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気まぐれ自転車旅行 その3

気まぐれ自転車旅行 2日目

岡山県の日生で小豆島行きフェリーの乗船チケットを買った。
すべては一日走った汗を温泉で気持ちよく流すためである。

16時20分の出港まで1時間半近くあったので、待合所のベンチに腰掛けて持参した文庫本を開いていた時だった。

都会的なオーラを放つ真っ赤な口紅に、緑色のショートヘアを後ろへかきあげた若い女性が入ってきた。

顔立ちでいうと、若手女優の永野芽郁さんに似ている。
長身でスタイルがいいというわけではないが、けっこうな美人である。

もうこの時点でドギマギするではないか。
しかも16時過ぎのフェリーの乗船案内に従って搭乗口に行くと、その都会風美人は一人で車に乗っているではないか。

それに、なんだかカクカクしたデザインのレトロなステーションワゴンに乗っているではないか。
車体側面には木目調パネルがあしらわれているではないか。

なぜそのような、ただ者ではない雰囲気の都会風美人が岡山の片田舎にいるのだ。
そして若干、都会の怖さというのか、少し病み成分のようなものも感じる。

自転車を船員の方に預けて甲板に出ると、どうやら乗客は都会風美人と私の他には、外人カップルしかいない。

都会風美人は白Tシャツにライトブルーのジーンズにサンダルというシンプルな服装に、犬を抱いている。
犬との二人旅なのだろうか。

一時間の乗船中、私は彼女をビンビンに意識していた。

外の風を肌寒く感じて、甲板の外が見えるガラス張りの部屋に入っていた時などは、ガラス越しに彼女が現れて海を眺めていた。

これは自分の存在を私にアピールしているという事なのではないか。

しかし、というかやはり、いつも通り話しかけるにはいたらず下船となった。
暮れなずむ島の海岸線のアップダウンに息を切らせて温泉へと急ぐのであった。

みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。