橘春という歌人
大学の同級生に、"橘春"という短歌を詠んでいる子がいる。彼女と私は大学1年のとき、文芸サークルで出会った。
元々、高校でバンドをやっていた私は、サークルは音楽系に入りたいと決めていた。しかしいろんなサークルを見学しに行き、その中でも有名なアーティストを輩出したことのある音楽系サークルに所属を決めたが、びっくりするほどそのサークルとは合わなかった。
何もやらないのはなんだかなぁ、と思った私は、みんなよりも遅れた時期に、私と同じ文芸学科生が多く所属している大学の文芸サークルに初めて興味を持った。
1年の同じゼミにいた、文芸サークルのメンバーに部誌を1部もらい、「どんな作品を書く人がいるんだろう」と、少し緊張しながらページをめくった。
大半が小説だったが、ときどき意見文のようなものもあった。"何を書いてもいい"というようなコンセプトのもとでやっているらしく、自由でいいなあと思ったのを覚えている。
これなら私も書いて載せてみたい。
そう思ってぱらぱらめくっていると、あるページが目に止まった。
それが、短歌を載せている彼女のページだった。
”息をすること意識してしまうほどあなたの嘘が苦しいのです”
”いつまでも忘れないって簡単に言ってしまえる君がきらいだ”
”赦すこときっと僕らは難しい 小学校で習ってないし”
”サイダーに蝉が溺れている 寝ても覚めても飽和されない想い”
実際はもっと、いくつもの歌が収録されているのだが、良すぎて挙げるときりがない。これを初めて読んだとき、私は「このひとはきっとすごく苦しい恋をしたことがある人なのかもしれない」と思った。そして、なぜか年上の女性をイメージした。同級生だと知ったのは、もっとあとになって私が入部を決めてからだった。
そして私は、「入部したら、絶対この人に『あなたの短歌が好きです』と伝えたい」と思っていた。
同級生の計らいで私が彼女に会えたのは数日後。私は初めて彼女に出会い、彼女が同級生だったこと、そして話してみるとユーモアに溢れる子だということが知れた。
小学生の頃から小説をずっと書いてきた私には、短歌という表現方法を選ぶ同年代がいるということ自体刺激的だったし、”サラダ記念日”以外の現代短歌をまともに知りすらしていなかった。そんな中彼女と出会って、小説や詩以外の表現方法でこんなにもドラマチックに自分の世界観を表現することができるんだ、と知らされた。
大学では彼女の影響か、プチ短歌ブームが起きた。彼女が周囲に与える影響は少なくない。
彼女のTwitterでは頻繁に作品を見ることができるので、よければ閲覧してみていただきたい。
橘春 @hr__lch
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