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田辺聖子の解説に唸る 〜 有夫恋



時実新子さんについては ↑  この記事でも書いた事がある


今回、再読したのは こちら



新子の言葉には 嘘がない


有夫恋は 新子の川柳を集めた 一冊である


幾つかのウタを紹介しよう


○ 嫁ぎ来て十年 恋はまだ知らず


○困らせて 泣かせてみたい それも愛


○あの人を思い この人を見ています


○美しい眼だよ 悪事を知りつくし

○こちら あなたの夫と死ねる女です


○みんな 善人で 銃殺刑である

○心 奪われ阿呆のような日が流れ

○永遠の愛 誓わせて 何になる


○心欲しがる女は海に捨つるべし

○妻をころして ゆらりゆらりと訪ね来よ

○入ってます 入ってます この世です

○誰も知らぬ こんな私がここに居る


** *


どうだろう?

天衣無縫と言われた 武田百合子とは また違う、正直で
剥き出しの裸の心


悪女なのか、もはや 純粋な女なのか
新子の放つ 言葉を超越した何かに戦慄さえ感じてしまう


ヒリヒリと 鋭い短剣を翳されたような
真っ白な  水仙の花が咲き乱れる
気高いオベリスクの元に立たされたような


その印象は おそらく 読み手によって
多分に異なるだろう


解説の 田辺聖子の言葉にも
また 唸らされる



『 人生を生きることは 人を傷つけること、といってもいい
私たちは 有形無形に人を泣かせているかもしれない  』



好き嫌いがわかれる 句集かも知れない


だが、わたしは 新子の言葉を 追いかけてしまう


他にも読んだので
順次 紹介していきたい


***

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