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87.ユアン・マクレガー、近くて遠い。

腑抜け状態とはこのことで、しばらく私はYMSがハズレたことが受入れきれず、心ここにあらず状態が続いていた。

授業に行って、復習と予習をするのはもちろんだけど、他になにもしていなかった。

今後どうなるのか全くわからなかった。
日本に帰るとしても、地元で暮らせる気は全くない。
未来のことを考えれば考えるほど、わからなくなるばかり。

それで考えるのもやめて、とにかくボーーーーっとしていた。

ふらふらと、エアコンが効いた涼しいパブに入って、個室みたいな小さなテーブルのスペースで座って、ボーッとしていた。

お客さんもいなくて、私だけだった。
一人で壁にもたれて遠い目をして、ペットボトルの水を飲んでる日本人。

さぞかし、店員さんは不可解に思っただろう、なんどもちらちらと様子を伺いにきた。けど、声はかけられなかった。

ふと、「マリウスってユアン・マクレガーにちょっと似てるよなぁ」と思って、ユアンの画像を検索しだした。

すると。、、

その日は、クリストファーロビン( プーさんの実写版)のワールドプレミアムでロンドンに、出演者とスタッフが集合している日だった。

ユアンがすぐそこにいる!!!すぐそこに!!!!
あのユアン・マクレガーが!!!!

私は、中学生のときに映画ムーラン・ルージュにハマって映画が大好きになった。その関係で主演を務めていたユアン・マクレガーが大好きになった。

スクリーンショット 2020-11-08 19.33.40


中学の英語の授業で、先生が「今日は好きな海外俳優・歌手の人に手紙を書きましょう!」と言って、自由に手紙を書かせてくれる授業があった。
初めて・最初で最後で私は英語の授業をそこでマジメにやって、本気でユアンに、ファンレターを書いた。先生に添削してもらって、清書して先生に提出した。

私はてっきり、それを先生がマジで手紙の相手に送ってくれるもんだと思ってすっごくワクワクしていた。私の声がユアンに届くかも!!!と。

すると、一週間後。
廊下に、英語で手紙を書きました!みたいな張り紙とともに、頑張った子達のファンレターが張り出された・・・・私のユアンへの想いを綴った手紙も、デーンと貼られていた。

えええええええ。
がっかりした。私の本気になった45分返せ!
ていうか何勝手に人の手紙を公開処刑してんだよ!!!!

もっと学校が嫌いになった瞬間だった。

そんな屈辱もあったし、なによりユアンの映画で映画好きが目覚めたので、そんなユアン・マクレガーに直接会えるかも!と思うと驚いてワクワクした。

けどYMSが当たらなかった喪失感のほうが大きすぎて、歩き出せなかった。

それくらい私は落ち込んでいた。
時間がただただ、すぎていく。

ペットボトルの水もなくならない。

店員さんはシフトが変わって別の店員さんになった。
そして、同じように様子を何度も見に来てた。

まだ日は明るいけど8時頃に自宅へ帰ろうとした。

日曜日。バスも地下鉄もストライキで全て止まってしまった。

地下鉄が走っているところまで歩いた。1時間くらい。

ボーッとしすぎて、ほんとに記憶がない。


え?そんなことで?大学受験でも会社の入社試験でもないのに???と思われるかもしれない。でも私にとっては大問題だった。
イギリスは本ッ当に日本から遠い。
海外が好きだとか外国が好きだったら、ここまで落ち込まなかったと思う。だけど、海外にはそんなに興味がない。
イギリスにしか興味がない。イギリスじゃなかったら、意味がない
お前じゃなきゃダメなんだ状態。

大好きな国、大好きな文化、大好きな空気。
それは日本から遠すぎる場所。そして、YMS以外での長期滞在は壁が厚すぎて高すぎる。

それくらい、このビザ抽選は私にとって大切なものだった。
本当にこのころをよく生き抜けたなと思う。

プロポーズまであと440日

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