どれが正式承認バイアルなのか?
米軍の新型コロナワクチン義務化に対して16名の軍人が請求した仮処分が、フロリダ州の地方裁判所によって却下されました。担当した判事が書いた「ORDER DENYING PRELIMINARY INJUNCTION MOTIONS」を読むと、ファイザー社の新型コロナワクチンは、やはり法的な意味が異なる2種類のバイアルが存在することがわかりました。2種類あることを知っている人は、どのくらいいるのでしょうか?
却下の理由
アメリカの国防総省は、今年8月、すべての軍人にCOVID-19の予防接種を義務付ける命令を出しました。その7週間後、16人の軍人が国防長官らを提訴し、この義務化に異議を唱えています。法律上の請求と憲法上の請求、 2つの仮処分申し立てを行いましが、それらは11月12日に却下されました。
担当した判事が書いた、「ORDER DENYING PRELIMINARY INJUNCTION MOTIONS」が公開されています。
明確に立証できていない点が指摘されて却下となりましたが、とても重要なことが書かれています。
法律の話なので理解するのは難しいですが、軍で接種されているのがFDAで正式承認された「Comirnaty」なのか、EUA(緊急使用許可)の「Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine」なのかが問題となっていることはわかりました。
日本で使用されている「コミナティ筋注」は、正式承認される前からの商品名なのでFDAが言う「Comirnaty」とは異なります。FDAのファクトシートでは、EUA(緊急使用許可)ワクチンは「Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine」、正式承認ワクチンは「Comirnaty」と書き分けられています。
「ORDER DENYING PRELIMINARY INJUNCTION MOTIONS」には、「DOD(アメリカ国防総省)のガイダンス文書では、FDA認可のCOVID-19ワクチンのみが義務づけられていると明示されており、誰にもEUAワクチンの接種を要求していない」と書かれています。
DODは「FDAから正式な認可を受けたCOVID-19ワクチン」以外のものを接種することを義務付けていないため、原告はEUAワクチンに損害を受けたことを示すことができない、ということのようです。
では、軍で接種されているのは、どちらなのでしょうか?
下記のサイトから、「ORDER DENYING PRELIMINARY INJUNCTION MOTIONS」を引用します。
2種類の承認ステータス
2種類の違いについて、判事は詳しく述べています。
8月23日に、ワクチン「Comirnaty」はFDAから正式承認されました。
一般的にファイザーのワクチンと思われているものには、2つの異なるFDA承認ステータスがあります。16歳以上の人に2回接種する場合は、認可されています。しかし、16歳未満の子どもや3回目の接種など、その他の用途には認可されておらず、EUA(緊急使用許可)の下で運用されています。FDAは、この2つの薬を「同じ処方」であり、医療目的で「互換性がある」と説明しています。
Comirnatyの添付文書に「16 years of age and older」と「as a series of 2 doses 」とあるので、16歳未満と3回目以降は認可されていないということだと思います。
Comirnatyは出荷されているのか?
「16歳以上の人に2回接種する場合は認可されている」と書かれていますが、流通しているバイアルのすべてが「Comirnaty」ではないようです。
ファイザー社は、「EUA医薬品と表示されたワクチンのバイアルを製造し続けている」と判事は言っています。
EUAワクチンを「遡及的に認可」することがFDAの目的であったとすれば、奇妙なやり方をしたと、判事は言っています。FDAは、EUAワクチンとComirnatyを「互換性がある」と記述した同じ脚注で、この2つの製品は「法的に異なる」と明確にしているのです。
確かに、FDAのファクトシートには脚注がありました。
最新のファクトシートでは、この脚注はなくなっています。
したがって、法的には、8月23日以前に送られてきたワクチンと、8月23日以降に未承認の施設で製造されたワクチンは、「連邦食品・医薬品・化粧品法564条に基づき、緊急時の使用が許可された製品」であると言えます、と書かれています。つまり、それらは正式承認された「Comirnaty」ではないということです。
EUA(緊急使用許可)医薬品は、患者に「製品の投与を受け入れるか拒否するかの選択肢」を示すラベルやパッケージの挿入が必要だと書かれていますが、接種される際にそのような説明がされているのでしょうか?
原告が示したのは、国防総省が「Comirnaty」と表示されていないバイアルからの接種を要求しているということです。実際、弁護団は、「Comirnaty」と表示されたワクチンが存在するかどうかさえ言えなかった、とあります。
どうやら軍では、EUA(緊急使用許可)の「Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine」が使用されていたようです。
DODの見解では、EUAラベルのついたバイアルの内容物は、「Comirnaty」のラベルがついたバイアルの内容物(そのようなバイアルがあれば)と化学的に同一であるため、これで問題ないとしている。
しかしEUA(緊急使用許可)のバイアルなら、軍人たちは受け入れる必要がないことを意味する、と判事は言っています。なぜなら、DOD(アメリカ国防総省)のガイダンス文書では、FDA認可のCOVID-19ワクチンのみが義務づけられていると明示されており、誰にもEUAワクチンの接種を要求していないからでしょう。
FDAの承認は、BLA承認前に出荷されたバイアルに遡って適用されない。さらに、BLAに準拠するためには、薬剤は承認された施設で製造されなければならないが、EUAラベルの付いたバイアルがすべてBLA承認施設で製造されたものであるという兆候はない、とも書かれています。一方、国防総省は、「EUAラベルの付いたBLA準拠のワクチンを何十万本も保有している」と主張。
DODが実際にComirnatyを保有しているのかどうか、BLAに準拠していないワクチンの接種を要求されているのかなどが重要であり、現段階では、原告がこれらを十分に証明できていないことが指摘されています。
軍でもEUAのワクチンを接種していたのなら、8月23日の承認以降、承認された施設で製造された正式承認バイアルは出荷されているのでしょうか? もしかしたら、製造されていないのではないでしょうか。
8月23日以降に接種した人たちは、すべてのバイアルが正式承認されたものだと思っているかもしれません。接種するときに、どちらのバイアルかなど、気にもしなかったことでしょう。けれども、アメリカではどちらのバイアルだったのかは法的には大きな違いがあるようです。
法的には2種類ですが、成分に関しては、添加剤が異なるものがあるとFDAのファクトシートに書かれているので、EUAのバイアルも2種類あるということになります(下記参照)。変異株に対応したものは、どのように臨床試験を行うのかも気になります。