聞こえない
本当に私たちは
豊かさや向上や
美や清澄といった
熱い炎に手をかざしたいがために
一切を薪としてくべてしまい
土の言葉も空の歌も
およそ聞こえなくなってしまいました
熱は鋭く激しく爆ぜて
たとえばそのとき
瞳をふっと逸らしたとして
水や空気の踊りが息が
たまたま見えたと聞こえたと
笑いながら指差してみたところで
それらはすべて耳鳴りで
実際は何も聞こえてはおらず
映るものなどありません
影も草木も
獣も虫も
本当に私たちは
一切の音と引き換えに
凍えないための熱と
たったひとつの響きと
嗅ぐことのできない焦げた死臭とに包まれて
死んでいくのです
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