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パンデミック条約やIHR改正のカギを握るステークホルダーとは? 

2023年11月15日、「超党派WCH議員連盟(仮称)設立総会」が参議院議員会館で開催されました。国会議員が党派を超えて、WHOのパンデミック条約やIHR改正の危険性について声をあげようという連盟です。外務省と厚労省から担当部署の職員も参加していましたが、テレビなどの大手メディアでは報じられていません。国民にとって重要なことなのに、なぜ報じないのでしょうか。


IHR改正とパンデミック条約

IHR改正とパンデミック条約については、以前の記事に書きました。

国民の健康や生活に関わる重要なことを、国民が選んでもいない人たちが勝手に決めることが大きな問題です。

それに対して声をあげる国会議員たちが超党派議員連盟の設立総会を開いたのに、なぜメディアは報じないのでしょうか。全党から議員が参加しているのに、報じないのはとても不自然です。スポンサーや株主にとって、不都合なことがあるということなのでしょうか。
追記:第2回の総会では、共産党の議員は参加していないとの説明がありました。

2022年5月のIHR改正は拒否するのか?

総会では、議員から厚労省や外務省への質疑もありましたが、それに対する答弁が長すぎるうえに、質問に対してずらした答えをしているので、まだまだわからないことだらけです。それでも、わかったことがいくつかあったので、公開されている動画から掘り起こしました。何回かに分けて取り上げる予定です。

まず、期限(11月末)が迫っている「2022年5月に採択された改正(※)への拒否」については、下記のような説明がありました。
※「改正の拒否または留保の期間」が18ヶ月から10ヶ月に短縮され、改正の施行が24ヶ月後から12ヶ月後に短縮。

・厚生労働省国際課で、鋭意検討中。外務省とも相談しながら進めている。
・新型コロナのパンデミックの経験を踏まえて、できる限り迅速に世界が次の健康危機に対応できるということを考えている。

この感じでは、「拒否」の可能性は低いかもしれません。

非公式会合に参加しているのは誰なのか?

質疑時間の冒頭に、非公式会合についての質問がありました。厚労省職員の答弁が長すぎるので、ポイントだけまとめました。

阿部議員:
・IHR改正の第1回から10回の非公式協議となっているが、どんなメンバーが協議をしたのか?
・非公式ではあっても非公開ではないのか? 非公開でないならば、どのような形で見ることができるのか?

厚生労働省国際課:
・非公式会合の参加者については、基本的にWHOの加国あるいはWHOと正式な関係を結んでいるステークホルダー(利害関係者)が参加できる。
・非公式会合は、公開されていない。
・正式な会議だと深いところまで意見を述べることができないので、非公式会合を定期的に開催することで、意見のギャップやお互いの見解について理解を深めて、なるべく合意に持っていく。

他議員からの追加質問:
・ステークホルダーの中に製薬企業が入っているか?

厚生労働省国際課:
・全てのステークホルダーを把握していない。
・個別の企業がステークホルダーとして登録されているというより、国際的な製薬企業の団体が参加していることが多い。先進国だけでなく、途上国を代表するようなワクチンの団体などが登録されているという認識。

阿部議員:
・私たちがステークホルダーを知ることはできるのか?

厚生労働省国際課:
・WHOと正式な関係を結んでいるステークホルダーについては、WHOのホームページで確認できる。
・非公式会合は公開されないが、議論の内容は必ず正式な会合に報告される必要がある。報告を持って全加盟国としてどのように対応していくかが議論されるので、あくまでも補助的な会合という認識。

というわけで、気になるのがステークホルダーです。そもそも、利害関係者が会合に参加すること自体問題であり、それも指摘されていたのでそこはぜひ動画でご確認ください。

ステークホルダーのリストはWHOのホームページにあると言われたので調べてみたのですが、とてもわかりにくかったです。

WHOのステークホルダー

下記は、パンデミック条約について話し合う第7回INB(政府間交渉会議)に関するページです。INBの第7回会議が2023年11月6~10日に開催されることや、関連利害関係者のリストがありました。開会・閉会セッションや会合の報告セッションの様子は、動画で公開されているようです。

関連利害関係者のリスト
Modalities of engagement for relevant stakeholders


https://apps.who.int/gb/inb/pdf_files/inb6/A_INB6_6-en.pdf


https://apps.who.int/gb/inb/pdf_files/inb6/A_INB6_6-en.pdf


https://apps.who.int/gb/inb/pdf_files/inb6/A_INB6_6-en.pdf


注目すべきは、Annex Cだと思います。

https://apps.who.int/gb/inb/pdf_files/inb6/A_INB6_6-en.pdf

WHOと公式関係にある非国家関係者のリストが、下記のページからダウンロードできます。

218の非国家主体とのことで、英語とフランス語で表記が違うものがあるから2行になっているようです。以下、ほんの一例をあげておきます。

3English/French list of 218 non-State actors in official relations with WHO reflecting decisions of the 152nd session of the Executive Board, February 2023
3English/French list of 218 non-State actors in official relations with WHO reflecting decisions of the 152nd session of the Executive Board, February 2023

ぜひ、ご自身でダウンロードしてみてください!

最初のリストに戻りますが、AnnexEに「Japan CSO Network for Global Health」が入っていました。

https://apps.who.int/gb/inb/pdf_files/inb6/A_INB6_6-en.pdf
https://apps.who.int/gb/inb/pdf_files/inb6/A_INB6_6-en.pdf

下記のページによると、国内では「GII/IDI懇談会NGO連絡会」と呼ばれているようです。

国際保健に取り組むNGO・市民社会のネットワークである「GII/IDI懇談会NGO連絡会」(代表:稲場雅紀・アフリカ日本協議会共同代表)は、パンデミック条約交渉のステークホルダーの一つである「アネックスE団体」にノミネートされ、同交渉について直接、問題提起をすることが可能となりました。

https://ajf.gr.jp/globalhealth/fairaccess/cso-video/

「直接、問題提起をすることが可能」とのことで、非常に重要な役割を果たしていると思われます。

代表の稲葉氏は「アフリカ日本協議会」の共同代表でもあるようで、「日本アフリカ協会」のサイトには、パンデミック条約の交渉について具体的なことが書かれていました!

2021年12月28日


2022年7月31日

2022年11月23日


2023年2月23日

2023年5月7日


2023年6月4日

この「起草グループ」は、昨年12月に開催された第3回INBで、その構成やあり方が定められたが、基本、WHO加盟国とオブザーバー(Holy See(=ヴァティカン)とパレスチナ)および地域共同体等がメンバーとなり、詳細な文言調整などの交渉が行われる会議体となっている。

https://ajf.gr.jp/covid19_04jun2023/


2023年7月1日

2023年10月28日

下記のページに、加盟国やステークホルダーの「交渉テキスト」(10月16日に送付)に対する反応が書かれています。以下、一部引用です。

交渉の進展を注意深く見守ってきた市民社会団体の多くが、内容の分析に時間をかけ、公式の声明などの発表に踏み切っていない中で、ひとり迅速に、なおかつ極めて破壊的な声明を出したのが国際製薬団体協会(IFPMA)である。IFPMAは交渉テキスト送付の翌日の17日に「うまく行ったことは維持し、うまく行かなかったことに対処する必要がある」と題する声明で、特に「病原体情報へのアクセスと利益配分」について、激しい攻撃を加えた。IFPMAはこの制度によって、研究者が病原体情報にアクセスするのが遅れ、これがワクチンや治療薬の開発の遅れにつながると主張している。声明の後半でIFPMAのトーマス・クエニ事務局長は「今回加盟国に配布されたような悪いパンデミック条約なら、パンデミック条約などない方がマシである」と、口を極めて非難した。

https://ajf.gr.jp/covid19_28oct2023/

国際保健政策の最新情報を伝えるインターネットメディア「保健政策ウォッチ」(Health Policy Watch)は、交渉テキストに関する記事において、ドイツのカール・ローターバッハ保健大臣(社会民主党)が、同国で10月中旬に開催された世界保健サミット(World Health Summit)で、交渉テキストに含まれた「知的財産権の免除」措置について、「知的財産権は我々のDNAであり、ドイツも多くの欧州諸国も、このような規定には合意できないだろう」と発言したと伝えた。このように、交渉テキスト発表後、早い段階で破壊的とすらいえる激しい拒絶反応を見せているのは、先進国政府および先進国の開発系製薬業界である。これは、この条約交渉の今後に暗雲を投げかけている。

https://ajf.gr.jp/covid19_28oct2023/

厚労省や外務省の資料より、こちらの方が具体的なこと書かれているのは、なんだかおかしな感じです。なぜ厚労省や外務省は、これぐらい具体的な資料を出せないのでしょうか。

まだ全部に目を通せていませんが、途上国としては、パンデミックにしっかり備えたいという気持ちで動いているように見えます。ワクチンの予防効果や安全性を信じて、途上国にもしっかりと分配してほしいと思っているのかもしれません。けれども、ワクチンの効果や安全性をはじめ、今回の様々な対策にどれほど効果があったかなど、振り返りがまったく行われていないことが大きな問題です。

超党派議員連盟の設立総会でも、それをせずになぜ突き進むのかという質問も出ていました。次回以降に、掘り起こしてみたいと思っています。

厚労省や外務省の答弁はまわりくどくてよくわからないのですが、10月24日の厚労大臣会見でするどい質問をした藤江成光氏(下記参照)が、わかりやすく動画を編集してくださっています。


3rdチャンネルで公開してくださっているので、他の部分もぜひチェックしてみてください。今回は、下記2本と全編の動画(ニコニコ版)を貼っておきます。

ステークホルダー関連

「2022年5月のIRH改正を拒否するかしないか?」部分


全編(約69分)は、ニコニコ動画もあります。