続・男子枠はデフォで、女子枠は否?(女性性がもたらすもの)

【男子枠はデフォで、女子枠は否?】
にて、大学入試の「女子枠」に対する私見を述べた。「女子枠」設定には、十分な正当性があり、その貢献は全体の理に適う、という主張である。

その私見を掘り下げたのが、この記事だ。



●女性性が、もたらすもの①

男性性に偏ったものの是正

「自然科学に性別はない」にも関わらず、自然科学を学び、研究する者が、アウトプットするものに性別が存在する場合がある。

医療は、男性優位型で進んでいた。
人間のデフォルトは、成人男性とされる。

なぜか。

それを学び、研究する者の思考や視点が、
男性的だからだ。

それらの学問を、本来の在るべき姿に戻すため(自然科学から性別をなくすため)必要となる何かを、各機関は「女子枠」を通じて求めている。その何かとは、男性性に偏った(思想や制度を含む)あらゆるものを、男女すべての性の下で、公正にするもの、だ。


●女性性が、もたらすもの②

(妊娠・出産を通じた)
キャリア中断を含む人生設計


産休・育休・復職(の前例)がないために、女性が働き続けられないのは、経済にとって大きな損失だ」というのが、今、社会の共通認識であることは間違いない。

どんなに優秀な男性であっても、産休・育休制度を(創設することは出来ても)運用することは非常に困難だ(優秀な男性の宝庫である政府機関でさえ手を焼いている)

産休・育休制度によるキャリア中断という前例を作り、発覚する問題を提起、解決の糸口を見つけられるのは、その制度を実際に活用する女性だけだからだ。

しかし、キャリア中断を含む人生設計は、何も(妊娠・出産する)女性だけに必要なものではない。介護や病気など、さまざまな理由でキャリアを中断する機会は、誰にでも訪れる(可能性がある)。

女性性がもたらす、このキャリア中断を含む人生設計は(男性も含む)すべての人に恩恵がある。ゴリゴリの男性社会の中で働く者であれば、性別を問わず、特に。


◼️男性性が、もたらすもの①

「是正が必要な現状」の助長

私は、医学部の「男子枠」を否定する者だ。
それは、枠の設定が未公開だったからでも、
優秀な女子学生が排除されるからでもない。

「男子枠」の設定により、医学会に存在する男性性に偏った思想や仕組みが、是正どころか助長されることに繋がる、と考えるからだ。そして、それは今後、壊滅的かつ修復困難な問題になる。

医療現場や我々が求めるのは、知力体力(できれば人間性)を無尽蔵に兼ね備えた、スーパードクターである。しかし、「著しく現実と乖離した理想」を前提とした制度設計が行き着く先は、破綻であろう。

何より、男性のみで構成される社会は不穏だ。女性(や子供)の人権さえ認めない国では、男性が喧嘩腰で力(武器)を振りかざし、未来は暗澹としている。
男性のみで構成される社会が行き着く先は、可能な限り周囲を巻き込んだ自滅ではないか、と戦々恐々としてしまう。


◼️男性性が、もたらすもの②

各機関の「女子枠」設定

「女子枠」で求められているものとは、
男性にも実現可能なこと、だが
(意図的か否かは問わず)
男性が決して実行しないこと、である。

男性にも実現可能なことを、
各機関は、女性に限定して求め始めた。

それは、「男性には出来ないことが、女性には出来る」という【女尊男卑】的な考えだ。
そう誤解する方が「女子枠」を否定的に捉えるのかもしれない。

もしくは、「なぜ女性に限定して求めるのか」という反発が、「女子枠」否定派を形成したのかもしれない。

その反発には、私も大いに賛同する。「女子枠」がもたらすものは、女性だけが実現可能なことではない。

私は、「女子枠」という枠組がなくとも、健全な変化が自動的に起こることを願う。
そして、その変化は「女子枠」がなくとも起こせるのだと反発する「女子枠」否定派の、今後に注視している。

「女子枠」設定とは、各機関が(男性が出来るにも関わらず)男性が実行しないことを、女性に求めた結果である。


★社会が「枠組」に求めるもの

「男子枠」も「女子枠」も、ある特定の枠組を設定した時点で、その学部の平均点(学力)は確実に下がる。それは枠組を設定した側も、当然織り込み済みだろう。むしろ、全体を下げてまで求めるものとは、一体何だろう。

女子枠」設定の真意は、
優秀な男子学生の嫁候補集めだ。


と指摘する記事を読み、
「なるほど、皆婚時代のOL的な?」
と、思わず膝を叩いてしまった。

男子学生の意識と環境に変化を促し、優秀な遺伝子を残そうとする、機関側の意図は非常に合理的だ。

同じような価値観、同じような思想、同じような家庭経済環境、同一の属性としか交流がない者の思考は偏り、柔軟性を失う。

多様性のない環境下における優秀な遺伝子は、その存亡の危機の前に、遺伝子が持つ能力自体が衰退する危機に晒される。


★画一性が、もたらすもの

人は環境に、多大な影響を受ける。
だからこそ、各機関は、厳正な基準で学力を測り、振り分け、超選りすぐりの精鋭集団を創った。そして、その集団内での成長および、優秀な学生同士の交流による相乗効果を、大いに期待したに違いない。

超選りすぐりの精鋭集団は、周囲の期待通り、有益な成果を出せたであろう。が、同時に画一性に起因する致命的な問題にも直面したのではないか。

人は環境に、非常に多大な影響を受ける。
機関側が、心理的安全性を保証した上で、多様な変化に富む環境を用意しなければ、学生は、変化に触発されて起こり得る、柔軟な思考形成の、貴重な機会を失う。同様に、好奇心や探究心を向ける事象にも制限を受ける。

学生の健全な成長には、また、各機関が求めたすべての成果を学生から引き出すには、多様性が、変化が、画一的な学生とは異なる存在が、どうしても必要だったのではないか。例え、全体の質が一時的に低下することに繋がっても、だ。


★私が「女子枠」に求めるもの

私は、「女子枠」を無条件に肯定する者ではない。特定の者が優位な社会で、その優遇が不当である場合、または、その優遇の結果、社会の公正さを損なう場合において、その不平等を是正する目的の枠組を、私は肯定する。

社会は男性のみで構成されてはいない。よって、男性性に偏った思考や視点、制度設計は不当である。
しかし、それらに気付き、自覚的に是正を促すことが(現時点では)男性には極めて困難である。なぜなら、彼らは(頑なに)男性優位という画一性の中に籠っているからだ。
その画一性に(多様性という)変化を与え、社会全体を公正に導く手段の一つが「女子枠」である。少なくとも私はそう考える。

私は、男性優位社会(分野)における「女子枠」を肯定する者だ。

男性性に起因する面子や美学ではなく、能力至上主義者が掲げる効率や生産性でもなく、社会を健全に維持・継続するための公正さを、私は「女子枠」を通して求めている。


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