見出し画像

#168 夏の終わりの3人旅 / 瀬戸内海に浮かぶ豊島で感動体験 香川の旅1

夏、旅をした。
誰かと旅をするのは何年ぶりだろう。

一人旅が好きで、赴くままに行きたいところへ行き、
そこで好きなだけ時間を過ごす。
いろんなことに想いを馳せたり、
静かに自分のことを考えたりする。

気ままな一人旅の魅力も捨てがたいが、
今回の3人旅は誰かと旅をする楽しさと
それを共有することによって楽しさが何倍にもなったり、
みんなの行きたい所を取り入れ、
自分では選択しない場所に行くことで世界が広がった。
これは一人旅では得られないものだ。


趣味や興味があるもの、ペースが同じ人と行くことも
楽しむ秘訣。

趣味が一緒の友人とよく話すのは、
旦那さんと遊びに行くと見たいところややりたいことが違うので
「まだ?」「もう行こうよ」など急かされたり
どちらかが待っていたりで時間ロスもあり、十分楽しめない。
「ここ行こう♪」「これしよう♪」と言っても
相手は気が乗らないので逆に両者のテンションが下がってしまうという。(笑


今回は好きなものや考え方が似ている3人で
ワクワクの二泊三日の旅へ。

1日目、最初に目指すのは瀬戸内海に浮かぶ豊島。
”てしま”と読む。


スコーンと青く広がった空。
天気予報では雨と曇り模様だったのにスッキリ晴れて旅行日和。
旅の始まりはいつも高揚感がある。

フェリーに乗って豊島に向かった。
波がしぶきを上げ、勢いよく走る船に揺られながら進む。
船の窓から見える海も空も青い。


豊島の家浦港


豊島の家浦港に着き、
予約していたレンタカーを借りに5分ほど歩く。
なつかしさを感じるノスタルジックな島の町並みを抜けていく。


『あきレンタカー』が見えてきた。
ENEOSのスタンドを兼ねていた。

事務所に入ると、おじさんが島内のイラストの地図を見せてくれて
ペンで書き込みながら見所を丁寧に説明してくれた。

「これを右に行くとな、、」
おじさんの方言のイントネーションが心地いい。

事務所の壁にはたくさんの旅行者の写真や
おじさんご夫婦へのお礼のメッセージの色紙が飾ってあった。
それには感謝であふれていて、
おじさんの旅行者へのあたたかさを感じた。

あきのおじさんがもはや豊島の素敵な観光スポットになってる。
豊島の観光にすごい貢献してる。


お礼を言ってレンタカーに乗り込み、『豊島美術館』へ向かう。
道の途中にたくさん人が立っていて
きれいなフォトスポットの一つ、
坂の向こうに広がる海の景色が現れた。

レンタカーを道路脇に止めて撮影したが、
フォトスポットはもう少し先だった。

海に向かって坂をずーっと降りたところを道なりに右に曲がると、
すぐそこが『豊島美術館』。
目立つ看板がなく、危うく行きすぎるところだった。

後からよく見ると、駐車場入り口の足元に
シンプルでおしゃれな看板発見。


豊島美術館

駐車場に車を停めてすぐ横にある建物へ。

ここは、何もかもが常識を越えた世界だった。

海側から見た受付の建物

草の生えた地面の下に四角いコンクリートの箱型の建物があって、
そこが美術館の受付。外国人の人もたくさんいた。
中に入ると静かな空間。

チケットを買い、また外へ出る。
美術館の建物はここから少し離れた場所にある。


受付前から見た景色。この道を通って美術館へ。
海を望む

道の脇には小さなテーブルとイグサ風の編んだ座布団みたいなのがあり
ここで休めるようだが日向で暑いので素通りした。

ここに座ってゆっくり海を眺めるのは素敵だろうな。


後ろを振り向くと緑の中に道が2本並んだ風景。

左は美術館敷地内の道。奥に受付の建物が見える。
右は車道で、向こうからここをを通ってきた。
道が同じ角度のカーブになってて、これも意図して設計したんだろうなと話す。


海と山の両方楽しめる
木々がさしかわす小道を歩いていくと
変わった建物が現れた


なんとこれが美術館。


美術館入り口(とても美術館とは思えない斬新な造り)
中へ入ると常識をくつがえす、すごい世界観だった。感動しかない。


入り口にいたスタッフから鑑賞についての簡単な説明を受ける。

靴を脱いで低いベンチの下に作られた靴置きに入れ、
ひんやりした床をはだしで踏んで入り口をくぐる。


入った瞬間、そこはもう別世界で。


静まりかえったあまりの静寂に大きな声など立てれない。
小さな声さえ立てにくい。


入ってすぐ思ったのは
「なにもない」

絵もない。
オブジェもない。
ただドーム型の空間に広い空洞が広がっている。
これが美術館?


天井に二つの穴。
円形の小さな穴ととても大きな穴が空いていて
そこから光や風、空気が入ってくる。

中は明るい。
なんという透明感。


音のない空間に、先に入った人たちが床に座ったり
寝転んだりして点在している。

寝てる!???

寝転んでじっと上を見ている人もいれば、
目をつむって眠っているように見える人もいる。

天井の穴からはブランコのように細い糸のような紐が丸く垂れていて、
風にふんわりなびいている。
本当に細い紐。

風によってふわっと浮いたり揺れる糸のカーブで
空気の動きを感じる。
それがやわらかい動きで美しい。


若い女性2人が体育座りをして床の何かを一心に見ている。
何を見てるんだろう?

床をよく見ると、天井のそれぞれの穴の下あたりの床に
所々に水滴が落ちていて、
それが動いていくのだ。
最初、なんで水が?とびっくりした。

私たちもしゃがんで水滴の動きを見た。
床に小さな小さな穴が空いていて、そこからポッと水滴が出てくる。
生まれ出てくるという感じ。

その水滴がコロコロと転がり、
ビリヤードのように次の水滴に当たって吸収され、
大きな水滴となってまた次に水滴に向かって転がる、
の繰り返し。


出てくる水の量や床の角度など、きっと計算されているのだろうと
思われるが、水の動きはその水滴によって変わる。

それも素早い動きではなく、
ポンと生まれた小さく丸い水滴がしばらく滞在し、
やっとコロコロコロ、、、と動き出す。

大きな水のかたまりになってやっと動くものもある。
ずっと見ていられるのだ。


丸い大窓のような天井の穴の向こうには、
青い空と木々の緑が見える。

大きな穴の下にはたくさんの人が集まって座ったり寝転がったり
して空を見たり、水滴の行方をじっと眺めたりしていた。

私たちもそこへ行って空いた場所に座る。
みんなのマネをして寝転んでみた。


なんと言えばいいのだろう、
この心地よさ、感動、至福。

目をつむればそのまま眠れる。
ひんやりした床が、硬いのに気持ちよく。


思考がゆっくりになる。


ゆったりと時間が流れる。


日々喧騒やうるさい思考の中で過ごしていることを実感する。


こんなに静かで、
凛とした空気と、
美しい空間。


ここに来る誰もが感動するのではないだろうか。


大きな穴から差し込む日の光に床の水がきらめいているのもきれいで
ゆっくり穴の下の周りを歩いてみる。
見る角度によって水たまりの表情が変わる。

曇りの日もまた美しいのかもしれない。

一日中いられそうだった。
長い時間ここで過ごした。
どのくらいいただろう。

トンネルのような出入り口を通って外に出た瞬間、
また元の世界に戻ってきた。

なんという空間だったんだろう。
日常では絶対味わえない感覚。

また来たいね、と言いながら小道を戻り
お茶をしに敷地内にあるカフェへ。


豊島美術館カフェ


カフェ外観
カフェ入り口


ここにある建物はすべてがどうなってんの?という造り。

カフェの中も驚きの美しい空間だった。


入り口入ってすぐのレジとショーケース
アイスクリームや柑橘のドリンクが並んでいて、
札にはレモン、みかん、てしませとぽん、と書いてある。
美術館にしても受付にしても、ここにある建物はどこも一歩入ると外の世界と切り離された空間。
飲食スペース横のショップコーナー
美術館にちなんだトートバッグ、Tシャツ、花瓶、ポストカード、写真集などが並ぶ。
ロールケーキと米粉マフィン、柑橘ジュース
オリーブライスとカフェオレ。
オリーブライスがとてもおいしかった。
カフェの天井にも丸い穴
このテーブルは、小道の横にあったのと同じ
カフェの感性がただものではなく、
ここにいるのが楽しすぎる

カフェを堪能した後はまた受付の方へ戻りながら
海や緑、自然の景色を楽しむ。


最高の美術館だった。

かなりの時間滞在して楽しんだので
他の見所全部は回れず、
帰りのフェリーの時間まで行けそうな所に行く。


てしまのまど


次に行った『豊島横尾館』の少し横に『てしまのまど』というカフェがあり、
味のある佇まいに惹かれてのぞいてみる。


戸を開け放ったオープンな店内でおいしそうなケーキを食べているお客さんがいて素敵な光景だった。
建物は古いのにおしゃれ感満載。


素敵なお店で、
古さも魅力にしてしまうというすごいセンスだ。


おいしそうなパンを売っていて、明日の朝食用に購入


豊島横尾館


『豊島横尾館』の入り口は、
穏やかな島の町に衝撃の赤い色を放っていた。
とにかく赤い。

写真撮影NG箇所がほとんどなので写真はないが、
豊島美術館とは違ったおもしろさ。

ここもすべてに「えっ」とか「うわ」とか声に出てしまうほど
変わった所だった。

建物の作りは日本家屋の和風。
そこに現代のアートを詰め込んだ感じ。

アートには詳しくないのでうまく説明できないけれど、
素人目にとてもおもしろかった。

絵はグロテスクめ。

怖いとか持ち悪いとか感じそうな絵なんだけどなんだか見てしまう。
その飾り方や見せ方がアートで、
足元の床がガラスになっている所があったり、
その下を池というか水が流れていたり。

日本庭園にはビビッドな色がほどこされていて
現代アートと和の融合が
不思議な世界観をつくっていた。


撮影OKのトイレ。開けてびっくり。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


美術館めぐりの豊島の旅。

さあ3時のフェリー出港まで時間がない。

大急ぎでレンタカーを返して、
支払いもそこそこにおじさんにお礼を言って飛び出る。


「道、教えてもらってわかりやすくて楽しめました!」
おじさん「よかったよかった!」
「こっちの道から行きな!早いから。」

短い会話の中でもおじさんの温かさを感じる。
私たちのために一生懸命なのが伝わってくる。
おばさんもニッコリ笑って会釈してくれた。


日常ではとても味わえない、
心に残る素晴らしい体験ができた感動の豊島の旅。



次なる目的地は高松へ渡って『父母ヶ浜』へ。



🌱お読みいただきありがとうございました(^ω^)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?