データ分析会社から事業会社へ転職します

2020年6月で新卒入社したデータ分析会社を退職し、事業会社に転職する運びとなった。

今の企業には、新卒入社してから4年経ち、今年で5年目になる。新卒入社後はおよそ3ヶ月の研修を受け、その直後から現場で働いていたので、実務は4年間やっていたことになる。どうでもいい話だが、3年経ったくらいから咄嗟に勤続年数が出てこないことが多かった。4年と聞くとそこまで長くない気がするが、これは濃い経験を出来ていたと解釈して良いのだろうか?

この決断を振り返るために、退職エントリという形で、転職という決断に至った経緯やそれに関連して考えたことを書き出す。

(退職する)現職について

現職の会社は、データ分析に関するクライアントワークを行うデータ分析を行っている。受託開発も行っていたが、メインは準委任契約などを結んでの常駐業務だ。クライアントの企業に赴いて、そこに蓄積されたデータに関連する要望に応える。

自分の肩書として分析コンサルタントと名乗っているが、プロジェクトの性質に合わせて異なるロールとして広く業務を行った。一般の職務でいうところのアナリストやMLエンジニア、マネージャー、コンサルタントなどといったところだ。
もう少しやってきたことを具体的に書くと以下のような業務だ。

(アナリスト) 分析による施策提案やその効果検証
(アナリスト) KPI設計
(MLエンジニア) モデルの構築やMLシステムの開発
(マネージャー) 分析や開発チームのマネジメント
(コンサルタント) データ利活用のコンサルティング
(コンサルタント) 分析業務の改善
(コンサルタント) データリテラシーの教育

現職の良かった点

退職に至った経緯の前に、現職で良かった点をまとめた。良かった点としては、以下のようなものが挙げられる。

・年功序列ではなく成果主義で、データ分析市場の水準からみてもそこそこ高待遇であった
・実質的に裁量労働制でかつ現場で一緒に働く人の理解があり、ワークライフバランスが良好だった
・スキルアップに理解があり、書籍や資格取得、カンファレンスや外部セミナーなどの費用をほとんど経費で申請できた

後は、別に「この会社だから」ではないが、プロジェクトを通じて色々な経験を積むことはできた。そのおかげで次のキャリアに繋がっている。

これらを見ると一見問題なさそうに思えるが、それでも退職したいと強い理由があるということを踏まえて次に進んでほしい。(転職理由の他に細かい不満点もいくつか存在するが、それらは許容範囲であり、退職することにはなったが現職の会社には感謝しているので、ここでは触れないでおく。)

転職に至った経緯

さて、転職を意識した理由である。

自分は、データ分析に関するスペシャリストとして仕事を行っている以上、当たり前であるがデータを活用する必要があると思っている。
活用という字の通り、データを使って分析するだけではなく、それを成果につなげるよう活かすということだ。分析で得られた示唆をがあれば施策化、構築したモデルがあればデプロイするなどして、実ビジネスに反映し、その結果を受けて更に次のアクションに繋げるべきである。
基本的なことであると同時に、このフィードバックサイクルは、データ分析を生業とする人間にとっての成長機会の源泉だ。ビッグデータやらAIやらでデータ分析の実用が進んできてはいるが、まだまだ発展途上の部分も多い。データを使ってより多くの試行錯誤をすることが重要だろう。

しかし、自分の業務では、その性質上フィードバックサイクルを上手く回すことが難しいと感じていた。この原因について色々と考えたが、その性質上ほぼ解決困難であると判断し、転職するに至った。その要因を整理すると大まかに以下のような形になる。

1. データ分析案件のメインクライアント(大手企業)の共通的な性質
     縦割り組織による重いフットワーク
     トップダウン指示によって生じる分析の歪み
2. 業務請負の性質
     クライアント意向に従うインセンティブ

(あくまで私見なので、分母が大きい表現となっている可能性があることはご留意頂きたい。しかし、社内の他案件や同業他社で勤めている人から聞いた話を含めている。)

1. データ分析案件のメインクライアント(大手企業)の共通的な性質

まず(1)だが、データ分析を外注するクライアント企業の性質である。

基本的にデータ分析企業のメインクライアントは大手企業だ。現在国内企業のデータ利活用に対する関心が高く、需要が高い状況であるため、(健全な営業活動をしている企業であれば)データ分析企業の提示する単価は一般的なシステム開発に比べ高額である。そのため、クライアントの多くは資金力のある大企業の話となる。内製できるIT系企業も一部外部委託することもあるが、割合としては少なくなる。

ここで企業内のデータ利活用についてべき論を語るが、プロダクトに関連した職能を持つ人材を集めたクロスファンクショナルチームを編成し、チーム内の裁量で手早くPDCAを実施するのがベストだと思う。
しかし、大手企業の組織構造の特徴では難しい。縦割り組織やトップダウン指示が特に影響を与えている。

縦割り組織はフットワークの重さに繋がる。詳細に書くことは控えるが、自分が担当したあるサービスでは、業務を部署間にまたいで行っており、また一部の業務は社外に委託していた。そのために、全体的な連携が取れておらず円滑な運営ができているとは言えなかった。そこに、外部から入ってきた分析者が出した示唆を元に施策をするも、サービスの関係者との調整に時間がかかる。フットワークの軽い企業であれば1週間程度で済むようなことでも、ここでは1ヶ月や酷いと半年以上かかったりする。

トップダウンの指示は、現場で行われるデータ分析がないがしろになりやすい。現場レイヤーで分析に取り組む中、急に方針転換することは残念ながらよくある。また、これもよくある話だと思うのだが、データ分析という手段と目的を履き違えられる。というより、自分たちの正当性を主張するために、データ分析でファクトを提示せざるを得ない状況になる。トップダウンな決定を支えるために、実施が決まっている施策の裏付けに分析を求めたり、上手くいかなかった施策の言い訳に分析を用いるようなケースが起きてしまう。

2. 業務請負の性質

次に、業務請負特有の話だ。業務請負形式である以上、クライアントの意向に沿う方向にインセンティブが働く。

まずは、業務請負についてだが、企業の業務として行っているので、当然だが案件の継続・拡大していくことが重要になる。これには、発注者からの信頼を得る必要がある。
そのために必要なことで分かりやすいのは案件で成果を上げることである。ただ、それを達成するには、前述の組織構造の問題が大きな課題となる。勿論、これらの課題は難しいものではあるが変えていける部分もあると思う。しかし、それは組織内で大きな動きが必要となる。我々の仕事のように社外から支援する立場で、クライアントの広範囲に影響を与える問題に踏み入るのはリスキーだ。
一方で、発注者からの信頼を得る他の手段がある。それは、誠意をもって業務に行うことだ。悪く言うと媚び諂う。発注者の指示を聞いたり上手くサポートをすることで、信頼が積み重なっていく。業務を進めていっても最終的に得られる成果は、期待されていたものよりも素晴らしくはないのだが、基本的に大手企業に勤める人は優秀なこと多いので、その辺りの理解は得られやすい。だから、意向に沿って穏便に業務を進めることが安定的なのだ。

長くなったが、データ分析人材として重要な成長機会であるフィードバックサイクルに上手く実施することが重要だと思いつつも、上記の理由でそれが困難かつ改善も難しいことに危機感を感じたというわけだ。

転職先選びに考えたこと

転職するにあたって色々考えたのだが、企業選びの軸として「風通しの良さ」と「UX設計に携われる」を満たすことを重視した。その他にも細かく満たしていると嬉しい条件等はあったたが、ここでは割愛する。

風通しのよさ

風通しの良さについては、前述の転職理由からほぼ自明だとは思う。付け加えると、この不満は、入社1年目から感じてはいたが、仕事上のフィードバックがなかなか得られないなりに、自分なりにスキルアップを意識していた。しかし、そうやって自己研鑽するのにも限界があり、やはりデータ分析のフィードバックサイクルに身を置くことが自分のスペシャリティを高めるのに必要だと感じた。

そのため、それが可能なデータドリブンの意思決定の文化のある風通しの良い環境であることがマストだと考えた。具体的には、以下のようなところを意識していた。

・重要な意思決定に携われる
・意思決定後の事業の動きが早い
・新たなアプローチに取り組めるイノベーション志向がある
・サービスに携わる人(企画、エンジニア、デザイナーなど)との距離感が近い
・上長や同僚となる人との相性(フィーリング)が合う

UX設計に携われる

UX設計の話については、将来的に歩んでいきたいキャリアについて考えていく中で、自分が今最も興味がある分野であるためだ。これまでの業務で、クライアント企業はユーザ志向を謳いつつも、現実的な案をアクション化すると事業者視点になる経験が多く、歯痒い思いをしていたからかもしれない。

また、将来的には単なるデータ分析人材は淘汰されるだろう。 自分の経験にUX設計を加えることで、独自のポジショニングになると考えたというのも理由だ。自分のこれまでの業務経験は、メインは分析であったが、それを支えるエンジニアリングやプロジェクト全体のコントロールするマネジメントにも携わってきた。幸い、これらは自分に向いていると感じており、これらの経験を今度も活かしていくのが望ましい。そこに現在自分が興味のあるUX設計を加えると、プロダクトマネジメントに重要な必要なスキルが包括的に満たされ、プロダクトマネージャー的な立ち回りができるのではないかと思う。将来的にプロダクトマネージャーになりたいかと言われるとそれは悩ましいが、データに強いプロダクトマネージャーorプロダクトマネジメントに強いアナリストというポジションは今後重宝されるはずだ。

そういう訳で、UX設計に携われるような環境を考えた訳だが、次のような観点で判断していた。

・ユーザ志向の風土があり、ユーザの声を聞いて事業に反映できる
・UXデザインやUXリサーチに理解がある
・ビジネス・エンジニアリングの力関係のバランスが良く、恒常的に良成長サイクルを回せる

転職活動の進め方

某転職系サイトに登録して、そこでアプローチしてきたエージェントをいくつか利用した。様々なエージェントからメッセージが送られてきたが、その中から的を射ているような内容のエージェントと面談し、良さそうな複数名のお世話になった。
そこまでして転職エージェントを利用した理由だが、特にお見送り時のフィードバックが得られるためだ。自分は面接があまり得意ではないので、これは結構重要だった。自分が知らない求人を提案してくれる点でもメリットは感じたが、転職サイトで求人が載っているので手間をかければ探せることが多い。アドバイスしてくれたり企業とのやりとりを代行してくれるが、複数エージェントの調整も結構手間なので、好みが分かれそうだ。

本題の転職活動についてだが、「ちょっと興味があるから面談行ってみよう」企業にとりあえず応募していたが、ありがたいことにほとんどの企業で書類選考は通過した。自分のこれまでの経歴やスキルについての自己評価は、よく言えば幅広いが、悪くいうと器用貧乏である。それでも応募した企業から評価されたのは、まだ20代でポテンシャルを買われたというとことが大きいと思う。

書類選考に通過した企業の選考を受けてみて、お見送りされたり辞退した。面接のフィードバックでは、大まかに「スキル・経歴」についてや「コミュニケーションの良好さ」や「プロダクトへの想い」で評価されることが多かった。一方、お見送り事由でもこれらの項目が挙がってきたので、企業や担当者との相性による部分が大きいと感じた。勿論自省すべき点もあるだろうが、そこを捻じ曲げて入社しても長続きしないと考えたので、一期一会を大事にするというよりも、数をこなすようにした。

こうして書くとなかなか尊大な振る舞いだが、大体20社前後に応募して、ありがたいことに最終的に数社からの内定が残った。

次職を選んだ理由

いくつかの企業からの最終的な意思決定には、非常に頭を悩ませた。
仕事に追われながらもじっくり考え、企業規模が一番大きい俗に言うメガベンチャー的なところにすることとした。この結論に至った理由は2つある。意思決定をしたのがコロナ禍が大きくなっていた頃でもあるので、端から見ると安定を取ったと思われそうだが、あまり企業の安定性は見ていなかった。

大きな企業規模のデータ分析部門の立ち上げ

1つは、大きな企業規模のデータ分析部門の立ち上げに携われるという点だ。他の内定企業でもほぼ立ち上げ期に合流するような感じだったので、ここでは大きな企業という点が重要になる。
ビッグデータやAIといったブームによって、データ関連の職業が一般的になってきた中、大きい組織の中でのデータ分析部門の立ち上げは今後機会は少なくなるだろう。その経験ができることは、データ分析に携わる人間として糧になると考えた。

キャリア形成に集中できそう

2つ目は、ある程度分業が進んでおり、自分のキャリア形成に集中できることを期待できたためである。
元々、自分自身は何もかも一人でやり遂げるというよりも、チームでうまく分担して得意なことで貢献したいタイプである。しかし、小規模な企業である現職の業務では、常駐先ではなく本社の業務でも雑務に追われることが往々にしてあった。ベンチャーやスタートアップでも同様に雑務に追われる懸念があると感じた。 雑務でも必要ならば自分がやるべきだという信念はあるが、それが常態化した環境なのは問題だ。メガベンチャーはメガベンチャーで今想定しない面倒ごともあるとは思うが、それも経験かなと前向きに思っている。

余談であるが、1mmくらい考慮した打算的な理由として、ネームバリューがある企業の経歴が得られることがある。自分としては、あまりあてにならないしとは思っているし実際そうなんだろうが、世間からの評価としてはプラスになる、はずだ。

最後に

長くなってしまったが、自分の想いを表現しようとした結果、関係にはまとまらずこうなった。これでも色々書きたかったことを結構削っている。

先日の最終出社時にSlackに最後の挨拶を投げたのだが、正直予想以上にリアクションがあり驚いた。思ったより多くの人に別れを惜しんでもらってるんだなぁと少し嬉しかった。
若干後ろ髪を引かれる思いではあるが、自分が転職を決意した理由は記事に書いた通りだ。転職しないことが自分にとってマイナスであると感じていたし、熟考した結果プラスになる環境を選んだので努めたい。

ただ、転職活動も転職の手続きも手間なので、しばらくは転職したくないなぁ。

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