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接種後の難聴 ~把握している医師はいるのに周知されない~

10代の新型コロナワクチン接種率が高くなるにつれて、厚労省のサイトで公開されている「新型コロナワクチン接種後の副反応疑い報告」にも、10代の症例報告が増えています。接種後に出ている症状は、大手メディアで報道されているものだけではありません。5歳~11歳への接種を検討している保護者の皆様に、どのような症状が出ているか知っていただきたいので、気になる症例を紹介していきます。

低音性感音難聴

1月21日に公開された報告です。

厚労省サイト ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)> 第75回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第26回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催) 資料 1月21日

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00037.html

資料1-2-3-1より。
紹介する報告は、重複している部分などは編集してあります。BNT162b2は、コミナティ筋注(ファイザー製)のことです。

事例:16806 16歳女性 コミナティ筋注2回接種 ロット番号不明
2021/09/21、BNT162B2(コミナティ)2 回目接種。
関連する病歴は報告されなかった。併用薬はなかった。

不明日(接種後)、患者は発熱セ氏 39.6 度と頭痛を発現した。
2021/09/29 まで頭痛が継続し、患者は接種医療機関を受診した。
2021/10/05、脳神経外科 MRI を受診し、異常なしであった。
2021/10/27 頃(接種 1 カ月 6 日後)、自身に声が響く症状が出て、耳鼻科を受診した。低音性感音難聴症と診断された。CMT 接種(※)まではそのような症状はなく、接種後により接種医は AE (※)と判断した。2 カ月経過後も症状は続いた。事象の転帰は提供されなかった。重篤性は提供されなかった。有害事象は製品の使用後に発現した

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000884905.pdf

※CMTはコミナティ筋注、AEは有害事象のことだと思われます。

「AE(Adverse Event)」とは、医薬品の使用と時間的に関連のある、あらゆる好ましくない、意図しない徴候、症状又は疾病のことであり、当該医薬品との因果関係の有無は問わない。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000739054.pdf

脳神経外科で MRI検査をしたということは、それほど辛い頭痛だったと思われます。そして接種の約1ヶ月後に低音性感音難聴症と診断されたとのことなので、頭痛との関係が気になります。もしこの頭痛が何かのサインだったなら、もっと早く対処することができたかもしれません。10代の辛い頭痛、長引く頭痛は報告が増えているので、もっと詳しく調査してほしいです。


突発性難聴

事例:16616 18歳男性 コミナティ筋注1回接種 ロット番号:EY0572
ワクチンの予診票での留意点はなかった。

事象の経過は、以下の通りであった:
2021/07/30 15:00、 BNT162b2(コミナティ)を接種。
2021/08/02 17:30 ごろ、急に右難聴、耳鳴出現。
2021/08/03 未明から、持続性の回転性めまいがあった。同日、患者は耳鼻咽喉科を受診した。聴力検査では、右聾(※)を示した。前庭機能検査では、球形嚢、後耳管の機能低下を示した。脳MRIは異常なし。血液検査は、ムンプス感染パターン、抗核抗体陰性とANCA陰性を示した。入院のうえ、ステロイド投与、高圧酸素療法と PGE1 点滴など行うも、聴力は改善しなかった。めまい症状は、軽快した。退院後、右鼓室内ステロイド注入を施行。治療効果なく、聴力は固定された。
2021/11/26(ワクチン接種の 119 日後)、事象の転帰は、回復したが後遺症あり(右重度感音難聴、ほぼ聾)であった。

報告医師は、事象を重篤(障害、2021/08/03 から 2021/08/19 までの入院)と分類し、事象と BNT162b2 との因果関係は、評価不能と評価した。他の要因(他の疾患など)の可能性はなかった

報告医師は、以下の通りにコメントした:
因果関係の証明は困難だが、程度の差はあるもののワクチン接種後の感音難聴が散見され、副反応の可能性は否定できない。
再調査は完了した。これ以上の情報は期待できない。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000884905.pdf

※右聾:右側が高度の難聴である状態

「血液検査は、ムンプス感染パターン、抗核抗体陰性とANCA陰性を示した」とあるので、おたふく風邪や抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎も疑われたけれど、どちらも陰性だったようです。

そしてこの報告医師は、「程度の差はあるもののワクチン接種後の感音難聴が散見され、副反応の可能性は否定できない」と言っています。実際、製造販売業者からの報告も複数ありますが、すべてが報告されているわけではないので、実際はもっと多いと思われます。発症しても、本人がワクチン接種との関連に気づいていない場合もあるでしょう。

資料1-2-1より
(製造販売業者からの報告)

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000884773.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000884773.pdf

転帰は「回復したが、後遺症あり(右重度感音難聴、ほぼ聾)」とあります。右側はほぼ聞こえなくなってしまったのなら、回復と言えるのでしょうか。

両耳難聴

事例:16612 14歳女性 コミナティ筋注2回接種 
ロット番号:FF2782、FD0349
患者の病歴は無かった。有害事象に関連する家族歴は無かった。
ワクチンの予診票での注意点は無かった。

事象の経過は以下の通り:
2021/08/28 13:30、bnt162b2(コミナティ)1回目接種。
2021/09/02、起床時より、両耳鳴および難聴を発症した。家人との会話が困難なほどであったと患者の母より聴取した。めまいの訴えなし。
2021/09/03、患者は当科を受診した。前日と比較し、耳鳴はやや軽減した。純音聴力検査にて 5 月と比較し、
21.3db → 26.3dB、左 17.5dB →27.5dB(4 分法)と閾値上昇を認めた。
薬剤の内服加療を開始するも、症状は持続した。

2021/09/18、患者は 2 回目のワクチン接種を受けた。
2021/10/03耳鳴増強したため、患者は当科を再診した。頭部 MRI を実施:著変なし
2021/11/12、純音聴力検査にて右 37.5dB左 42.5dB難聴進行を認めた。

臨床検査値は以下の通り:
純音聴力検査 2021/09/03 の結果、 R 26.3dB、L27.5 dB を示した。
コメント:前回と比較して閾値上昇あり
2021/09/17 の結果、R32.5dB、 L36.3dB を示した。
コメント:前回と比較して閾値上昇あり
2021/11/12 の結果、R37.5dB、L42.5dB を示した。
コメント:前回と比較して閾値上昇あり
2021/12/10 の結果、R45.0 dB、L 36.3dB を示した。
コメント:前回と比較して閾値上昇あり
難聴(医学的に重要)は 2021/09/02 に発症、転帰「不明」。
これ以上の情報は期待できない。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000884905.pdf
難聴の種類と特徴 vol.1 シオノギ製薬 より

「普通の会話が聞きづらい」となると、生活に支障をきたします。さらに、12月の時点でもまだ進行しているので、今後が心配です。

この事例は、1回目の接種後に両耳難聴が発症したのに2回目を接種し、その後さらに悪化しています。診察した耳鼻科の医師は、2回目の接種を止めなかったのでしょうか。難聴の事例は、成人の接種が始まったころから報告されていました。


2例目の突発性難聴は、ある日突然、片側の耳の聞こえが悪くなり、 耳がつまった感じや耳鳴りなどを伴います。まれに、両耳に起こることもあるそうです。早期(できれば48時間以内)に治療を開始しないと、治らないケースが多いといわれています。ワクチンを接種しなくても発症しますが、ワクチン接種後に発症している例が複数報告されています。

2例目のように、「程度の差はあるもののワクチン接種後の感音難聴が散見され、副反応の可能性は否定できない」と言っている医師がいるなら、なぜ情報は共有されていないのでしょうか。共有されていれば、3例目の14歳は、少なくとも2回目の接種はしなかったのではないでしょうか。

添付文書

本剤は、本邦で特例承認されたものであり、承認時において長期安定性等に係る情報は限られているため、製造販売後も引き続き情報を収集中である。
本剤の使用にあたっては、あらかじめ被接種者又は代諾者に、本剤に関する最新の有効性及び安全性について文書で説明した上で、予診票等で文書による同意を得た上で接種すること。また、有害事象が認められた際には、必要に応じて予防接種法に基づく副反応疑い報告制度等に基づき報告すること。なお、本剤の製造販売後に収集された情報については、最新の情報を随時参照すること。

コミナティ筋注 添付文書より

添付文書の最新版は、下記から見られます。

コミナティ筋注の添付文書には、上記のように書かれていますが、症例報告に目を通していると守られているとは思えません。