着物

他人が着せようとしてくる
あなたらしさなんてシャツも
自分らしくなんて靴下も
個性なんて下着も

全部誰かを
夢を希望を妄想を
願いを身勝手さを
妄信を
ただ無理矢理働かせて作ったもの

そんなものに腕を通したら
はいてつけてしまったら

あんまり暑くてくらくらして
あふれる汗のきらめき
その光を錯覚してしまう
錯覚させられてしまう

そうしていずれは
もっともっともっとって
自分からたくさん着込むように
着飾るようになっていって
他人の服装に
徹底的にケチをつけるようになる
汗の臭みを振り撒きながら

つくられた
強要されたドレスコード

脱げ
全裸になるんだ
その熱に殺されてしまう前に

熱中症で
脱水症で死ぬな
奪われるくらいなら凍死しろ

肌を抱いてくるこの冷たさだけが
本当の着物

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?