ぼっけもん

祖父が陸軍の獣医師で、父と私も獣医師免許を取得しています。日本で親子三代にわたって獣医…

ぼっけもん

祖父が陸軍の獣医師で、父と私も獣医師免許を取得しています。日本で親子三代にわたって獣医師免許を持っている家系は少ないでしょう。小さいころから動物には興味があり、辞書をめくって動物由来の言葉を探すのが好きでした。これまで調べてきた動物由来の言葉を順番に紹介していきたいと思います。

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モズのハヤニエ #395 辞書の生き物

百舌鳥の早贄:モズのハヤニエ 「モズ」はネズミやヘビ、ザリガニなどを捕まえますが、木の枝に止まって食べる習性があります。 「早贄:はやにえ」とは、つかまえた獲物を木の枝やトゲなどに刺しておく行動のことで、刺した状態で食べるというより、将来のエサとしてとっておく貯蔵の意味があるとされていました。 「モズ」が、どこに「やはにえ」したか覚えていればいいのですが、忘れてしまい、そのまま干からびてしまうエサも見かけられます。 そのため、「百舌鳥のハヤニエ」は、忘れやすいことを指し

    • なぜモズは百舌と書く? #394 辞書の生き物

      モズ 野鳥として身近な「モズ」ですが、漢字では「百舌」もしくは「百舌鳥」と書きます。 「百舌鳥」は3文字ですが読みは2文字で「モズ」です。 「百舌」と書きますが、舌の数が多いわけでも、「二枚舌」(うそをつくこと)でもありません。 「モズ」は鳴きまねがうまくて、他の鳥の鳴き声の真似ができるとされており、いろいろな声を出せることから「百舌」の字があてられたようです。 鳴き真似をするのはオスだけで、これはメスにアピールするためだとされており、鳴き真似が上手なオスほど、メスか

      • 辞書の生き物 #393 タコ足配線

        タコ足配線 以前の note でイカの足を表す「ゲソ」を紹介しましたが(note #391)、今回は「ゲソ」にちなんで「タコの足」に関する言葉です。 「タコ足配線」は、テーブルタップなどを使って、1つのコンセントに複数の電気機器を接続することを示す表現です。 コンセントがタコの胴体で、そこにつながっている複数の配線を足に見立ててできた言葉です。 別にタコの足のように8本のコードがつながっていたからできたものではなく、いろんな方向にコードが這い出ている様子からイメージさ

        • 辞書の生き物 #392 タヌキおやじ

          タヌキおやじ 徳川家康のあだ名として知られている「タヌキおやじ」ですが、見た目は穏やかそうでも、実際は意地悪くずる賢い人を表す言葉です。 昔からタヌキは、体型がふっくらとして表情もかわいらしいイメージと違って人をだます動物と考えられてきました。 同じように人をだますと思われてきたキツネは、ほっそりとして顔の表情もかわいいというよりいじわるそうなイメージを持たれていました。 内面のずる賢さと見た目の穏やかさという二面性から「タヌキ」があてられ「タヌキおやじ」の言葉ができ

        モズのハヤニエ #395 辞書の生き物

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        • 辞書の動物たち
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          辞書の生き物 #391 ゲソ

          ゲソ イカの足のことを指す言葉です。 「ゲソのから揚げ」など居酒屋のメニューにあるように、「イカのゲソ」と言わなくても、イカの足のから揚げだとわかるくらいに浸透しています。 ゲソの語源にはいくつかの説がありますが、演芸場や寄席の下足番が、下足札のヒモを10本ずつまとめていたため、足が10本あるイカの足のことを指すようになったという説を支持します。 この説を支持する理由として、タコの足の事はゲソとは呼びません。 呼ばない理由は、タコの足が10本ではなく8本だからだと考え

          辞書の生き物 #391 ゲソ

          辞書の生き物 #390 謹賀新年:ドラゴンボール

          墨絵 高齢になって「年賀状じまい」をする人もいますが、お正月の年賀状はお互いの生存確認も兼ねた?楽しみなものです。 定年後に「墨絵」を習い始めました。筆を持つと背筋が伸びる気がします。 年賀状はハガキに加え、メールやLINEで出していますが、今年は墨絵で干支の「龍」を描いてみました。 文字は「賀正」ではなく、大谷選手にあやかって「賀翔」としました。 龍のように羽ばたける一年にしたいとの思いを込めています。 また、「ドラゴンボール」ならぬ「宝珠:ほうじゅ」を持たせ、

          辞書の生き物 #390 謹賀新年:ドラゴンボール

          辞書の生き物 #389 寄り鯨:よりくじら

          寄り鯨 座礁鯨(ざしょうくじら)とも言われますが、クジラが何らかの原因で浜辺に打ち上げられる現象です。イルカの場合は座礁イルカと呼ばれるようです。 最近、浜辺にクジラやイルカ、あるいはイワシの大群などが打ち上げられるというニュースを耳にする機会が増えた気がします。 イワシなどの小魚は、肉食魚に追われてパニックになって集団で浜辺に押し寄せることがあるようですが、大型のクジラやイルカの場合、エサを追って誤って浅瀬に来たという場合や、潜水艦のソナーの音で迷わされたというケース

          辞書の生き物 #389 寄り鯨:よりくじら

          辞書の生き物 #388 うだつが上がる

          うだつ 出世しないとの意味を持つ「うだつが上がらない」という表現がありますが、この「うだつ」は元々は建築用語で、屋根の棟木(むなぎ)を支える短い柱のことでした。 その後、家と家の間の屋根が接する部分の壁を持ち上げて防火壁のようにした構造物を指すようになりました。 この「うだつ」を設置するには追加の費用が必要で、お金持ちの象徴とされたため、出世することを「うだつが上がる」と言うようになりました。 昨年の干支は「卯:う」で今年は「辰:たつ」の年になります。 「卯」から「辰

          辞書の生き物 #388 うだつが上がる

          辞書の生き物 #387 トンボを切る

          トンボを切る 手をつかずに宙返りすることを表す言葉です。 トンボは4枚の羽をうまく使って、早く飛べるだけでなく、急な方向転換も可能になっています。 急旋回する様子から、宙返りすることを「トンボを切る」、あるいは「トンボ返り」と呼ぶようになりました。 歌舞伎での宙返りは「とんぼ」と略されて使われています。 「トンボ返り」は、目的地に着いたら用事を済ませ、すぐに帰途につくことの意味でも使われます。 昔、会社の出張で、ロサンゼルスまで行き、その日のうちに帰ってくるという

          辞書の生き物 #387 トンボを切る

          辞書の生き物 #386 尻切れトンボ

          尻切れトンボ やりかけた物事が途中で終わってしまい、最後まで続かないことを表す慣用句です。 そのまま読むと、尻尾がちぎれたかわいそうなトンボのように思われますが、ここでのトンボは生き物のトンボではありません。 草履(ぞうり)には足を引っかける鼻緒がありますが、V字型ではなくU字型の鼻緒の物はその形から「トンボ草履」と呼ばれていました。 一方、カカトの部分がない短い草履は「尻切れ草履」と呼ばれていました。 この「トンボ草履」と「尻切れ草履」が混ざって「尻切れトンボ」へ

          辞書の生き物 #386 尻切れトンボ

          辞書の生き物 #385 烏口突起:うこうとっき

          烏口突起:うこうとっき 肩甲骨の上部にある小さく隆起した部分の名前です。 その突き出た形がカラスの嘴(くちばし)のように少し曲がっているところから付けられた呼称です。 実はこの骨の部分の名称は、江戸時代の杉田玄白らが翻訳した「解体新書:かいたいしんしょ」に「烏喙(うかい)突起」として掲載されたのが最初です。 ここで「烏喙:うかい」はカラスの嘴(くちばし)を表しています。 つまり、解体新書の原本「ターヘルアナトミア」で、カラスの嘴状の突起という意味です。 その後、嘴を

          辞書の生き物 #385 烏口突起:うこうとっき

          辞書の生き物 #384 ヒラメ筋

          ヒラメ筋 足の膝下にあり、腓腹筋(ひふくきん)と合わせて「ふくらはぎ」を作っている筋肉で、その端は「アキレス腱」になります。 名前の由来は、その形が魚の「ヒラメ」に似ていることからとのことですが、実はフランス料理の食材になっている「舌平目:シタビラメ」に似ていたからだとか。 そして、この「舌平目」はヒラメではなくカレイの仲間です。 「舌平目筋」もしくは「カレイ筋」と呼ばれていたかもですが、当時の人もヒラメとカレイの区別がつかなかったのかもしれません。 ちなみに「左ヒラ

          辞書の生き物 #384 ヒラメ筋

          辞書の生き物 #383 山鯨:やまくじら

          ヤマクジラ 猪(イノシシ)の肉を示す隠語です。 肉食がタブーとされていた時代に、滋養を高める食材として食べるために別の呼び名が付けられていました。 食感がクジラに似ていたからとされています。 クジラは哺乳類ですが、海の幸として魚と同じ扱いで食べられてきました。 ヤマクジラはイノシシの肉に限らず、獣肉を総称して使われることもあります。

          辞書の生き物 #383 山鯨:やまくじら

          辞書の生き物 #382 バッタもん

          バッタもん 偽物(にせもの)を表す言葉として広く使われていますが、粗悪品や模造品という意味でも使用されます。 元々は古物商が使っていた言葉とされています。 彼らは安売りの露天商として全国をバッタのように飛び回って商売していたため、彼らが扱う商品を「バッタもん」と呼ぶようになったという説があります。 他にも、露天商がハリセンなどを持って、台をバタバタ叩いてたたき売りをする様子に由来するという説もありますが、生き物辞書としては、バッタのように飛び回って商売していた説を採用

          辞書の生き物 #382 バッタもん

          辞書の生き物 #381 蚕食鯨呑:さんしょくげいどん

          蚕食鯨呑 大国が小さな国を方法を問わず侵略することを意味する四字熟語です。 蚕食:さんしょく カイコの幼虫は、桑の葉を端から徐々に食べていきます。 その様子から、市場や国の領域を徐々に浸食・拡大していく様子を表す慣用句になっています。 鯨呑:げいどん クジラが魚などを丸のみにするように、大きなものが小さなものを一飲みにする様を示す言葉です。 「蚕食」と「鯨呑」を合わせて、徐々に浸食する、あるいは、一飲みにするなど、方法を問わず、強大な国が小さな国を侵略することを表

          辞書の生き物 #381 蚕食鯨呑:さんしょくげいどん

          辞書の生き物 #380 竜涎香:りゅうぜんこう

          竜涎香:リュウゼンコウ 前回、抹香鯨(マッコウクジラ)について紹介しましたが(note #379)、その関連で今回は「竜涎香:リュウゼンコウ」です。 「竜涎香」は抹香鯨の腸内にできる石のようなもので香料として珍重されてきました。 古代中国で、この「竜涎香」は良い香りがして貴重でしたが由来がわからず、そのため竜の涎(よだれ)だと考えられていたため、この名前が付いたとされています。 「竜涎香」は、抹香鯨の腸内で、食べたイカなどの消化できなかった部分が結石状に固まったもので

          辞書の生き物 #380 竜涎香:りゅうぜんこう