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「NFTは流動性が低く積極的な投資には向いていない」NFT情報コレクター・miin氏

miin氏 プロフィール

2021年よりNFTについてXやnoteで情報発信している。様々なNFTプロジェクトの解説のほか、インタビューも行っている。https://note.com/miin_nft

取材実施日

2024年4月10日

「NFTこそがこれまで実現しづらかった暗号資産の実生活との繋がりを実現する」と感動して発信を始める

ーーご経歴について教えてください。

2017年から国内の取引所で暗号資産のレバレッジ取引を始めたのが最初で、当時から暗号資産に魅かれてはいたものの、実生活との繋がりが感じられず、ある種の物足りなさを感じていました。

それで2021年の春にNFTを知った時、「NFTこそがこれまで実現しづらかった暗号資産の実生活との繋がりを実現する」と感動して、XでNFTに関するニュースを発信する活動を始めました。

普段はエンタメ系のネット企業でコンテンツのプロデュースや新規事業の担当として働いていますが、本業でもNFTを扱う機会があれば良いなと考えています。

ーーNFTの取引高はピーク時に比べ大きく減少していますが、miinさんの体感としてはいかがでしょうか。

2022年のピーク時と比べると取引高は約10分の1以下なので、減少していることは間違いありません。

2022年の取引量を牽引していたのが、イーサリアムのPFPに関するプロジェクトでしたが、PFPプロジェクトの主要プロジェクトであるCryptoPunksやBAYCなどのフロアプライスが激減したことも要因のひとつだと考えています。

▼Ethereum上のNFTのマーケットプレイスの取引高

Ethereum NFT Marketplace Monthly Volume – THE BLOCK

プロジェクトの実態ではなく雰囲気で評価されていた傾向が強い

ーー取引高が減少した理由についてmiinさんの考えを教えてください。

やはり、これまでが過剰に評価されすぎていたのだと思います。

以前のバブル時には、「メタバースで、僕たちのキャラクターをアバターにできます」「コミュニティを作って、みんなでこのキャラクターをブランド化して盛り上げていきましょう」とマーケット全体に勢いがあり、実際、様々なプロジェクトが生まれていました。

しかし、それらのプロジェクトの多くはXのフォロワー数やプロモーションビデオのかっこよさなど、プロジェクトの実態ではなく雰囲気で評価されていた傾向が強いです。

数人の米国の若者が始めたプロジェクトに数億円が集まり話題となったこともありましたが、当時のプロジェクトの多くは後から考えると実現不可能なものでした。NFTの供給過多も相まって、ほとんど破綻してしまいましたね。

当然の結果だったと思います。

NFT保有者が商用利用権を持ち、商品化する権利を運営側にライセンス委託し、商品の店舗での売上の一部が還元されるPudgy Penguins

ーー特徴的なNFTプロジェクトについて教えてください。

例えば、Pudgy Penguinsという8,888体限定のペンギン画像を販売したNFTがあります。

このPudgy PenguinsのNFT保有者は「Pudgy Penguinsのぬいぐるみを実店舗で販売しPudgy Penguinsを世界的IPブランドに成長させる」プロジェクトにも参加することができます。

実際、Pudgy Penguinsのぬいぐるみは全米のウォルマートやAmazonで2023年より販売が開始されています。

参考:アメリカ大手ウォルマートでPudgy PenguinsのPudgy Toysが販売 – CRYPTO TIMES

Pudgy Penguinsの創設者は小売業やECにかなり強みを持った人物で、流通もうまくいっているといえます。

現実世界での認知も広がれば、このブランドの価値も高まっていくでしょう。

また、Pudgy PenguinsではNFT保有者が商用利用権を持ち、商品化する権利を運営側にライセンス委託し、商品の店舗での販売売上の一部が還元されるという仕組みになっています。

これらの仕組みによりPudgy PenguinsはNFTのなかでも高い人気を維持しており、フロアプライスは2024年4月現在で12.85イーサリアムと高額です。

人気のあるNFTプロジェクトとそうでないプロジェクトの違い

ーーBAYCやPudgy Penguinsのような人気のプロジェクトとそうでないプロジェクトの特徴的な違いはありますか。

プロジェクトがスタートした時期が価格に反映されていると見ています。

BAYCとPudgy Penguinsは、それぞれ2021年の4月と7月に始まった、割と古いプロジェクトです。

NFTバブルに乗れたことに加え、当時は二次流通の手数料が販売側に入るシステムもあり、運営側がかなりのお金を集められたことも大きかったと思います。

集めた資金に加えてVCからの調達も実現した結果、よりプロジェクトが膨らみ、NFT愛好家からの信用度も増していきました。

プロジェクト全体の価値が高まっていくと、プロジェクトのフォロワーも増え、結果的に価格の上昇に繋がります。

一方、人気のないプロジェクトは、最初に人を集めるステートメントが弱かったり、タイミングが悪かったり、販売するサイトやスマートコントラクトの演出がイケてなかったりと、市場から信頼を得られないケースが多く見受けられます。

2021年や2022年は、NFTの供給量が需要より少なかったため、「将来はメタバースで土地を買ってそこでコミュニティを作っていこう」といった、目的があやふやなプロジェクトでも売れましたが、今では通用しません。

ただ、ブームから冷め、プロジェクトの淘汰が進んだことで、現在も生き残っているプロジェクトや過去のNFTを研究した新しいプロジェクトについてはある程度の成果は期待できるようになっています。

購入側の目も肥えてきたので、掲げていた目標の実現可能性の高いプロジェクトが増えてきたと思いますね。

取引高については2021年以上の盛り上がりは起こらないはず

ーーCryptoPunksやBAYC、Pudgy PenguinsのNFTの価格は、十年後や二十年後上昇していると思いますか。

暗号資産全体、もしくはビットコインの価格が上昇しているかによるでしょう。

あくまでも、NFTはブロックチェーンの上に乗っかっているもので、基盤である暗号資産、ブロックチェーンが世の中に浸透し、資産として受け入れられなければ、NFTプロジェクトの価値も高まらないと思います。

ーー数年のスパンではいかがでしょうか。NFTで2021年のブームを超える盛り上がりはあると思いますか。

取引高については、2021年以上の盛り上がりは起こらないと思います。

当時は暗号資産に無関心な人も引き込むほどのパワーがありましたが、それはNFTの創世記という新鮮さがあったからでしょう。

ただ、今後オンチェーンの取引や活動の証明としてNFTを使用する文化が広まる可能性は高く、ユニークユーザー数や活用されるシーンは増えると予想しています。

「99%のNFTプロジェクトがゼロになる」は本当だったか

ーー実業家のゲイリー・ヴェイナチャック氏が「99%のNFTプロジェクトがゼロになる」と発言していますが、miinさんも同意見でしょうか。

彼の発言はちょうどNFTのブームがピークであった2022年のものですが、当時は杜撰なプロジェクト、投資家に約束を果たさないプロジェクトが多く、氏の主張には私自身も同意です。

ただ、氏があのように発言しても、ほとんどのNFT保有者は「自分が投資したプロジェクトだけは大丈夫」と思っていたでしょう。

「残りの1%に選ばれるから問題ない」と信じていたと思います。

しかし実際、99%のNFTの価格は氏の予言どおりゼロまではいかないものの大幅に下落しました。

バブルの時に革命とまでもてはやされたプロジェクトも、いまでは過剰な評価だったと言わざるを得ません。

しかし、今後生まれてくるプロジェクトは、これまで無価値となったプロジェクトよりも無価値になる可能性は低いと思います。

NFTを触る人たちの知識や理解度も上がってきており、運営者側にとっても利用しやすいツールやプロトコルが発達しているため、プロジェクトの中身に集中することできる環境が生まれています。ガス代等のコストについてもL2の発達によって大きく解消されました。

このような進化を続けることで、まともなプロジェクトが生まれやすい土壌は整いつつあると感じますね。

参考:「NFT市場はなぜ崩壊したのか?」Zeneca氏のニュースレターより|miin | NFT情報コレクター

ICOブームと同じで、十分にビジョンが検証されずに人が集まり盛り上がってしまった

ーー同氏の「ほとんどのNFTプロジェクトは誇大広告、ポンジスキームとして構築されている」についてはいかがでしょうか。

アルトコインと比較すると手軽に発行できるNFTプロジェクトの方がより雰囲気だけの広告が多かったと思います。

「いつかメタバースで、遊べるようになる」「このコミュニティでブランドを広げていこう」という話は理解できますが、具体的なイメージは湧いてきません。

また、アートを隠れ蓑にして、本来以上の価格で売買されていたものも多いと感じています。

そういう意味では、雰囲気だけで売っていたと指摘されても否定できないでしょう。

ーーユーザーもそういった広告に集まりやすいユーザーが多かったのでしょうか。

2017年にアルトコイン、ICOがブームだったときも、誇大広告とまでは言いませんが実現性の薄いビジョンをバーンと掲げて、それにワーッと人が集まっていました。

誰もそのビジョンの中身を検証しないところは、昔のNFTと似ています。

NFTだけの問題ではなく、暗号資産自体がそういった歴史を繰り返しがちだと感じています。

日本人だけをターゲットにしたコミュニティでは限界があるように感じる

ーー国内と海外でNFTにおける特徴的な違いがあれば教えてください。

以前、noteで日本発NFTの取引量について扱いましたが、多いときでも日本発NFTの取引量は世界全体のなかでたったの4%でした。

参考:数値でみる日本発NFTコレクションと世界の市場|miin | NFT情報コレクター

初期には、「日本はIPがたくさんあるからNFTが得意なはず」と言われていましたが、実際は世界と比べて大きな差が出ています。

その理由のひとつは、日本のNFTは日本人だけが集まりやすいからです。

NFTはコミュニティ作りに注力する傾向がありますが、日本人だけのコミュニティでは、どうしても流通量が低くなってしまいます。

今後は国ごとに独自のNFTが盛り上がることもあるかもしれませんが、現状はグローバルでもNFTプロジェクトの取引高は小さいため、日本人だけをターゲットにしたコミュニティでは限界があるように感じます。

個人的には日本発NFTプロジェクトの売買はしていません。

もちろん日本発NFTのほうが情報がとりやすく、魅力があって値上がりも期待できるプロジェクトもあるのですが、売買する際にXのタイムラインで交流している方の顔が浮かんでしまうようなプロジェクトは避けたい、という好みの問題ですが。

「NFTプロジェクト」ではなく、アートやイラストをNFT化した作品は消費として購入しています。

投資の視点でNFTを見たときに、どのような魅力や投資機会があるか

ーー投資の視点でNFTを見たときに、どのような魅力や投資機会があるか教えてください。

あくまで私はNFTの投資家ではないため購入をお勧めすることはありませんが、あえてお答えすると二つあります

一つは稀にローリスクハイリターンが取りやすい状況が生まれる点です。

NFTは発行数が限定されており、値幅が大きく動きやすいです。バブル期は0.1イーサリアムで購入した3日後に10イーサリアムで売れたといったケースも珍しくありませんでした。

二つ目は一次流通の販売に関してです。

トークンを発行する場合にはICOやセールがありますが、NFTプロジェクトの多くは販売サイトに直接メタマスクを繋いで購入します。

その際に、ガス代を積んでmintすることができたり、システムの穴をついてFrontPageが更新される前に、直接コントラクトを叩いてmintできることなどがあります。

技術的な介入要素が多い点は魅力かもしれないですね。

二次創作の投稿などプロジェクトへのコミットによりホワイトリストを得る機会がある

ーーローリスクハイリターンのNFTプロジェクトの探し方があれば教えてください。

NFTはインフルエンサーの影響が強い業界なので、インフルエンサーや初期からのコレクターのアカウントの動きを注視すべきでしょう。

具体的には、彼らのXでの発言を見るだけでなく、NFT購入者限定のDiscordなどでXやプレスリリースで発表される前の情報を見つける、ということも重要です。

一時期は新規の注目されているNFTを買うためにはホワイトリストを得る必要があり、そのためには、プロジェクトの初期からDiscordに入ったり、そのNFTの二次創作を投稿したりと、貢献度を示す必要がありました。

資金力がなく、インフルエンサーでなくても、プロジェクトにコミットすることでホワイトリストを得る機会は提供されています。

そういう意味では、トレードやエアドロ活動とはまた別の魅力があるともいえるかもしれません。

NFTは流動性が低く積極的な投資には向いていない

ーー投資の観点で今後NFT取引をしてみようと考えている人に向けて、気をつけた方がいいことがあれば教えてください。

NFTは流動性が低く、積極的な投資には向いていないと思います。

バブルでは何を買っても価格が上昇するという特異な状況がありましたが、現在は取引高も少なく、投資のリターンは期待しづらいです。

NFTのユーザーも、短期的な値上がりを期待して買う層は以前より減っていると思います。

自分が保有したNFTプロジェクトが将来盛り上がって価格が上昇することを期待したり、持っていること自体が楽しかったりといったインセンティブで購入している人たちが多いと感じます。

ーーNFTにおけるまだ織り込まれていないリスクや問題があれば教えてください。

「まだマーケットに織り込まれていないリスクや問題」というか、以前からリスクだと指摘されていたことが実際に顕在化してきたというのはあると思います。

例えば、当初はNFTを購入すると発行者にロイヤリティが入る仕組みがありましたが、いまはそうではありません。

例えば、以前はA氏からB氏へNFTが二次流通で取引された場合、NFTの発行元のプロジェクト側に売買手数料、例えば3%が還元される仕組みがありました。

しかしロイヤリティがゼロの新規マーケットプレイスができてユーザーがそこに流れてしまったことにより、「二次流通の手数料を発行元に還元することで持続可能性を保つ」という当初の幻想は崩れてしまいました。

ーー最後に読者へメッセージをお願いします。

NFTが今後盛り上がっていくかは、暗号資産やブロックチェーン界隈自体の盛り上がりによると思います。

今後は、バブルのような熱狂的な盛り上がりは起こらないと思いますが、NFTの新しい使われ方という観点で見ると、様々な可能性がまだあると思いますし、そういう方向性へ向かっていくと思います。

また、この2年間でブロックチェーン側のインフラの発展や、ウォレットの進化、暗号資産を意識させないソリューションの登場がありました。

Webサービスに例えると、ブロックチェーン技術はウェブサイトそのものであり、NFTはそのサイトに掲載されるコンテンツです。

サイトの機能が向上したことで、コンテンツも多くの人に広がりやすくなったと言えます。

個人的にはNFTは他の暗号資産と比べると、現実世界と繋がりやすいツールで興味を持ちやすい領域だと思います。

だからこそ、まだできることはあるのではと思っています。

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