頭のなかに、影という名の雪が降り積もっていた。真っ白い三つの音が。そう、影の音は三つ。二つではない。だが最初は知らなかった。私は二つの音で呼んでいた。時間は過ぎていった。次第に影は、土と小石と混ざり合い、濁り、その形を失っていった。私は影を呼んだ。だが影は答えなかった。答えぬまま、頭のなかの地面と一つになっていった。のどから確かに声は出た。だが腕は伸びなかった。伸ばせなかったのだ。そんな私に向かって、影は最後に微笑んだ。その三つの名と濃いシミを残して、溶けていった。影。置いていかれた私は、知らされた三つの音をささやいた。影。影。どうして返事をしてくれないのですか。動けぬ私は、いつまでも消えないそのなごりを、今もなお見続けている。音を口にし続けている。

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