チョットだけ(本当に一つだけ口に出すために)キャップを開こうとしたら、意図しないものまでまとめて溢れ

      • 昔自転車に乗っていたオヤジがツール・ド・フランスを見るとこうなる

         毎年恒例のグランツールの季節がやってきた。  サイクルロードレースを見ると、無性に漕ぎたくなる。チャンバラを見たあとに刀を振り回したくなるのと同じだ。  十五時少し前、昼過ぎから降っていた雨が上がり、太陽がまだ隠れている今、この季節には少ないチャリンコ模様だ。  ロードレース用の正装ではなく、メッシュのTシャツとチャンピオンのハーフパンツで普段使いのクロスバイクに飛び乗った。  雨は完全にあがってはいなかった。時折顔と腕に小さな雨粒を感じる。住宅街を抜け、商業高校の裏に回

        • アクセサリーケースの中の第二ボタン ss

           高校生の時から使っているお気に入りの四角いアクセサリーケースを開くと、今日買ってきた小さなイヤーカフを真ん中に置いた。二十一歳の誕生日に自分で買った誕生日プレゼントだ。大小二つで一組のそれは、大きな方がゴールド、小さい方がシルバーで、まるで太陽と月のように思えた。  ケースの中には、ネックレスが一本、誕生石の小さいルビーがついた指輪が一つあるだけだった。  大学生になると、誕生日のプレゼントは彼氏なるものが買ってくれるようになるが、今のところそういう人はいない。付け加える

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        • 歌詞
          0本
        • 3分間の物語
          5本
        • 散文・掌編・エッセイ
          3本

        記事

          高3男子 夏の憂鬱 ss

          ——7月最初の日曜日  もう一時間も机に向かっている。進路希望の用紙は白紙のままだ。  2階の部屋の窓の外には、緑地公園の木々が青々と茂り、紛れもない夏を感じさせていた  6月のインターハイ予選で早々に敗退し、バレーボール部を引退した熱血部員達は、コントの早着替えのように受験生になってしまった。いや、ならざるを得なかった。それが進学校であるうちの高校の習わしだからだ。  毎年この時期には高校の授業範囲は終えていて、夏休み前にも関わらず、一気に受験対策モードとなる。  その切

          高3男子 夏の憂鬱 ss

          3分間の恋バナ あの人といつもする話 ss

          毎日、一日中話している。 話し相手は決まって男女二人だ。 そのうち一人が問題だ。 二年ほど前にわたしの前に現れて、ほどなく毎日話すようになった。 ひどい時には、朝から晩までだ。 「パスタを茹でるときは、1%の塩水で茹でると美味しい。」 「この本好きじゃない?」 いつも、たわいも無いことを思いつくまま話す。 稀に、昔話をすることもある。 高校時代の友達の話や、大学に入って初めて一人暮らしをした時のことなど。 こちらが一方的に話し、彼女は聞き役に徹している。 たとえ同じ話を何

          3分間の恋バナ あの人といつもする話 ss

          3分間の男女(2)ss

          鷹見健人は今週で5人目の採用面接を行っている。 人手不足で猫の手も借りたいくらいだが、本当に猫だと困るので、できればいい人材を採用したい。 面接官側である自分は、パターン化してくるやりとりで気怠くなりつつも、相手には悟られないよう演じた。 黒のビジネススーツを纏い向かいに座っているのは塚本遥(29歳)。 緊急事態宣言が初めて発動された直後でお互いマスク姿だった。 この時点では、こういう時にマスクを外すべきかどうかが社会的に定まっていなかったので、彼女はマスクを外してお辞儀を

          3分間の男女(2)ss

          3分間の男女(1)ss

          ■健人視点ーーーーーーーーーー 「ちょっとお時間いいですか?」 不意に声をかけられて、作業中の画面から顔を上げ声の主に目を向けた。 塚本遥が自分のノートPCとマウスを持って寄ってきていた。 「いいよ」 わたしの意識は既にそっちに向いていたが、いかにも仕事に集中していた風を装って軽く答えた。 「明日の資料で相談したいことがあるんで見てもらっていいですか。」 彼女は目を合わせてそう言うと、おもむろに私のデスクにPCを置いた。 PCを運んでくる間に、見せたい箇所がズレた

          3分間の男女(1)ss