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褒める

3月から5月まで、私たち家族はほとんど家にいた。
もともと生協の宅配を利用していたので、スーパーやドラッグストアに出かけるのも最低限。

家族が3食自宅で食べるとなると、宅配の注文が増える。そして、全体の需要が増加しているらしく、週を追うごとに欠品が増える。


感染症を広げないために自宅で過ごすことが社会のためになるのだと分かってはいる。
でも、感染リスクを負いながらいつもどおりに、それ以上に忙しく働く方を思うと心苦しい。
我が家の担当配達員Aさんは、幼児を保育園に預けて働く女性である。この状況で娘たちのそばにいられないことを想像すると、心臓がぎゅっとなった。 


差し入れや心付を渡すのも気が引けて、迷った挙句、手紙を書くことにした。

子どもが生まれて以来すごく助けられていること、注文が多くて申し訳なく思っていること、働いてくださることへの感謝、欠品は気にしないでほしいことなどを書いた。
そして、事務所の住所へ、担当Aさんあてに送った。

ホームページの「ご意見フォーム」からも、同じようなことを送った。(こちらには、慇懃な調子で配達員にボーナスを出してください、とも書き足した。)
返信不要としたが、数時間ほどで電話がかかってきた。男性が驚いたような声で、力になるご意見をありがとうございます、とおっしゃった。

翌週Aさんが配達に来てくださったときは、やはり驚いた様子で、感謝を伝えてくださった。配達員で回し読みをしました、力にします、とも。
何ができたわけでもないが、気持ちを伝えられて良かったと思った。

手紙を書くことは少ないが、お仕事の方に助けられたとき、その会社の「ご意見フォーム」にできるだけ名指しで感謝を伝えるようにしている。
こういうことをするようになったのは、やはり子育ての影響だ。

子どもは、良くない(と親が思う)行動をすれば必ず叱られる。でも、良い(と親が思う)行動をしているときには必ずしも褒められない。

例えば、お店で騒ぎがちな子が静かにしているのなら、その子の頑張りや成長があるのだろう。
でも、さっと済ませたい買い物がさっと済んだ、ただそれだけのことの裏にある子どもの頑張りや成長に気づくのは難しい。
難しいからこそ、拾って、ありがとう、できるようになったんだね、と伝えたい。

いつもできるわけではないけれど、私が気をつけていることだ。


そして、大人だって褒められたいよね、と思うようになったのだ。
仕事中、ミスがあれば注意される。スーパーの客が店員に怒鳴っている場面も見たことがある。(そのとき店側に落ち度があったのか定かでないけれど。)

でも、問題なく気持ちよく買い物できたことでことさら感謝されることはない。本当は、そちらにこそ店の努力や工夫があるはずだ。

だから私は感謝を伝える。大人にも、子どもにも。


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