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最近の記事

前半はつまらない。

 前半はつまらない。  確かに日常から逃れ、興奮と感動を期待して映画を観に行く。  躍動感や疾走感あふれるストーリーや映像と強いメッセージが共存する宮崎駿の作品は、その期待を背負うだろう。  冒頭の眞人が群衆を抜け走るシーンは、予想を超えた表現である。  しかし構成や演技など基本的な手法を丁寧にカットに落とし込むことで観客の心掴むいつもの宮崎駿とは違い、アニメ表現で魅せる手法に違和感が残る。  その違和感は、不安となり、そこから物語はいつものように走り出さない。  フ

    • なぜ鳥のフンは描かれたのか

       この作品には青鷺、ペリカン、インコが登場する。  そしてその鳥たちのフンがリアルに、汚く、描かれている。  物語に意味のない汚物は、観客に不快感を与えるのみであり、作品の価値を貶めかねない。  だとすれば、描かれたのには何か理由があるはずである。  鳥のフンは何を意味するのだろうか  青鷺が塔に入り込むシーンに嫌悪感と違和感が残る。  何故なら、穴の壁には青鷺の糞尿がこびりついてたからだ。  必要以上に多く、汚く、リアルだ。  そもそもアニメでは省略され、描かれないは

      • なぜ眞人は夏子を受け入れなかったのか

         夏子に対し、距離をとる眞人。母の死を過去のものとして受け入れられない眞人の悲しみは理解できるが、なぜ夏子に優しさを少しだけでも向けることができなかったのだろうか。  眞人が夏子と距離をとりたがっているのは、物語を見ればわかる。それだけで眞人の心情に浸り、物語を体験できる人は素晴らしい能力を持っている。  しかし私にはその能力はない。観察し、考え、理解する過程で、不意に登場人物に共感し、物語に心が押し出され発露させられる。  眞人が夏子を嫌っているから冷たくしているという説

        • カリオストロの城 考察③

          キャラの向きと意味的方向性  カリオストロの城の計算された構成をキャラの向きで考察する。 キャラクターの配置と向き  基本的にキャラクターは左向きに配置され移動も左に移動する。クラリスはほとんど左向きで描かれているし、カーチェイスも屋根を跳ぶシーンも左向きだ。  なぜ左向きにした方が良いのかは諸説あるので詳細は省くが、人物でなくとも、魚や車など何か絵を描く時は左向きに書く人が多い。だからといってこの作品では描きやすさだけで左向きにしている訳ではない。  峰不二子が城の中

        前半はつまらない。

          カリオストロの城 考察②

          先祖の財宝ローマ遺跡  水没するローマ遺跡がカリオストロ家の財宝になる過程を考察。 ローマ遺跡が財宝となるまで AD400年ごろ  現在のカリオストロ公国にあったローマ都市はゴート族と時には手を組み、時には争っていた。ローマ帝国が衰退すると、そのローマ都市は撤退時に水門を閉じ、都市を水没させる。ローマの文化を取り入れたゴート族の親ローマ派の一族が、その秘密を受け継ぎ、そこにローマ式水道を作り領土とした。 AD1517年ごろ  ゴート族を先祖に持つカリオストロ家は大公家

          カリオストロの城 考察②

          カリオストロの城 考察①

          ルパンの目的  流れるような展開でストーリーはすんなり入ってくるが、実はルパンの目的は変化しているのだ。それを考える事で映画の解像度を上げてみる。 目的の推移  国営カジノで盗んだ金が偽札であるゴート札だと気付くルパン。  まだ若く売り出し中の頃、誰も成功した事の無いゴート札の秘密を探ろうとしたが失敗した過去を思い出す。  ルパンは前祝いにゴート札をばら撒き、青春時代の雪辱を晴らす事を決意した。  出回り先のカジノなどではなく、ゴート札の震源地であるカリオストロ城から、

          カリオストロの城 考察①

          なぜ夏子は塔に行ったのか

           実世界を離れ、塔の世界の産屋で出産する事を選択する夏子。  夏子がそこに至る経緯や心情が作中では詳細に描かれていない。  なぜ夏子は塔に行ったのだろうか。  夏子の赤ん坊を後継者にする説や、眞人を塔に誘い込むための、おとりにした説を考えない。  確かにロジックとしては面白く、物語が分かりやすくなる。  だが、悪意のない世界を望む大叔父が、そのような手段を選ぶとは思えない。  なにより、産屋で夏子が言った大嫌いという言葉の重さが失われる。  塔に何らかの逃げ道があることを

          なぜ夏子は塔に行ったのか

          君たちはどう生きるか 感想/シーン考察メモ

          君たちはどう生きるか 7月18日  評価 アートを超えた、ただのエンタメ おもしろい 最高傑作 子供に見せるべき作品で子供の頃に見たかった作品 映画から受け取ったメッセージ  世界に善悪は無く、自然は食物連鎖で成り立ち、人間の営みもまたその連鎖の中にある。  しかし人間は奪われる事で悪意を生み出し、その悪意の連鎖で徐々に世界を侵している。  汚く美しいこの世界の摂理から人間は逃れることはできない。友を作り繋がり伝える事が唯一の人間のみが持つ摂理外の連鎖である。  人間

          君たちはどう生きるか 感想/シーン考察メモ