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謎多きマッシュルームのぬか漬け

マッシュルームという英語は日本語に訳すと「キノコ」であるが、今回はキノコ全般ではなく「西洋マツタケ」とか「ツクリタケ」と呼ばれる、学名アガリスクビスポラスという、あのキノコをここではマッシュルームと呼ぶことにする。
そのマッシュルームのぬか漬けの話を今回はしたい。これが、なかなか不思議なのである…美味しいのだが。

マッシュルームの生食

この西洋マツタケことマッシュルームは、キノコにしては珍しく生で食べられる。ちょっと小洒落た洋食屋だと、サラダに生のマッシュルームが入っていたり、ピザに後のせでトッピングされていたりする。
淡白な味と香りだが、シャキシャキした歯ごたえが楽しめる。

なお、基本的にキノコは生で食べてはならない。生で食べると、食中毒やアレルギーを引き起こす可能性が極めて高い。
一頃、干し椎茸の戻し汁を飲む健康法が流行ったそうだが、ほぼ同時に椎茸皮膚炎なる病気も流行ったという。ただし、これは個人差があるらしい。少なくとも私は干し椎茸のぬか漬けを加熱することなくそのまま問題なく食べているが、人によっては油で揚げた椎茸でさえ皮膚炎を発症する人もいるという。
エリンギのぬか漬けを私は作ったことがないが、これも生で食べれる人と、中毒を引き起こす人がいるらしい。こちらはシアン化合物が作られるというから、下手をしたら死ぬかもしれない。
テドロキシンという猛毒が含まれるフグの卵巣を3年間ほどぬか床日漬けておくと毒性が消えて珍味になるというのは本当である。しかし、キノコも同じように毒性が消えるかどうかは定かではない。

冒頭から随分と余談を挟んだが、西洋マツタケことマッシュルームは珍しく生で食べられるキノコであるのは間違いない。

たまたま八百屋でマッシュルームが目に入って、生で食べられるならぬか漬けにしてみよう、と思った。
それで買ってきたのだが…

まさかの入れ忘れ

ぬか床をかき混ぜて平らにした後で、まさかの入れ忘れに気付いた。それで、とりあえず仕方なしに、ぬか床の表面にマッシュルームを4粒だけ押し込んでみた。私の「超合菌ヌカダル」らしくない水玉模様である。
イメージしてもらいたい。ぬか床に白い丸っこいものが差し込まれた様子を。

黒いホワイトマッシュルーム爆誕

こんな具合に半分だけぬか床に埋めて、6時間くらいしてから取り出してみた。

たこ焼きと、ちゃうで

私が用いたのはホワイトマッシュルームであるが、ぬか床に接していた部分だけ黒くなっている。ブラウンマッシュルームの茶色ではなく、もはやブラックマッシュルームと呼びたいくらい黒い。
せっかくなので、取り出して片方だけひっくり返して撮影してみた。爪楊枝を刺すと、何だかテンションが上がる。

この記事を書きながら思ったのだが、これはキャラ弁やパーティーなどに使えそうだ。
広げたラップの上にぬか床をクッキーの型抜きみたいなところに硬く敷き詰めたところにホワイトマッシュルームを載せてラップで包んで漬けることで、マーク入りのブラックマッシュルームができるのではないか?

肝心のお味は…

このブラックマッシュルームと化したホワイトマッシュルームのぬか漬けを食べてみることにする。
まず驚いたのは、きちんとマッシュルーム特有の歯ごたえがあることである。サクサクというよりは、多少シャクシャクという感じではあるものの、ぺしゃんとしていない。生のマッシュルームのサクサク感が10だとすると、ブラックマッシュルームのサクサク感は余裕で8〜9くらいある。
そして香りが際立つ。マッシュルームはそんなに強くは香らないキノコだが、ぬか床に漬けたことでマッシュルーム特有の香りが強くなったように感じられる。これがぬか漬けの香りと重なり合うことで、何とも美味しい香りに仕上がっている。
サクッとした歯ごたえからの芳醇な香りに続き、ジワッと強い旨味が広がる。この旨味はキノコの旨味とぬか床の旨味が何らかの化学反応をしたとしか思えないくらい、異次元の旨味である。
正直、踊り出したいくらい美味しかった。いや、変なキノコは食べていないのだが、冗談抜きで、これが「踊り出したいくらい美味しい」ということなのかと実感した次第である。私は数年前に母を亡くしているが、母が元気だった頃「美味しいものが食べたい」と言っていたのを思い出した。母に食べさせたいと思った。

とにかく美味しいブラックマッシュルームである。日本酒にも合うだろうし、白ワインにも合いそうだ。もちろんハイボールでも良いだろう。

美味しく作るコツがある

あまりに美味しいので、あるだけのマッシュルームを全部ぬか床に入れてみた。
踊り出したくなるくらい美味しいマッシュルームを楽しみにして、待つこと数時間…いざ超合菌ヌカダル開封!

キノコっのこ〜のこ…あれ、君だれ?

あれ???
期待していた黒いホワイトマッシュルームとは何か違うぞ?!

何度かマッシュルームのぬか漬けをやってみてわかったのは、ぬか床のどこに入れるかによって見た目も味も変わるということ。
白くて酸味のあるぬか漬けがお好みなら、ぬか床の中のほうに押し込んでおく。ほんのりクリーム色といった仕上がりになる。
鼻から抜ける香りの強いぬか漬けがお好みなら、ぬか床の表面付近に漬け込んておく。色は黒くなる。

なお、ホワイトマッシュルームが黒くなるなら、ブラウンマッシュルームは白くなったりするか…というと、そういうことはないみたいである。

黒いブラウンマッシュルーム

上の写真は、ブラウンマッシュルームのぬか漬け4個と、茂蔵の「豚肉みたいな大豆のお肉」のぬか漬けである。一番右のマッシュルームがわかりやすいと思うが、黒と茶色のツートンカラーになっている。この4個のマッシュルームは全てブラウンマッシュルームであるが、ぬか床の表面付近で漬けて黒くなることで(右から2個目のマッシュルームなどは特に)まるでホワイトマッシュルームを漬けたように見える。

ある意味、こんな具合に漬けてみないとわからないところにぬか漬けの面白さがあると思う。ぜひお試しあれ。

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