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偕老同穴               辞書の生き物 #13

偕老同穴:かいろうどうけつ

 偕老同穴は、「偕(とも)に老い、穴を同じゅうす」と読む漢詩由来です。夫婦が仲むつまじくともに年を取り、死後は同じ墓に葬られるの意味から、夫婦の契りが堅いことのたとえですが、水生生物の海綿の名前として使われています。この海綿は、海底に直立して30cm程度に成長する円筒形でガラス質の網目構造を持ったきれいな生き物ですが、この網目のかごの中で一生を過ごすエビがいます。

ドウケツエビ

 元々このエビがカイロウドウケツと呼ばれていたのですが、のちに宿主である海綿の名前になり、このエビはドウケツエビと改名されました。このエビは幼生期に海綿のかごの中に雌雄で一緒に入り、かごの中で一生を過ごすとされていますが、生活史や海綿との共生関係などは不明です。狭いかごの中でツガイで一生を過ごすのは、まさに偕老同穴を体現していますね。
 ちなみに海綿は英語ではSpomge(スポンジ)で、その柔らかさ、目の細かさから実際にスポンジとして使われています。

比翼連理:ひよくれんり

 最近ではあまり使われないようですが、披露宴での祝辞で「偕老同穴」と並んで引用されていたのが「比翼連理」でしょうか。比翼連理は、白居易の漢詩「長恨歌」に由来する言葉です。安禄山の乱で楊貴妃を失った玄宗皇帝の深い悲しみをうたった詩の一節です。
「在天願作比翼鳥:天に在りては願はくは比翼の鳥となり」
「在地願為連理枝:地に在りては願はくは連理の枝とならんと」
高校の漢文で習いましたが、この一節は読みの調子が好きで今でも覚えています。
 比翼鳥(ひよくのとり)は伝説上の鳥で、雌雄でそれぞれ目と翼が1つずつしかなく、飛ぶときは並ばないと飛べない鳥です。
連理枝(れんりのえだ)は、根っこは2つですが、途中で幹が合体し一つの大木になることで、それぞれ身体が一体化するほど仲睦まじい様子を表しています。

四面楚歌

 個人的趣味ですが、漢文では「愚や愚や汝を如何せん:ぐやぐやなんじをいかんせん」も好きな一節です。これは垓下の詩の一節ですが、虞は項羽の愛人虞姫のことで、四面楚歌に陥った項羽が虞姫に贈った詩で、彼女に何もしてやれないという絶望を歌ったものです。
 いにしえの中国の偉いさんたちは女性を大事に思っていたのですね。


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