大学生が算数を学ぶ理由 〜東京家政大学・基礎学力養成講座〜
もう10年近くになるでしょうか。今年も東京家政大学さんのキャリア支援講座を担当。就活で対応するSPI検査やその先の社会人としての数的リテラシー育成を目的として開講されています。まさにビジネス数学の範囲でもあり、基礎を丁寧に指導することが求められます。
このブログをお読みの方の中には、高等教育機関などで指導をしている教員や教育者もいるかもしれません。
そこでひとつ問いです。
このような講座で大切なことは、いったいなんでしょうか。
もちろん唯一の正解はありません。しかし、何を正解としているかがその教育者の価値と能力をはっきりさせることも事実でしょう。私の答えはこうです。
「学ぶ理由づけができるかどうか」
極めて当たり前のことと思われるかもしれません。しかしここで大事なのは、「大学生に算数レベルの数的思考を指導するにあたり学ぶ理由づけをどうするか」です。
これが子供を相手にしているのであれば、「テストでいい点数を取るため」でもいいかもしれません。「将来こんなふうに役立つよ」なんて言ったところで、子供には理解できるわけがありませんから。では大学生にはどうしたら? 「就活のため」という理由づけが正しいのでしょうか。私は違うと思っていて。そのもっと先にある何かのために学ぶものです。
私はこのような講義においては、「学ぶ理由づけ」がすべてだと思っています。
例えば大学生に損益計算を学ばせるとします。私はいきなり損益計算の話などしません。冒頭は「お金」の話をすることでしょう。
お金は好きか。
お金は大事だと思うか。
YESならばそれはなぜか。
お金がない人はどんな人か?
お金に嫌われる生き方とは何か?
・・・・・・・
こんな話をすることで、大学生には「お金を扱うことの本質」を考えてもらいます。お金を雑に扱っている人のもとに、お金が集まるわけがありません。お金を雑に扱う人の財布は汚いけれど、お金とうまく付き合っている人の財布は実に綺麗です。そういうものだと思います。お金を雑に扱うとは、お金を丁寧に扱わないことです。丁寧に扱わない人は、四則演算レベルのお金の計算も適当です。お金の計算も適当とは、そもそもお金を大切に思っていない何よりの証拠でしょう。お金と仲良くしたいのなら、お金は丁寧に扱うべき。知性ある大人であれば、これが決して子供騙しの話ではないことを知っているはずです。
このような話をした上で「だから損益計算はできるようになっておこう」と導くことが教育者の仕事です。「就活の試験に出るから学んでおこう」ではあまりに寂しいですよね。この仕事は、学ぶ理由づけができるかどうかにかかっています。
今年も大学から瓦煎餅をいただきました(笑)。
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深沢真太郎
ビジネス数学教育家。数学的なビジネスパーソンを育成する「ビジネス数学」を提唱し、述べ1万人以上を指導してきた教育の第一人者。世界中の学校と企業で「ビジネス数学」が学べる世の中にすることを使命としている。日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。予備校講師から外資系企業の管理職などを経てビジネス研修講師として独立。大手企業・プロ野球球団・トップアスリートなどの教育研修を手がけ、一部企業とはアドバイザリー契約を締結し人材開発のサポートを行っている。さらにSMBC・三菱UFJ・みずほ・早稲田大学・産業能率大学などと提携し講座を提供。2018年には「ビジネス数学インストラクター制度」を立ち上げ、指導者育成にも従事している。テレビ番組の監修やラジオ番組のニュースコメンテーターなどメディア出演も多数。著作は国内累計25万部超。実用書のほか作家として小説も発表しており、多くのビジネスパーソンに読まれている。
BMコンサルティング株式会社 代表取締役
一般社団法人日本ビジネス数学協会 代表理事
国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者
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