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走り続ける青春として未来を探っていけばいいよね - 青春狂走曲 / サニーデイ・サービス

青春狂走曲 / サニーデイ・サービス、北沢夏音(スタンド・ブックス 2017年刊)

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最初に、この街と書店の思い出について。

この街は、自分にとって、すでに地元暮らし以上の意味を持っている。

まず、地元茨城からの東京への玄関口として。

茨城県出身の僕は、今でこそつくばエクスプレスで簡単に都内に出てくることができるが、20年以上前は、常磐線に乗るために柏駅に出るまでバスで1時間。そこから東武線で30分。

そして千代田線へとつながる常磐線各駅停車で1時間以上揺られて、憧れの原宿にたどり着く。

裏原宿まで、表断層駅で降りることもあれば、明治神宮前で降りることもある。

インターネットで乗り換え案内やGoogle Mapなんてこの世に登場すると想像すらしなかった時代の話。

そして時は経ち、大学進学のために上京すると、インターネットの掲示板で知り合ったデザイナーという職業の先輩たちや

大学の先生から青山ブックセンターという書店で僕が興味があるアートブックや建築に関する本がたくさん売っていると教えてもらった。

原宿から渋谷までの散歩コースの中で、長いエスカレーターを降りた先にある「まだ出会っていないセンスや知識の発見」を求められる場所。

海外雑誌から専門書までを探していく、情報への宝探しのような「期待溢れる未来と未知との遭遇」の場所。

それが青山ブックセンターだった。

ここで出会い開いていった「世界への扉」は数知れない。思い出の本は数あれど、ここでの思い出が濃いのは駅から歩き、長いエスカレーターを降りてたどり着くまでの時間も含まれるせいでもある。多分ね。きっとね。おそらくね。そうだね。そんないつまでもあってほしい応援したい書店でもあります。

そして学生時代が終わり、僕はふとしたことから編集の仕事が終わり、表参道にあるある会社で右も左もよくわからないディレクターの仕事を小さな会社で始めた。

仕事が終わると、閉店間際に駆け込み、興味があった海外の雑誌をチェックしてまた千代田線に乗って帰っていく。そんな毎日。

たまにもうやんカレーに吸い込まれる日もあってがむしゃらに仕事に没頭する毎日。8年か9年、そんな時期が続いた。

だから、辛いことも、泣きたくなることも、逃げ出したい日々も、仲間と達成感に満ち溢れた日々も、「これが成功ってやつかなぁ」と思う日々も、

地元で暮らした日々が記憶の彼方に飛んで飛んで飛んで飛んでしまうくらいにもはや自分の地元の1つとも言えてしまうような街が表参道。

高校の終わりから通っていた美容室で大親友の美容師と出会ったのもこの駅前のお店だし、大好きな女の子と待ち合わせるのも交番の前。

もう一度言うけれど、「地元か!!!」

話は少し未来へ。2017年にワープする。少し急なんですが、ごめんなさい。ワープします。

この本が刊行された2017年、僕は人生の岐路にいた。それもかなり大きな。事故による体調の悪化で3年近く休養する羽目になり、復帰した後も自分のイメージするように身体がついて行かず、仕事と人生に対して悩んでいた。

「これはいける!」と思っていた時期から急にもう終わりなのでは?と思うくらいの状態になり、やっとの事で復帰したため、自分がどれくらいできていて、これから何ができるのか、不安で不安で仕方がなかった。

休養中に新しく挑戦したい会社に入ることができても、思い通りにできず退職。ある意味失敗とも取れた直後。

つまりは不安定な未来に対しての怖さから、地に足がついていなかったと思う。今思えば。そこで、長く過ごした表参道を歩いていてみることにした。

もちろん、ノスタルジーに浸って過去の自分を想像するのは恐ろしくダサいと思っているのでその夢の中に生きるためではなく、

失われていた時間に僕の中からこぼれてしまっていった小石のような経験を1つ1つ拾い集めていければいいな。そんな思いからだった。

通勤経路と同じ電車に乗り、毎朝通った喫茶店に入り、昔の職場の前を歩き、大好きな洋服屋を覗いているうちに、自然と足は青山ブックセンター店内へのエスカレーターを降りていた。

そこで思い出したのがこのサニーデイ・サービスの本が出ていること。店頭で思い出した。そのまま買って、帰り道に読み始めた。

大好きなバンド、サニーデイ・サービス。自分のこれまでの時間を凝縮するようなロックバンド。

学生時代に偶然深夜番組出知り、CDを買うために初めて渋谷に出るきっかけになった彼ら。(地元でも多分買えたのだけど、渋谷のタワレコに買いに行くことに意味があるとバカみたいに考え込んで緊張しながら渋谷に行ったのです。そして、竹下通りを歩いていたらキャッチに引っかかり、ぼったくりにアクセサリーを買わされたのです)

この本は、曽我部恵一(vo,g)、田中貴(b)、丸山晴茂(dr)によるバンドのロックンロールの日々を結成から解散、再結成に至るまでの出来事を包み隠さず本音で著者との対話の中で聞き出していく彼らの全てが書かれている(と思う)一冊。

タイトルは、彼らの1996年発表の日本のロック史上に残る名盤「東京」に収録された代表曲から。(一応お伝えしておくと「東京」よりも、その後の「愛と笑いの夜」が好きです)

サニーデイ・サービスは、「青春」と一言で括られることもあるけれど、3人の事情は、解散前に見えていただけでも複雑。

歌い上げることも、恋愛だけではなく、「退屈な日々」も「普通の日常」も「あの娘との特別な瞬間」も「死にたくなる時間」も、

「愛と笑いの夜」のようなことまで多岐に渡ります。その様々な出来事を「誰にでもある出来事」に3人の演奏を通して変換してくれるロックバンド。

僕は、色々な出来事が起きて、辛いこともそれなりにマシなことも(割合は9:1)起きていた高校時代に彼らの音楽を通じて、成長するための感情を知っていくきっかけになった。

だから、彼らの音楽は自分の側に常にあったのだと思う。(通学時間、寝る前に毎日聴いていた)

僕が倒れている間に再結成した彼らは、アルバムを作り、15年ぶりに渋谷公会堂でライブを行い、その後2010年代屈指の名盤とも言われる「Dance TO You」を発売。再びバンドとしての最高の時間を取り戻した。

渋谷公会堂には自分の体調は間に合わなかったけれど、その後のツアーには参加し、「今を鳴らす」サニーデイ・サービスとの時間を再び過ごし始めた。

社会復帰するときに、僕は「足りないこと」ばかりに目を向けていたと思う。表参道を歩くことでこぼした小石を拾い集めることは本当であれば、「自分自身」を取り戻せばよかっただけの話。

でも、周りの人と意味のない背比べをしながら不安の日々を過ごすうちに「あれも足りないこれも足りない」ばかりに目を向けて、足りない自分を否定して、「先に進もう。先に進もう」という焦るばかりで空回りする。そんな時間。思い出すと切ないですな。あ、今は加点方式で生きています。

本を読み始めて、元々、衝動的にMCをしたり、気が狂うようなレコーディングをしたりするようなバンドだったけれど、大人になって(年齢の意)からのツアー先でも殴り合いをしていたりしていると知り、何か不思議な安堵感を覚えた。

本の中でバンドそれぞれの時期、メンバーの本音、出来事を隠さず話すことで、「やり直せること」「ダメな時はダメなこと」「向かい合って本気になるといつかまた最高の時間は戻ること」を自分に照らし合わせて教えてくれたかのようで。

「またやってみようかな」と、この本を千代田線を乗り継いだ日比谷公園で彼らの音楽を聴きながら読んでなんとなく、ぼーんやりと考えて小さな自信を手に入れて。

もう一度やれるか不安で不安で仕方がなかった自分に対して、タイトルの青春狂走曲の歌詞にある、「そっちはどうだいうまくやっているかい こっちはこうさどうにもならんよ 今んとこはまぁ、そんな感じなんだ」と肩肘張らずにやれることからやっていきましょうよ。と、人生は成功も失敗も人間関係も全て含めて「走り続ける青春として未来を探っていけばいいよね」と教えてくれたのでした。

まぁ、そんなこの街とこの書店と、このバンドでの思い出回想録でもあるのです。


きっとまぁ。色々生きているとあるけれど、何度でもやる直せる。

ロックンロールバンドは救いではないけれど、きっかけは与えてくれる。

そんなことを思わせてくれる一冊なのでした。

映画 Sunny Day Service 『GOODBYE KISS』(2019年内限定公開)

2018年5月に逝去したドラマーの丸山晴茂さんに関するライブのドキュメンタリー映画です。




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