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2020年9月の記事一覧

フィルモア通信 New York  No23 Charlie Chan

フィルモア通信 New York No23 Charlie Chan

チャーリー・チャン、シャーリーテンプル、ステットソン。

 ぼくは次の二ブロック先の角を曲がり自分が住むストアフロントへ車道を横切りながら、チャールスを思いだした。何か月か前にぼくはここで家から出る時、東四丁目をセカンドアヴェニューの方にゆっくり歩いてきた彼に会った。

 半年ぶりくらいに会った彼は痩せてはいたが赤いセーターも似合う相変わらずかっこいいダンディだった。「チャールス!」と声をかけると

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フィルモア通信 No19 バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署 その続き

フィルモア通信 No19 バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署 その続き

 前稿の続き。

 その事件があった週末の一番込み合う時間の金曜日のディナーに二人の刑事がヒューバーツレストランにやって来て、マサミという男がいたら今から署に連行すると告げられたカレンがキッチンに入ってきてそれをレンに告げると、レンはぼくを見て「ドン、ウォーリー」と言い刑事たちと話をしにダイニングルームへ行った。

 刑事たちは帰り、ぼくは明日土曜日にひとりで二十三分署に出頭することになったことを

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フィルモア通信 No18 バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署

フィルモア通信 No18 バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署

バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署

 ヒューバーツレストランには異なる多数の人種、言語そして文化を持つ人々がそれぞれの仕事についていた。なかには複数の言語を話しその父母からそれぞれの国の文化や習慣を持つ人もいて、出身国がちがうカップルなども独自の価値観を見出していたりと、ニューヨークの様々な分野の多様性は簡単には理解出来ないものがあり、何も知らないぼくは毎日驚いたり、不安になったり、

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フィルモア通信 New York No17     流れる水

フィルモア通信 New York No17     流れる水

流れる水

 天ぷらの修業のつぎは鰻の捌きを覚えようと思い立ち、中央市場の老舗の川魚店に見習いに行くことにした。
朝四時からその捌きは始まり、六時には終わるのでそれから仕事に行くことになった。その川魚店には鰻捌きの名人と言われる人がいて、多くの京都の料理屋がその名人の捌いた鰻を仕入れに来ていた。

 名人は初老の痩せた男で、子供の頃からこの道一筋らしく、まな板の位置と右手の包丁使いの動きに合わせ

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フィルモア通信 New York No16 五十年の鰻、十六歳の天ぷら

フィルモア通信 New York No16 五十年の鰻、十六歳の天ぷら

五十年の鰻、十六歳の天ぷら
 ソーホーのミキオさんのその店は昔、映画ゴッドファーザーの原作者、マリオ・プーゾが彼の著作を書いていたこともあるという静かな下町のイタリアンカフェを日本料理屋に改装した、オーナーのミキオさんの美的センスが座布団やメニューブックの造りに顕れている、地元ソーホーのギャラリーオーナーやアーティストそしてミュージアムのキューレーターたちが通ってくる小さな日本レストランだった。

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フィルモア通信 New York No15 Peter goes Tokyo. Calling Susan. I

フィルモア通信 New York No15 Peter goes Tokyo. Calling Susan. I

 ある日ピーターはぼくに日本の料理本を見せて興奮した様子で、「マサミ、この料理はビューティフルだぼくはこの人に会いたい」と言った。その本は東京のフレンチレストランのシェフが美しい料理の写真とレサピを乗せた、彼の最新刊だった。ピーターはぼくがこの夏に一度日本へ行く計画を知っていて、そのシェフ宛に手紙を書くから翻訳して渡してくれないかな、と言った。
 ぼくはピーターのために役に立ちたいと思い、引き受け

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