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小さなプロレス深夜特急・熊本篇……48年ぶりに甦った忌まわしい記憶

■2023年7月18日(火)……熊本県熊本市

前日は九州プロレス熊本大会だった。試合後、いつもお世話になっている熊本の黒木さんという方にご招待いただき、阿蘇山らと新市街を確か3件ハシゴしたのだったか。ホテルに戻ったのが深夜2時前。気が付くとベッドにバタンQしたまま朝になっており、陽が射す窓の向こうからスズメの鳴く声が聞こえてきていた。

浴びるほど飲んだ割には目覚めがよかった。なにも予定がない一日。どこかへ寄りながらゆっくり帰るか。どこへいこう。

最初に思い浮かべたのは、玉名にある親父の墓だった。有明海を見おろすミカン山の上。調べてみると、2時間に1本のバスが出たばかり。他の手段はないかと、墓の近くに住む叔父に電話をしてみたが出ない。ならば、きょうはそんな日じゃないのかもしれない。ガキのころに住んでいた熊本市内の思い出の地を散策してみようか。一瞬でそう決めた。

ホテルを出る。強烈な陽射し。四方八方から反響してくる蝉の声が、熱い空気をギザギザに振動させている。まずは何か食うか。繁華街の下通りへ。そそるメシ屋はないものか。すっきりとした造りの下通りから横道に入ると、いきなりごちゃごちゃした猥雑な小道へと一変する。その猥雑さは台湾か香港に近いと、個人的にいつもそう感じている。アジアのどこかのような異国感。それもまた暑さをいっそう引き立てる装置として感覚的に機能して。

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