見出し画像

【詩】肌の記憶

肌は長い眠りの中にいた

眠りの中で
肌は否応なく侵食され
境界を曖昧にする

もちろん、肌は、わたしと外界を隔てるものなのだ
だが、それはわたしと外界を密やかにつなぐものでもあったのだ

生きるための、内と外の世界の切実な交換

脳が命じるままに、身体は
わたしの世界にあるものを
すり減らした心でさえ惜しげもなく差し出し、
外の世界にあるものを
貪欲に無防備に受け入れる

そうして繰り返す 遠い時間
生まれ変わっては
受け継がれ
降り積もり
刻み込まれる記憶

目覚めのとき、肌よ
大いに怒れ

わたしの声を聴け、と

わたしにまだ
感受性と呼べるものが残っているのなら
あなたの声が聴こえるかもしれない

無謀な脳を押し込め
あなたを労りもしなかった身体と
しわくちゃな心をつなぎ合わせ

わたしを揺るがせるのだ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?