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最近見た映画とドラマの感想がTHE40代な件

花束みたいな恋をした


正月明けのある日、たまたま夜に「花束みたいな恋をした」が放送されることを知って急いで録画予約のボタンを押した。
有村架純が最も好きな女優だからである。ただ「好き」と言っても彼女が出る作品を全て見るようなファンではない。あくまでも見たい作品が先で演者は後なのが私の感覚である。
中居正広の番組の代わりに放送されたことは数日後に知った。

主役の二人が菅田将暉と有村架純であるという予備知識だけで見た。恋愛がテーマの映画でどちらかが重い病気を抱えているとか障害があるとか、亡くなってしまうとかではない作品を初めてみた気がする。20代前半から中盤の恋愛模様がリアルに描かれていた佳作だった。

サブカル好きで趣味趣向に共通点の多い大学生の山音麦と八谷絹が出会い恋に落ちていく。付き合うまでの春、同棲を始めてラブラブ状態の夏、二人が就職してすれ違い始める秋、もう決して以前のようには戻れない冬。
特異なイベントや事件が起こるわけではなく、多くの若者が直面するような日常の中での男女の恋愛の春夏秋冬が見事に描かれていた。
「花束」は美しい時間が少ない、だから季節が一巡りで終わってしまったのだろうか。

二人の関係がぎくしゃくし始めたのは麦がブラック企業に就職し、交際のきっかけとなったマンガや絵画などの趣味から心が離れていき、ただ寝るために家に帰りいつもイライラし始めたからだ。もしこの映画を主人公の二人の年齢である20代前半~中盤で見たら絹に感情移入し麦に腹を立てていただろう。「自分らしさを失ってまで生きたいのか!」とか「それでもプライベートは大切な人を喜ばせる存在であれよ!」とか。。しかしアラフォーすら終わろうとしている私は「絹ちゃん。ちょっと長い目で待ってあげて!」と心の声を発してしまった。サブカルが大好きで感受性が強い男性が、社会の荒波で揉まれ企業人として金も稼げるようになるのは素晴らしいではないか。「仕事に慣れちょっと余裕ができたら麦くんは文化的素養の高い大黒柱になってくれるよ」そう言いたくなったのだ。

人生を中期的なスパンで見れば螺旋のように成長しながらもまた同じ角度に戻ってくる。40代になるとそんな人生のあるあるが分かる。しかし同時に思うのは私たちが感じる1年と二人が感じる1年の違いだ。今だったら3,4年待つことは平気であるが20代のソレは長すぎる。強烈な恋敵が二人を引き裂いたのではなくて時間が彼らを別れさせた所にこの作品の面白さがあると言えよう。
螺旋が思い浮かんだ時にクルクルと巻いて成長するつる性の植物を思い浮かべた。しかしそれは「花束」にはならない。題名の意味は最後まで明かされないが、上述含めて二つの事実から「花束みたいな」に深く納得した。

坂の上の雲

1回45分に分割された再放送を昨年の秋から見ている。昨夜で旅順総攻撃(下)の第20話が終わった。
こちらのドラマは秋山真之、好古、正岡子規が一応の主役であるが、伊藤博文や児玉源太郎、小村寿太郎や明石元二郎などの脇役が主役級の活躍を見せる分厚さを併せ持つ。
2009~11年の本放送時に見ていたときは広瀬武夫とアリアズナの関係に心を打たれた。互いに深く思い合いながらもそれぞれの母国が敵国になってしまう。愛する人の国との戦争で最前線に立って戦う広瀬武夫は海上で非業の死を遂げる。今回14年ぶりの広瀬が死ぬシーンは数日前から気持ちが重かった。しかし実際に視聴すると悲しくはあるが少し俯瞰して見られたように思う。その反面旅順を巡る戦いの中で乃木希典に移入する気持ちが強くなった。

日露戦争の旅順の攻防戦で乃木は第三軍を率いて旅順要塞の攻略を担当する。3回の総攻撃で将兵に多大な被害を出してしまう。勝ち目のない戦いを3回繰り返した無能の指揮官という印象が拭えなかった。
しかし同じドラマを見たのに、乃木が無能に見えなかった。最も皆が嫌がる所から逃げずに仲間と戦う指揮官に映った。
これは社会のこういう場所を担うことがどれだけ辛苦の毎日なのかを理解できる中年だからこそ分かる悲哀に感じた。彼は戦後も多くの死んだ仲間に対してずっと悔恨の情があったと聞く。そして明治天皇の崩御後に後を追って自刃する。彼の名は坂に残り、今は日本でももっとも有名な乃木坂となった。アイドルグループが生まれる前に放送されていた乃木希典の生き様。その見え方が13年経って変わっていたことは面白かった。

坂の上の雲は本来であれば2006年に放送されるはずであった。初放送まで3年も遅れた理由は脚本を担当していた野沢尚が2004年の夏に自殺したからである。この名古屋が生んだ天才の人生は44年と1月と21日であった。私の人生の時計は明日で全く野沢と同じになる。こんなまだ若い人間がこれほどの大作を執筆していたのかと圧倒される。そんな思いも重ねて203高地の激戦やバルチック艦隊の決戦を見るのであろう。

乃木希典(演:柄本明)

40代になって映画やドラマが面白く感じるようになっている。


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