恵風
凍っていた土がほどけ、雨は絡まるようになり、自然の体臭を、大気は風で絡げ始めた。
においと一緒に運ばれていく意識は、どこまでも遠くへと流れていく。
孤独は切符だ。
あの、弱くて強い風に乗るための。
肉体を阻むこの無限の距離でさえ、孤独を破ることはできない。
踏みにじられては転がっていく、淡くて小さな花びらと共に。
足では決して向かうことのできない、あの深い緑と大木の根元まで。
大気は孤独を見せて初めて、その細くてぬくい手を差し出し、そうして乗せてくれるだろう。
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