信号の「進め」は青か緑か 〜教育と正解と解釈〜
今から妙なことを言うかもしれません。ただ、一般論として「妙なこと」には意外に大事なことが隠れていることもあります。
そりゃ「青でしょう」とおっしゃる方がほとんどだと思います。ではここである問いを1つあなたに投げかけます。
いかがでしょう。「いやいや(笑)」とこの答えをバカにした方。本当にそのスタンスで良いのでしょうか。この話、意外と大事なことが含まれていると感じていただけたでしょうか。
確かに私たちは信号の「進め」とは青であると認識しています。自動車の教習所でもそのように教えられたはずです。
このような主張は妥当かもしれません。否定しようがありません。しかし一方で、「緑である」という解釈は間違いなのでしょうか。私だけでしょうか。この解釈も否定しようがないと思っているのは。
蛇足かもしれませんが、少しだけ解説をします。
「青」という答えをする方は、規定・ルール・一般論による答えをすべき問題と解釈しているからそう答えるのです。一方で「緑」という答えをする方は、視覚的かつ直感的に答える色の問題と解釈しているからそう答えるのです。
◯◯でXが正しいと教えられた。だからXが正解だ。それ以外の答えYは間違いである。そう結論づけることは簡単です。とても簡単です。でもこれがいわゆる、世の中で言う、誰もが恐れる、「思考停止」というやつではないのかと思うわけです。
少しだけ、数学の話を。
数学とは思考を学ぶ学問です。少なくとも私はそう思っています。しかし数学を学んだ人の多くが、「学校でXが正しいと教えられた。だからXが正解だ。それ以外の答えYは間違いである」という思想を持って社会に出ていきます。それはそうです。まったく同じ教科書で、数学とはこういうものですと決めつけた内容で授業は行われ、テストではその教えられた通りの答えを発する従順な学生が評価されます。この文章を読んでいるあなたも、
と思われるかもしれません。でも本当にそうでしょうか。
・ピタゴラスが証明したことだからそれ以外は認められない。
・天才ライプニッツが構築した理論なのだからそれが素晴らしいものであり、異なる結論が出るような主張はナンセンスだしライプニッツへの冒涜だ。
・信号の「進め」は青であると教習所で教えられたのだから「緑」という答えは間違いであり、「緑」などと答える人間はおかしい。
もしそんな世の中だとしたら、私はこのことに恐怖を覚えるのです。
歴史の書物を読んだり詳しい人から話を聞くと「諸説ある」という表現が使われることがあります。こういう解釈もあるけれど、こういう解釈もある。そういうことだと思います。ならば数学にもそれがあって良いのではないでしょうか。
ただし数学はあくまで論理です。ある解釈を前提としたとき、そこからの議論は論理的でなければなりません。裏を返せば、前提が違えば論理展開も結論もすべて違います。きっと数学にもそんな作法があるはずですが、残念ながらそのことに自覚的な方が少ないように思えてなりません。
同じことをもういちど表現します。
◯◯でXが正しいと教えられた。だからXが正解だ。それ以外の答えYは間違いである。そう結論づけることは簡単です。とても簡単です。でもこれがいわゆる、世の中で言う、誰もが恐れる、「思考停止」というやつではないのかと思うわけです。
数学とは思考を学ぶ学問です。にもかかわらず思考停止を生んでいるとするなら、これは大きな矛盾かもしれません。ご存知の方も多いと思いますが、数学とは矛盾を許さない世界で展開されます。ならばこの矛盾の存在は、、、
まったくもって数学的ではない
ということになってしまいます。
そんなことを誰かに言われないためにも、数学を指導する方々にはまず「正解」の前に「解釈」があることを教えてあげて欲しいと思います。「正解」は1つかもしれませんが、「解釈」は自由であり無数にあります。
そういうスタンスを許し、いろんな解釈を赦すことが学ぶこと、考えることの楽しさではなかろうかと思いますが、いかが思われますでしょうか。
私はビジネス数学を専門とし、企業人・アスリート・学校教員などの人材育成をサポートする専門家です。言い換えれば、「いい大人」がいいパフォーマンスを発揮するためのサポートを数学的アプローチで行なっています。
そんな現場にいると、上述の「思考停止」な大人にたくさん出会います。もちろん私がすべきこともたくさんありますが、もっと早い段階で、彼らが子供の時から、もっと違った数学の授業や教育を受けることができていたらと思ってしまうことも事実です。
教育とはバトンリレーだと思います。
小学校→中学校→高校→高等教育機関→社会
それぞれの場で先生が適切な仕事をし、次のステージの先生にバトンをつなぐ。それが理想の教育であろうと。あまり理想を語るのは「ウザい」かもしれませんが、それでもやはり、そういうものだと思うわけです。
私もまだまだ足りません。頑張ります。だからこの記事を最後までお読みくださった教育従事者の皆様も。バトンリレー、頑張ってやってみませんか。
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