カリオストロの城 考察③
キャラの向きと意味的方向性
カリオストロの城の計算された構成をキャラの向きで考察する。
キャラクターの配置と向き
基本的にキャラクターは左向きに配置され移動も左に移動する。クラリスはほとんど左向きで描かれているし、カーチェイスも屋根を跳ぶシーンも左向きだ。
なぜ左向きにした方が良いのかは諸説あるので詳細は省くが、人物でなくとも、魚や車など何か絵を描く時は左向きに書く人が多い。だからといってこの作品では描きやすさだけで左向きにしている訳ではない。
峰不二子が城の中を抜け、人物絵画の目から覗くシーンの不二子は右に向かって城を抜ける。これは怪しい動きをしていることを表現するため、敢えて逆方向に描いている。
太公の屋敷跡をルパンが昔を思い出しながら歩くシーンも、ルパンの思考が過去に遡っていることを右に向かって歩かせて表現している。
基本方向を揃える事で逆方向に意味を持たせているのだ。
キャラの意味的方向性
もうひとつキャラの向きで注目すべき事は、キャラ同士が対面する場合だ。
伯爵とクラリスが塔で対峙するシーンでは、伯爵が右向き、クラリスが左向きで描かれる。基本的に悪役や脇役を左に配置し、重要な人物を左向きにするため右に配置している。その前のシーンではルパンが脇役の位置に配置されており、空間的な位置関係の整合性も守りつつ、クラリスを軸としたストーリーがすんなり入ってくる。
方向すり替え
方向を揃える事は、実写では現実であるがゆえの制約があり大変なのだが、アニメではセットや太陽の方向やアングルが割と自由が効くので比較的融通が効く。だが位置関係の兼ね合いもあるため難しい場合もある。
結婚式から花嫁を盗んでジップラインで塔に移動し、次元と五ェ門がカゲたちを迎え撃つシーンでは、左に向かって逃げるルパンとクラリスを守るために次元と五ェ門が右に向かって応戦する。そこで塔を飛び降りる五ェ門を真ん中で描き、斬られるカゲたちのカットをはさむことで、今宵の斬鉄剣はひと味違うぞ、と決めセリフを左向きで五ェ門に言わせている。
流れるようなカット割である為、位置関係が変わった事は観客に違和感として残らない。
最後に
専門用語ではイマジナリーラインと言うが、最近の映画などでは方向性を気にしない事がカッコいいと考えているように見受けられる。確かに方向を変えた画を入れる事でテンポがよくなりリズムに抑揚は出る。
しかし方向性だけに限らず、きちんとベースを守ってから崩す事で初めて効果が最大限に発揮されるのだ。気にしない事と、計算して崩す事は全く違う。構成能力の無さや、準備不足を正当化してはならい。
完
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