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医師不足は偏在か絶対数不足か~「加重平均」の罪

東京大学の駒場キャンパスでNPO法人医療制度研究会理事長の本田宏さんの講演を聞きました。

医師不足の原因は絶対数不足である

結論から言うと、医師不足の原因は絶対数不足であると言う主張でした。その主張の根拠として、「OECD加盟国の人口1000人あたりの臨床医数(2017年のデータ)」において日本が単純平均(3.5)から遠い2.4であること。同時に、厚労省が独自の加重平均(2.9)を使用し日本の医師数不足を見えづらくしていることを指摘している。


人口1000人あたりの医師数

OECD (単純)平均より日本は13万人医師不足(人口10万人あたりの医師数)。


講演で使われていたスライドの一部

1番医者数が多い徳島県ですらOECDの単純平均に届いていないことを見ると、医者数は偏在していることが問題であるという前に、絶対数が大きく不足しているのだということが重要であることがわかります。

なぜこうなったのか?→これまで日本は医師数抑制の施策を打ってきたからである。
・1982年:医師数抑制閣議決定
・1983年:医療費亡国論
・1985年:医師国家試験年2回から年1回に減った
・1997年:医学部定員削減閣議決定
・2004年:新卒後研修制度開始

各国の人口当たり医師数を足して、国の数で割るのが単純平均と言って、
加重平均というのは世界の国の医師数の和を加盟国人口を足した数字で割ったものです。

本田さんは「医療体制が違うところでそんな出し方をして意味があるんですか?」と指摘した上で、「だから私はこんなのおかしいと、講演会では「オレンジジュース(果汁)平均」と言っています。」

これまで日本は医師数抑制の施策を打ってきた。
・1982年:医師数抑制閣議決定
・1983年:医療費亡国論
・1985年:医師国家試験年2回から年1回に減った
・1997年:医学部定員削減閣議決定
・2004年:新卒後研修制度開始

(医療費の申請をしている)医師数を減らすことで、医療費支出の抑制をしていくという方向性のため、医師数を増やそうという風潮は起きずらいのではないかとおっしゃっていました。

本田さんは入りの挨拶でもお話の中でもジョークを挟みながら、場の雰囲気を和らげて話してくれた。若い人と講演することができるのが嬉しいとおっしゃっていました。優しい語り口とユーモアのある言葉使いで魅力的な講演でした。

医療崩壊の問題は、よく言われる医師の偏在を根本的な課題だと捉えると、
本質を見誤ってしまう。医師数は絶対数不足であるということを、まず認識してから議論すべきなのだと思いました。

今回私が聞いた公演と同じような内容がネットに公開されていたので、
シェアしときます。


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